営業の常識を覆す「ゴルフ×ビジネス」──信頼関係構築モデルでの挑戦
- 2026/4/28
- インタビュー

約20年にわたり営業の最前線に立ち、「売れない理由は商材ではなく信頼関係にある」と実感した株式会社ウィスカーマン代表の田中佑樹氏。商談機会を生み出しても受注に至らない壁を乗り越えるためにたどり着いたのが、ゴルフを活用した関係構築というアプローチです。商談を急がず、まず人となりを知る場を設計し、その積み重ねが結果として売上につながる。営業の本質に立ち返り、新たな手法を実践する田中氏の取り組みに迫ります。
目次
ゴルフを軸にした営業顧問という新しいビジネスモデル
Z-EN――現在、どのような事業を展開されているのか、教えていただけますか。
田中佑樹氏(以下、田中氏)――「ゴルフ×ビジネス」を軸に、中小企業様の営業顧問業をさせていただております。
具体的には、ターゲット経営者の選定とマッチング、ゴルフの場での関係性設計とファシリテーション、そして売上創出までの導線設計と検証を一貫して提供するのが弊社の事業です。
信頼関係なき営業の限界と、ゴルフに着目した理由
――ゴルフを通じた営業活動をするようになったのには、どのような背景があったのでしょうか。
田中氏――在学中に起業して約20年営業に携わってきた経験をもとに、ゴルフを活用した営業顧問事業を展開するようになりました。
知らない人に知らない商材を販売するというのは非常に大変で、特に高額商材になるほど検討が深くなり、信頼関係がなければ成立しません。
前職では新規事業の責任者としてテレアポ部隊を率いており、アポイント自体は生まれるものの、そこから受注に至らないケースが多くありました。
その理由は、商材の良し悪し以前に信頼関係が構築されていないことにあると考えています。

4000人の経営者ネットワークを活かした関係性設計
そこで着目したのがゴルフです。
いきなり商談をするのではなく、まずは信頼関係を構築する場を設計することが重要だと考えました。
現在は顧問業として、お客様に対して最低でも月1回ラウンドを設定しています。
私のつながりのあるゴルフ好きな経営者が約4000人おり、その中からお客様が会いたい業種・業態・規模感に合う方を選定し、ゴルフ場でお繋ぎします。
ただ単に紹介するだけではなく、「なぜこの場を設けたのか」「どこで売上が生まれる可能性があるのか」といった親和性を事前に設計したうえでスタートします。
18ホールを回ることで人となりが見え、ミスしたときの振る舞いなども含めて信頼関係が自然と構築されていきます。
その状態で次のアクションに進むことで、売上創出につながる確度が高まるという考え方です。
――なるほど。親近感だけでなく、ゴルフを介した信頼関係を想定されているのですね。どのような企業を対象としていらっしゃるのでしょうか。
田中氏――業種については幅広く対応可能で、飲食店や多店舗展開企業、給食関連、老人ホームなどともお繋ぎすることができます。
商材や目的に応じて最適な接点を設計しながら進めており、必要に応じて法規制にも配慮した形で対応しています。

具体的な支援内容
成果報酬型営業への疑問と「未達返金モデル」の考え方
――営業代行や成果報酬型の営業など、田中さんのご経験上、課題だと感じられたことはありますか。
田中氏――あります。成果報酬型はあまり好きではありません。
コストがかからない点にフォーカスされがちですが、営業代行会社は成果が出ないと動きが鈍くなり、結果的にプロジェクト自体が停滞するリスクがあります。
そもそも簡単に売れる商材であれば営業代行に依頼する必要はなく、短期間で成果が出ないことは前提として考えるべきです。
一見リスクがないように見えても、事業計画の遅延という形で大きなリスクを内包しています。
現在弊社では、「契約金+未達返金型のモデル」を採用しており、例えば100万円いただいて売上が80万円であれば20万円を返金します。
年間を通じて複数の経営者と接点を持つ中で受注が一件も生まれない場合には、商材そのものや価格設計に課題がある可能性が高いと判断できます。

――具体的にはどのようにゴルフのラウンドが設定されるのでしょうか。
田中氏――ゴルフは1組4人で回り、その中にお客様1人と親和性がある経営者2人を入れ、私がファシリテートします。
料金はミニマム100万円で上限は設けておらず、売上が大きく出た場合には超過分に対してインセンティブをいただく形です。
マッチングにはAIも活用しており、名刺情報や会話内容をデータ化し、ターゲット条件と照合して候補を抽出します。
ゴルフ中は商談を目的とせず、人となりを理解する場として設計していますので、自然なコミュニケーションの中で関係性を築いていくことができます。
人間関係を軸にした営業の未来と再現性への挑戦
――田中さんが大事にされている理念とはどのようなものですか。
田中氏――事業を始めたときの思いを達成するまでやり続けることが重要だと考えています。
どのような状況になっても継続する覚悟が必要であり、途中でリタイアするという選択肢は自分にはありません。
営業もシンプルな側面があり、数を当たることで結果が出るという基本的な考え方を常に根底に持っています。

――今後の事業展開や将来の展望についてお伺いしたいです。
田中氏――これからも、課題を持つ中小企業に対して信頼関係の構築を基礎として、売上創出まで伴走する機会を広げていきたいと考えています。
また、個人としては、40歳までに365ラウンドを達成するという目標を掲げています(現在年間250ラウンド)。
これは会社とは別に、自分で決めたこととしてやり切るつもりです。
現在の事業は属人的な要素が強いものの、提供している価値自体は再現可能だと考えており、今後はこのモデルを拡張し、複数人で提供できる体制を構築していきたいですね。
AIが進展する中でも、人間関係の構築は代替されにくい領域であり、このアナログな価値を広げていく意義は大きいと感じています。
――再現性という点で重視するポイントはありますか。
田中氏――お手伝いしたいと言ってくださる方は一定数いらっしゃいますが、片手間では難しいです。
ゴルフの場はお客様のために設計しているため、別の目的が入り込むと価値が崩れてしまいます。
入り口がゴルフというだけで、フルコミットで関わることが前提になりますし、人との繋がりや信頼関係を築きながら自分なりのファシリテーションを構築することは営業するうえで避けられない領域だと考えています。














