ゲームから推し活へ――IPを起点に新たな経済圏を創り出す挑戦
- 2026/6/16
- インタビュー

ゲーム開発を軸に成長を続けながら、新たに「推し活」領域へ事業を広げているNobollel株式会社の代表、黒川晃輔氏。創業以来150本以上のゲームをリリースし、1,000万ダウンロードを超えるIPを生み出す一方で、現在は、IPと地域、職人、ファンを結び付ける新たな価値創造に挑戦しています。ゲーム、グッズ、イベント、ツーリズムなどを横断しながら、日本文化や地域資源の魅力を国内外へ発信する構想の背景にはどのような思いがあるのか。事業の強みと今後の展望、そして黒川氏が描く未来像についてお話を伺いました。
目次
ゲーム開発で築いた基盤を新たな体験価値の創出へ
Z-EN――現在の御社の事業内容について、詳しく教えていただけますか。
黒川晃輔氏(以下、黒川氏)――弊社はもともとゲーム開発会社です。
創業から12年間で150本以上のゲームをリリースしてきました。
自社ゲームの海外売上比率は9割で、1,000万ダウンロードを超えるIPも生み出しています。
現在はそれに加えて、「推し活」を軸とした事業を展開しています。
単純なグッズ販売会社ではなく、IPを活用したさまざまな体験をプロデュースする会社を目指しています。
ゲーム会社は営業が弱いことが多く、営業会社はITや開発に弱いことが多い。
そんななか、開発力と営業力、プロデュース力を総合的に備えていることが私たちの特徴だと思っています。
日本文化への関心が導いた「推し活」事業への挑戦
――推し活領域へ進出した理由は何だったのでしょうか。
黒川氏――私はゲームプロデューサーも経験しておりますが、元々何かを作ったり企画したりするエンタメ全体のプロデューサーに関心を持っていました。
コロナ禍に日本各地に関わり、そこにある自然や神社や歴史などを通して、非日常の体験を重ねることで日本が好きになり、日本文化や地域の魅力を発掘して世界に発信したいという思いが強くなりました。
また、日本語をベースにした文化や日本の自然がIP創出に大きな影響があると直感で感じました。
『蔦屋重三郎』のように、新しい文化を生み出したり、価値を編集したりするということはとても面白いと考えています。
ゲームもその手段の一つですが、推し活やIP活用も同じ文脈での取り組みです。
IPと職人と聖地を繋ぐ新しい経済圏を編集する仕掛け人になれたらという思いがあります。
IPホルダーとの信頼関係とプロデュース力が強み
――御社ならではの強みはどこにありますか。
黒川氏――一番はIPホルダーとの関係性です。
ゲーム・エンタメ業界の著名投資家・事業会社が株主におられるため、それ自体がIP獲得の信頼担保になっていることや私自身のネットワークを通じて、さまざまなIPホルダーへアクセスできます。
独自商品を企画したり、北米や東アジアをはじめとする海外販路を提案したり、高価格帯商品を企画したりできるので、単にIPを借りるだけではなく、私たちと組む価値を具体的に提示できます。
さらに、ゲームとグッズの両方を扱える点も特徴です。
ゲームからIPホルダーへアプローチすることもできますし、グッズやイベントから展開することもできます。

制作事例:カジュアル〜ミッドコアゲーム
北米を中心に1,000万DLの実績を持つ「LightBike2」を筆頭に、数々のゲームを開発。
――ゲーム開発での知見は、推し活事業にどのように活かされていますか。
黒川氏――ネットワークや体験設計の考え方ですね。
ゲーム事業で築いてきたIPホルダーとの関係性があるので、その後のグッズ展開やイベント展開にもつなげやすいんです。
また、ゲームで培った「ユーザー体験をどう設計するか」という考え方は、様々なイベントにも応用できます。
――現在はどのような形で事業を進めているのでしょうか。
黒川氏――基本的にはIP活用の代理店機能がコアです。
IPホルダーに対して企画提案を行い、場所やパートナー企業をつなぎ、事業化していくモデルです。
実際の取り組みも、まずはパートナー企業と組みながら運営ノウハウを蓄積しています。
次の第2フェーズでは独自商品の企画・開発、第3フェーズでは自社主導での展開を目指しています。
地域・職人・ファンをつなぐ循環型の経済圏を目指して
――今後の構想について教えてください。
黒川氏――最終的には「推し活の総合プロデュース企業」を目指しています。
IPを獲得し、それをゲーム、グッズ、イベント、ツーリズム、地域活性化など、さまざまな形へ展開していく構想です。
例えば日本酒や焼酎とIPを掛け合わせた商品展開、伝統工芸とのコラボレーション、海外向け販売なども考えています。

Nobollelの社内風景
また、地域に根差したIPを作りたいという思いもあります。
『温泉むすめ』のように地域とIPを結びつけたり、ゲームを起点に聖地巡礼や観光を生み出したりする取り組みですね。
点で終わるコラボではなく、地域に根差した経済圏を作りたいんです。
IPで人を呼び、聖地巡礼で活動し、職人と組んだ高単価や地元の商品などの物販で落としてもらい、また訪れたくなる関係人口に変える。
その中で移住や後継者などの取り組みが生まれる。
物販・体験・関係人口がぐるぐる回るその温故知新の好循環を、地域ごとに作っていきたい。
実際に歴史や文化を題材にしたゲームも制作しています。
最終的にはゲーム、ツーリズム、地域振興、関係人口創出をつなげていきたいと思っています。
――海外展開についてはどのように考えていますか。
黒川氏――東アジアは有望です。
台湾・韓国は文化的にも行政との距離が近く、特に台湾は開発パートナーとの体制も既に整えていますので、海外への展開は構想に留まらず布石を打っている状況です。
アメリカは日本アニメ・IPの認知度が非常に高い。
また、インバウンド消費9.5兆円と、追い風のマクロも揃っています。
まずは高価格帯商品や独自商品を起点に展開し、将来的には体験型ビジネスまで広げていきたいですね。
――現在の課題は何でしょうか。
黒川氏――一番大きいのは安定的にゲームをリリースし続けることです。
資金調達も課題ですが、本質的にはゲームを安定的に出して、継続していくことになります。
実際には、開発はかなり進んでもなかなかリリースができないなど、ゲーム業界で起こりやすいことをいかに起こさないように準備していくかということが課題になります。
――どのような人と組みたいと考えていますか。
黒川氏――現場を回せる人です。
ゲーム開発でもグッズ事業でも、頑固な職人や現場責任者とうまくコミュニケーションを取りながらプロジェクトを前に進められる人が必要ですね。
AIも活用していますが、オペレーションや管理を任せられる人が増えれば、その分だけ事業も増やせます。
「生きがいに気づくきっかけ」を届けるために
――リタリコで営業を経験され、その後、世界的なアプリ企業で新規事業にも携わった黒川さんが、現在大切にしている価値観について教えてください。
黒川氏――とにかく大きくしたいという気持ちが強かったのですが、時代が変化してきたと感じています。
ソフトウェアが今後ますますコモディティ化していくからこそ、日本文化や歴史、精神性を次世代へつないでいくことに価値を感じるんですね。
お金を追い求める時代の次にある価値も大切にしたい。
表面的な豊かさと内面的な豊かさ。
その両方をつなげるような事業や経営を目指したいと思っています。
――3年後、5年後に社会へどのような価値を届けたいですか。
黒川氏――一言で言えば、「生きがいに気づくきっかけ」を提供したいです。
その意味では、「推し活」は入口として非常に分かりやすい存在です。
最初は好きな作品やキャラクターから始まるかもしれませんが、最終的には、自分自身を見つめることにつながると思っています。
自分は何者なのか。何を大切にしたいのか。
そうした問いに向き合う人が増えていけば、人類全体の精神性も高まっていくと思います。
自己認識を深める入口として、ゲームやIP、推し活、体験を提供していくことが、私たちの役割だと考えています。















