小さな農業にこそ、最先端技術を!稲作をマーケットインで再構築する挑戦

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日本の稲作が抱える高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加。こうした課題に対し、ロボットという最先端技術からアプローチするのが、ineRobo株式会社です。代表取締役CEOの片桐豪志氏が目指すのは、単に農作業を自動化することではなく、小型ロボットや水田運営プラットフォーム、農業データの活用に加え、消費者との接点や米の付加価値まで含め、小規模稲作そのものを持続可能なビジネスへと再設計することです。「ロボットを作ってから考える」のではなく、「どう売れる米を作るか」から逆算するマーケットインの発想で、日本の食を支える新たな仕組みづくりに挑んでいらっしゃいます。

「このままでは米の供給が細る」小規模稲作に目を向けた理由

Z-EN――現在、ineRobo株式会社ではどのような事業に取り組まれているのでしょうか。

片桐豪志氏(以下、片桐氏)――弊社は、農業支援・農作業支援ロボットの開発、水田運営のプラットフォーム、農業データの収集・解析などを手がけようとしています。

2025年10月に創業し、2026年5月には田んぼロボットで種まきをしました。
温暖化の影響で気温が高いため生育が良すぎて、想定より早く収穫することになりました。

大きな農機が入れない田んぼに、小さなロボットという選択肢

――なぜ「小さな農業に最先端技術を」というテーマで、稲作に取り組もうと考えたのでしょうか。

片桐氏――私自身、日本米が好きで、家庭では米を買う担当でもあります。

人口減少によって日本人が米を食べる量は今後も減っていきますが、小規模な稲作農家さんの平均年齢は71歳ほどで、ボリュームゾーンは78歳です。
よって、耕作放棄が進むスピードの方が米を食べなくなるスピードより早く、このままでは供給が細っていくばかりだと思われます。

国は大規模化を進めていますが、日本の田んぼの6割は棚田など、大規模化に適さない小さな田んぼです。
稲作農家の約8割を占める小規模零細農家が、そうした農地で日本の米の4割くらいを作っています。
これがだんだんと3割、2割となり年々下がっていくわけですが、そうするとクマや鹿の被害が増えたり、国産米が高級品になっていったりと、いろいろな問題がより一層、増えていきます。

大きなトラクターは棚田には入れませんし、小規模農家を守る機械や仕組みも十分ではありません。
そこで、小さなロボットを小規模農家に投入できれば、こうした農地を守れるのではないかと考えました。

私はこれまで戦略コンサルの仕事をしていて、農業のプロジェクトにも携わってきました。
ロボットメーカーとの出会いもありましたので、これまでの知見と経験を生かして、ここでビジネスを構築してみようと思ったのがきっかけです。

――ロボット開発は、もともと米粉用の稲から始まったそうですね。

片桐氏――そうなんです。
もともとはテムザックというメーカーと一緒に取り組み始めました。

最初は米粉用の稲を使っていました。
米粉用の稲は主食用米より茎が太く、ロボットに踏まれても折れにくいので、開発する上で都合がよかったんです。

ただ、開発している間に、消費者の「米が高い」という悲鳴を聞くようになって、「我々は米粉をやっている場合なのか?」と考えました。
ロボットの基本的な技術ができたところで、拡大するなら主食用米の方がいいんじゃないかということで、主食用米に軸足を移しました。

ロボットを売るだけでは稲作は持続可能にならない。必要なのは「売れる米」の仕組み

――事業としては、単純にロボットを農家へ販売するわけではないのですね。

片桐氏――小規模零細農家が8割という状況で、そこにロボットをたくさん売ってしまうと、さらに経営が苦しくなる可能性があります。
それでは私たちが本来やりたかったことと違ってしまいます。

大事なのは、ロボットを使ってできた米を、いかにたくさん売って食べてもらうかということです。
小規模な稲作を維持するには最低限これぐらいの価格が必要だと消費者にも理解していただき、適正な価格で買っていただく。
そのために新たな付加価値をつける必要があります。

例えば、田んぼ体験や関係人口という形で農村に来て一緒に作業してもらうと、「これは自分の田んぼだから、収穫したらここから米が届く」と体感してもらう。
また、標高の高い場所では気温差や水の違いによっておいしい米が取れるので、地域や水、田んぼそのものを価値として伝える。地元の水で作るクラフトビールのように、価格に納得してもらえる仕組みを作りたいと思っています。

例えば5キロ2000円で売っていた米が4000円で売れるようになれば、単純に売り上げは2倍になります。
利益が残れば、ロボットを買ったりレンタルしたりと、適正な投資ができるようにもなります。
そして効率よく耕作して、また適正な価格で買ってもらう。

この循環を作ることが大事です。
だから問題は、ロボットそのものよりもビジネスモデルの構築なんだと思っています。

耕作放棄地、担い手、消費者をつなぐ。技術だけではない農業DXへ

――現在、具体的にはどのような取り組みを進めていますか。

片桐氏――ロボットについてはテムザックと連携しています。
また、耕作放棄地と担い手をつなぐマッチングプラットフォームを、SREホールディングスと一緒に作ろうとしています。

稲作をロボット化するには、草刈りロボットや水門など、いろいろな機械が必要です。
さらに、脱穀、保管、運搬、販売、アプリ開発、マーケティングなど、米が消費者に届くまでのさまざまな会社とも連携していく必要があります。

消費者向けには、現在お米のサブスクも始めています。
まだ量が少ないので、まずは周囲の方々にテストユーザーとして買っていただいている段階ですが、これを100人、1000人、1万人と増やしていきたいと考えています。

――現在の課題はどこにありますか。

片桐氏――ロボットを広げるための仕組み、つまりビジネスモデルの部分です。

田んぼは点在していますので、ロボットを軽トラックに乗せて次の田んぼへ運ぶ必要があります。
壊れた場合のメンテナンス、盗難、肥料の補充、電源切れなども考えなければいけません。
10枚なのか30枚なのか、どこまで点在していても成立するのか。
そうしたロジスティクスをどう組むかは、まだこれからです。

また、技術だけではなく、地域との信頼関係も非常に重要です。
実証実験をする際には、地元の農協や自治体、周囲の農家にご挨拶をして、「一緒に持続可能なモデルを作るべく、やらせてください」とお願いする。
何か問題があれば現地へ行って改善を繰り返す。
そうしたウェットな関係構築をしてくれる人を、いかに確保できるかも重要だと思っています。

「作ってから売る」から「売れるものを作る」へ。稲作をマーケットインで再設計

――最後に、イネロボで最終的に実現したいことを教えてください。

片桐氏――一番大事なのは、稲作をマーケットインで作り直すことです。

ロボットを作って「これを使えば楽になります」ではなく、まずお米を売る側から考える。
付加価値をつけることで5キロ4000円、5000円、さらに6000円、7000円で売れるのであれば、その価格に合わせてブランディングやロボット開発を考える。
消費者に合わせて稲作全体を作り直すということです。

そして、創業の目的としては、日本の米の自給率向上に貢献すること、小規模稲作を消滅させないことです。
高級路線だけにして「お金持ちしか国産米を買えない」という状態にしたいわけではなく、適正な値段で、ちゃんと国産米を供給できる役割も果たしたい。

もちろん、ビジネス展開の過程では東南アジアへ行ったり、他の作物に取り組んだりすることも考えています。
ただ、どこへ展開しても、「小規模稲作をマーケットインで作り直し、米の自給向上に貢献する」という創業時の目的は、一番大事にしていきたいと思っています。

片桐豪志
ineRobo株式会社 CEO
株式会社Revitalize 代表取締役社長兼CEO

投稿者プロフィール
東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程単位取得退学(生命科学修士)
株式会社三菱総合研究所、デロイトトーマツコンサルティング株式会社、有限責任監査法人トーマツ、マッキンゼーアンドカンパニーインコーポレイテッドジャパンを経て、2023年、株式会社Revitalize(リヴァイタライズ)を創業。
その活動の中で株式会社テムザックの高本議長と意気投合し、農作業支援ロボットの開発・販売、水田運営プラットフォームの運営を行うineRobo株式会社を2025年に創業。
中小企業・SU・イノベーション・産学連携の政策・事業の企画立案・実行支援に強みを持つ。一番長くを過ごしたDeloitteではパートナーまで務め、イントレプレナーとして多数の新規事業立ち上げとスケールアップを実現してきた。
農業・林業の国家プロジェクトも多数統括し、社会課題をビジネスで解決することをテーマに活動を展開中。
経産省地域未来牽引事業有識者委員も務める。

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