イノベーションのジレンマ脱却に因習を捨てよ

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幕末の儒学者 佐藤一斎が、経営者やリーダーを支える“重職”のための心得を記した「重職心得箇条」から、8回にわたって紹介していく連載コラム。3回目は、イノベーションを起こすために不可欠な因習の打破について、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏が考察しています。

家々に祖先の法あり、取失とりうしなうべからず。
仕来仕癖しきたりしぐせならいあり、是は時にしたがい変易へんえきあるべし。
(重職心得箇条 第3条 佐藤一斎)


重職心得箇条とは、幕末の儒学者である佐藤一斎が、自藩の重役たちに向け、藩の重職の心構えなどについて書き記したものです。経営者に経営学があるように、管理職(者)には経営者(トップ)と監督者の間を繋ぐ役割を果たすための心構えがあることを示しています。


伝統と因習を混同し、
伝統を、古臭いものだと排除する一方、
自分たちの作った決まり事は、
守るべきものと固守している場合が多い。

パワーポイントは因習か

立派なプレゼン資料を用意しなければ、
仕事が低評価を受けると思い込み、
残業してまで、
パワポファイルを作ることは因習ではないか。

Amazonもトヨタも、
社内向け資料のパワーポイント使用を、
とっくの昔に禁止している。

「読んですぐ理解できる、
簡潔でわかりやすい文章を会議前に配布する」
という、パワポ登場前の方法で、
世界に君臨した実績を上げている。

報・連・相(ほうれんそう)は、因習か

「上司に報告・連絡・相談をこまめに行う」。

報・連・相は、
企業人の基本だと推奨している一方、
今の社員は自主性がない、
言ったことしかやらないと嘆いている経営陣が多い。

報・連・相を徹底すれば、
自主的に考え実行する力は、弱体化する。

目標を定め、権限を委譲し、
仕事の進め方は部下にまかせるマネジメントが
出来ない限り、
次世代の管理職も育たない。

企業理念は伝統だ

伝統とは、無形の系統を受け伝えることである。

企業理念こそ伝統だ。
社員が理念を唱和することを因習だと思い、
軽視してはいないか。

スティーブ・ジョブズは、
分社化していた組織を統合し、
全社の損益計算書、
及び事業ユニットごとに分かれていた
職能部門を一元化した。

アップルの企業理念は、
「日々の暮らしを豊かにする製品の創造」。
その理念を達成するために、
従来のやり方という因習を捨て去り、
組織を再編成した。

ジョブズはiPhoneを始めとした商品で、
イノベーションをもたらしたというが、
彼が変革したのは組織であり、
働く人々の可能性だった。

因習は時代に応じて変えるべきことこそ、
イノベーションの原点だ。

出典:Wikipedia

佐藤さとう一斎いっさい(1772~1859年)は、美濃(岐阜県)岩村藩の代々家老を務める家柄に生まれ、幼少の頃から聖賢の経書に親しんだといわれています。22歳の時、大学頭・林簡順の門を叩き、儒学で身を立てることを決意。林家の養子となり、34歳で林家の塾長に抜擢されます。多くの門弟の指導に当たり、70歳のとき、現在の東京大学総長の立場である昌平黌の儒官に任官。日米和心条約の外交文書の作成にも携わりました。

出典:東洋古典運命学「経営者を支える者の心得③ 伝統と因習」

この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

山脇史端
一般社団法人数理暦学協会 代表理事
算命学カウンセラー協会主催

投稿者プロフィール
13代算命学宗家・故高尾義政氏・清水南穂氏直門下生として、清水氏に20年師事。当協会の学理部門を総括する。
一般社団法人数理暦学協会代表。
担当講座は、干支暦学入門講座・干支暦学1級講座・講師養成講座・数理暦学講座など。
IT事業、企業研修、オンラインシステムの運営を担当

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