世界を越境した信頼関係の構築も担う!web3による職業の多様化

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Web3が生みだす職業の多様化

中島氏――とても興味深い考察ですね。よく「AIで失われる仕事・職業」ということが話題になりますが、web3ではむしろ職種は増えるのではないかと思います。多様化してキャリアの選択肢も広がり、そうなればパラレルワークで複数の仕事をしても良いわけで。一方で、自動化され消滅する仕事もありそうです。

例えば、エストニアは決算・確定申告のデジタル化・自動化が進んでおり、いわゆる申告業務はないと言われています。では、士業はどんな仕事をしているのかというと「顧客の課題解決」なんだそうです。企業であれば、売上やマーケティング、財務、労務、法務、システム、承継問題など多岐にわたる経営相談を受け、課題解決策を提示・実行していくのが仕事になります。

森田氏――そういった多岐にわたる課題解決も、Web2.0との掛け合わせでできると思います。
「コミュニティデザイナー(モデレーター)」を、“アーティスト”ではなく“デザイナー”と表現したのは、デザインとアートの違いからです。
デザインには必ず達成すべき目的とそのための戦略があります。
結果論やケースバイケースであっても“正解”があるのがデザインですから、そういった意味合いで「コミュニティデザイナー(モデレーター)」を定義しています。

中島氏――最近はビジネスの世界でも「デザイン思考」や「アート思考」という言葉がよく使われています。デザインはおっしゃるとおりですが、アートは自己表現ですから目的や戦略に必ずしも縛られません。世界観や哲学、メッセージに重きが置かれていることが多いです。私は美術史や表象文化論、メディアアートなどが専門だったのですが、森田さんが前編でおっしゃっていたように、顕在化された課題は多くが解決されつつあり、潜在的な課題の発見や新たな価値創造のためには、ロジックだけではないデザイン思考、さらに固定観念に縛られないアート思考が必要とされているのかもしれません。

web3時代に求められるスキル

中島氏――では、web3の世界を生きるために必要なスキルやマインドについてお聞きできればと思います。

コミュニティ相互の接点をデザインする越境スキル

森田氏――顕在課題の解決策の立案や実行、潜在課題の発見や新たな価値創造はコンサルタントに必須のスキルです。
「コミュニティデザイナー(モデレーター)」は、コミュニティ内でメンバー同士の接点をデザインする仕事ですが、さらにコミュニティの枠を越えて、他のコミュニティとの接点をデザインする越境スキルがあれば、web3の世界でもより活躍できるのではないでしょうか。

越境スキルを磨くには、「外を見る力」が欠かせません。
物事を多重視点で捉え、柔軟性を持って分析、検証してマッチングするスキルが求められると思います。
マインドとしては、当然オープンでポジティブでないといけないでしょう。

web3は分散型ですから、おのずとリモートコミュニケーションになります。
チャットでのやり取りも多いですから、テキストコミュニケーションスキルや編集力も重要になってきます。

リモートで信頼関係を構築するスキル

中島氏―メタバースが普及すると、テキストコミュニケーションから音声コミュニケーションが中心になっていくのでしょうけど、それはまだ先の話になりそうですね。ほかにはどのようなスキルが必要になりそうでしょうか?

森田氏――リモートコミュニケーションが中心になると、リモートでのやり取りで信頼関係を築いていくことになります。
「リモートトラスト」という言葉もありますが、直接会わずとも信頼につなげるためには言動を一致させることが重要です。

トークングラフマーケティング」という言葉も生まれており、誰がなんのトークンを持っているか、いつからいつまでトークンを保有しているかが可視化されるようになっています。
「このDAOを応援するためにトークンを長期保有する」と発言していても、実は「価値が少し上がったタイミングですぐに売却していた」という行動がわかってしまうようなことがあると、その人の発言は信用できないということになります。

中島氏――一貫性がないと信頼につながらないですし、ポジショントークをすればいずれバレてしまいますよね。最近は、AI与信などのSaaSも出てきており、日々のSNS投稿やプレスリリースやブログなどのオンライン上の情報、SNSの横のつながり、ウォレットの入出金などからもその人の信頼度や人間性を測れるようになってきました。それが、トークンファイナンスやエクイティファイナンス、デッドファイナンス、クラウドファンディングにもつながっていくのでしょうね。

森田氏――そうなると、「クレジットスコアデザイナー」のような職業も生まれるかもしれません。
web3によって新しい仕事が生まれるので、テクノロジーが発展しても人の可能性は広がる一方です。
そのためには、新しいモノ・コトにも積極的に向き合うオープンマインドとポジティブさは欠かせないのではないでしょうか。

本日は、ありがとうございました。

出典:マイナビニュース「web3で生まれる仕事・職業となくなる仕事・職業」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

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中島 宏明

投稿者プロフィール
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立。一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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