縁を価値に変えるー共感から始まる、人と組織を動かすコミュニケーション
- 2026/9/3
- インタビュー

営業、宣伝販促コンサルティング、実況アナウンサー、通訳など、多彩なフィールドで活動し、ナレーターとしてもご活躍の萩原岳(ナレーター名:島⽥仁)氏。現在は企業や行政、教育、エンタテインメント、スポーツなど幅広い分野で、立場の異なる人々をつなぎ、プロジェクトを円滑に進める”ファシリテーター”として活躍していらっしゃいます。大手建設会社から音楽業界へ転身し、営業や販促の現場で培った経験、さらにアメリカでの生活を通じて得た視点は、「相手の立場になって考える」という揺るぎない信念へとつながったとおっしゃいます。人と人を結び付けることで新たな価値を生み出し続ける萩原氏の仕事観と、人間関係を築くために大切にしている考え方、そして今後目指す社会の姿について伺いました。
目次
伝え、つなぐことが自分の役割
Z-EN――萩原さんは、営業、宣伝販促コンサルティング、ナレーション、実況アナウンサー、通訳など幅広く活動されていますが、ご自身のお仕事の軸はどのようなものだとお考えですか。
萩原岳氏(以下、萩原氏)――一番大事にしているのは、「相手の立場になって考えられるか」ということです。
レコード会社では、私は0から1を生み出すよりも、1を10に広げる役割が得意でした。
どれだけ良い技術や商品でも、人に伝わらなければ広がりません。
価値を伝え、人と人、企業と企業をつなぎ、物事がスムーズに進むようにすることが自分の役割だと思っています。
AIの時代だからこそ、人間には相手の状況や要望に合わせて柔軟に対応する力が求められると感じています。
また、アメリカで生活した経験から、日本を客観的に見る機会を得て、国内市場が縮小する中では海外へ目を向け、変化に柔軟に対応する姿勢が必要だと思っています。

信頼を育てるのは、肩書ではなく人への向き合い方
――萩原さんは、人と人をつなぐことが非常にお得意だと伺っています。
萩原氏――そこは本当に自信があります。(笑)
道で偶然お会いした方でも、ご縁をいただきたいと思えば自分から名刺を持ってご挨拶します。
そうした積み重ねで、多くのご縁に恵まれてきました。
人に声を掛けるのも、販売員が流れて歩いてくるお客さんにサンプル品を渡すのも、アメフトのクォーターバックがランニングバックにボールを渡すのも、同じような気配りだったりします。
私は「仲間の仲間は仲間」という考え方を大切にしています。
紹介してくださった方に対して、その先のご縁を大切にすることが信頼につながると信じているからです。
――現在はどのような形で企業やプロジェクトに関わっているのでしょうか。
萩原氏――プロジェクトごとにお声掛けいただくことがほとんどですね。
例えば、某放送局から依頼のあった、省庁との仕事の打ち合わせで、いきなりプレゼンに入り始めたので、それを止めて、お互いの経歴や共通の知人を紹介し合う時間を作ってもらいました。
その結果、以前同じ案件に携わっていたことが分かり、一気に打ち解けました。
スポーツにウォームアップがあるように、人間関係にも準備があったほうが良いのです。
私は、出演者や制作スタッフなど全体を見ながら、緊張をほぐし、立場の違う人同士が話しやすい環境を作る役割を担っています。
知り合いから名刺に「ファシリテーター」と記載しておくべきと言われたのでそうしていますが、まさにそれが自分の役割だと思っています。

環境が人を伸ばす――営業経験から得た気づき
――そうしたお仕事は、ご自身から営業されることが多いのでしょうか。
萩原氏――今はご紹介によるものがほとんどですが、仕事を引き受ける基準は金額ではなく、「貢献出来るか」「より良く出来るか」です。
ですから、自分より相応しい人がいたらその人を紹介するようにもしています。
ナレーションでも、予算がない、急遽録り直しになったなど、困っている場面で呼ばれることが多いですね。
某大手企業のCMのナレーションも、広告代理店担当のミスでほとんど予算がない中でお引き受けしました。
相手が困っている時こそ自分が動くことで信頼が生まれ、それが後の大きな仕事につながることもあります。
一番大切にすべきことは、簡単に「できません」と言わないことです。
結果として実現できなくても、挑戦した姿勢は伝わり、それが長い信頼関係につながると、多くの人たちに伝えています。
――そうした考え方は、これまでのご経歴から培われたものなのでしょうか。
萩原氏――そうですね。
最初は大手建設会社へ入社しましたが、今なら訴えられるぐらいの勤務時間を経験し、日本は欧米のような9時~5時勤務の生活は無理と判断し、「好きなことを仕事にしよう」と決めて音楽業界へ進みました。
大手レコード会社での営業時代は良い成績を出せてもミスもあり、±0という感じで成績は特に良かった訳ではありません。
ただ、会社の営業部隊全体が数年間、別会社に出向となった際に、そこでの仕組みや総務スタッフの皆さんのお陰で販促展開・営業に集中でき、トップの成績を複数期間頂けたことがありました。
一方で、洋楽部門でヒットを出した際に、直属の上司からの査定評価が最低だったこともあります。
このとき、成果は、環境や人との相性にも大きく左右されることを実感しました。

共感から始めるコミュニケーションが組織を変える
――現在もさまざまな方を支援されていますが、どのようなことを意識されていますか。
萩原氏――人に何かを伝える時は、まず共感できる部分を伝えてから自分の考えを話すようにしています。
いきなり否定から入ると、人は心を閉ざしてしまいますから。
また、経営者や政治家にも寄り添う伴走者が必要だと思っています。
政治家の知り合いも多いのですが、「敵対心を持たれない伝え方」や、「応援してくれる人同士を横につなげること」の大切さをお伝えしています。
一本の線では切れてしまうことも、面になれば強くなるものです。
人とのつながりも同じだと思っています。
――人と人をつなげる活動も数多くされていますね。
萩原氏――はい。結婚のご縁をつないだこともあり、これまで14組をご紹介して現在も13組が続いています。
転職や仕事でも、「この人とこの人なら力を発揮できる」という組み合わせを考えることが多いですね。
そのような際も、肩書ではなく、人柄や価値観まで理解することを大切にしています。
また、交流会では学生が参加しやすいよう参加費を抑え、数十年以上にわたり世代を超えて学び合える場づくりも続けています。

企業・教育・行政を横断し、人が活躍できる社会へ
――今後はどのようなことに力を入れていきたいとお考えですか。
萩原氏――教育には特に関心があります。
日本では失敗を避ける文化が根強いですが、もっと気楽に挑戦できて体験したことから自己改善を学ぶ機会も必要ではないかと感じます。
私がアメリカで経験した教育制度には、日本でも取り入れられる、そんな仕組みがあると感じています。
今後も、企業、行政、教育、スポーツなど分野を問わず、人と人をつなぎ、共感から物事が前へ進む環境づくりに関わっていきたいと思っています。
良いと思ったことはきちんと言葉で伝え、人の長所を認めることにより、相手との関係は良くなるということを伝え続けたいですね。
一人ではできないことも、信頼できる仲間を作っていけば実現に向かっていきます。
だからこそ、誰と組めるかが大切だということを伝えながら、これからも困っている人に寄り添い、人と人とのご縁をつなぐ”潤滑油”として支援を続けていきたいと思っています。














