日本の中小企業を守るため、「共存・共栄・和合」を理念に世界で稼ぐ
- 2026/10/19
- インタビュー

医療、福祉、美容、農業、畜産などを展開してきたGEN GROUP創業者の中村元一氏が、新たに取り組むのが、日本企業の海外進出を支援する国際ビジネスネットワーク「GOA(Global Opportunities Alliance)」です。人口減少と国内市場の縮小、中小企業の収益力低下への危機感を背景に、「日本の中小企業が世界で稼ぎ、その利益を日本人の賃金と豊かさにつなげる」との理念のもと、世界で稼いだ利益を日本へ還元する仕組みを目指します。
目次
国内市場の縮小を見据え、海外で稼ぐ仕組みづくりへ
Z-EN――中村さんが現在展開されている事業について教えてください。
中村元一氏(以下、中村氏)——GEN GROUPは、株式会社GEN NAKAMURA、Gen&Partners、株式会社Gen&Happiness、医療法人元一会を中心に、医療、訪問リハビリ、美容、障がい者就労支援、農業、畜産、投資、海外不動産を展開しています。
法人化21年目を迎え、次世代へ承継する時期だと考えました。
40代から築いた海外の経営者・企業との人脈を生かし、今年は米国、タイ、ベトナムなどで法人設立を進め、日本企業の海外進出を支援します。
――なぜ今、海外進出支援に取り組むのでしょうか。
中村氏――人口減少と国内市場の縮小、中小企業の経営環境への危機感が理由です。
日本の人口は2050年に約1億469万人、2070年に約8,700万人と見込まれています。※1
また、日本の法人企業の60.3%は税務上の欠損法人です。※2
中小企業は雇用を支えていますが、利益がなければ賃上げは難しく、物価上昇に賃金が追いつかなければ生活も豊かになりません。
優れた技術や商品、サービスを持ちながら国内市場だけでは利益につながらない企業もあります。
海外で顧客と利益を得て日本に還元し、賃金、雇用、地域経済を支えるため、一般社団法人GOAとGOA Holdingsを立ち上げました。
法人設立で終わらせない。現地販売まで支える海外進出支援

――GOAの支援内容と事例を教えてください。
中村氏――情報提供や法人設立代行だけでなく、売上創出まで支援します。
弁護士、会計士、通訳、事務所、銀行、事業パートナーをつなぎ、設立後の営業、販路開拓、交渉、流通も現地パートナーと進めます。
理念は「共存・共栄・和合」。
日本企業だけでなく、現地企業や人々にも利益が生まれるネットワークを目指します。
実際の事例として、新潟県南魚沼の農家から相談を受け、コシヒカリの米国輸出・現地販売の仕組みを構築中です。
FDA(米国食品医薬品局)関連の手続き、輸入、物流、保管、販売体制を整え、品質に見合う価格で売り、生産者が適正な利益を得られるようにします。
また、出資先では日本の中古ブランドバッグなどを海外販売し、フィリピン人配信者によるライブコマースで月間約5,000万円の売上があると報告を受けています。
今後はAIによる販売支援を整え、米や農産物、地域特産品、伝統工芸品へ拡大します。
海外店舗を持たず日本から世界へ直接販売するモデルです。
医療から農業へ。経験を重ねてたどり着いた「医食同源」
――中村さんのこれまでのご経歴を伺いたいです。また、起業されてから、経営することに対しどのような考えをお持ちなのでしょうか。
中村氏――大学時代はアルバイトで月約200万円を稼いだこともあります。
大学を休学して、はり師・きゅう師の資格取得に6年をかけ、卒業後は病院の理学療法科に3年間勤務しました。
資金がほとんどないなか独立し、軽自動車1台で訪問鍼灸を始め、新聞に何万枚ものチラシを折り込みましたが、最初の患者さんは2人。
そのうちの1人、脳性小児麻痺の女の子の母親が勤めるヘルパー会社から利用者を紹介され、半年ほどで売上を確保し、スタッフを雇って治療院を開設しました。
その後、患者さんからリハビリへのアドバイスが欲しいとの要望が多くあったため、30歳を過ぎて夜間の専門学校に通い、理学療法士資格も取得。
訪問看護、美容、クリニック、障がい者福祉、農業、畜産へと事業を広げていきました。
医療に携わっていくなかで、治療だけでなく、病気になりにくい身体づくりや生活環境が重要だと気づき、「医食同源」から食の安全への関心が高まって、農業、畜産にも着手したんです。
医療、食、農業、福祉、教育、生活環境を結び、真の医療と人の幸せを追求しています。

人を育て、事業を次世代へ。経営観を変えた生死の境
――人生観や経営方針を変えた出来事はありますか。
中村氏――32歳の頃、結婚して子どもが生まれたばかりの時に急性脳炎で意識を失い、救急搬送されました。
命の危険や障害が残る可能性を告げられましたが、幸い後遺症はありませんでした。
この経験から、万一の際も家族や社員が困らないよう、人を育てて事業を任せ、自分がいなくても成長する組織が必要だと痛感しました。
妻にも自立して経営できるよう、エステや美容サロンを任せました。
経営とは、利益を増やすだけでなく、人を育て事業を次世代へ引き継ぐことだと、この時に強く意識するようになりました。
――経営で大切にしている価値観とはどのようなものでしょうか。
中村氏――GEN GROUPの理念は「あなたの幸せは私の幸せ」です。
社員、お客様、取引先、地域社会にも利益が生まれ、その結果会社が成長することを目指します。
特に農業・畜産などの一次産業を重視しています。
良いものを作っても利益が得られず、後継者不足に悩む生産者は少なくありません。
海外販路で利益を得られれば若い世代が参入しやすくなり、先祖から受け継いだ土地や農地を次世代へつなげます。
一次産業を守るため世界で稼ぐことも、海外事業の理由です。

10年で1000億円を目指し、世界と日本を利益でつなぐ
――今後10年で、どのような数値目標をお持ちですか。
中村氏――GOA単体ではなく、GOAを通じて海外進出した日本企業と各国のパートナー企業の年間売上合計で1000億円です。
10カ国で各10社、計100社が年10億円ずつ売れば達成できます。
私たちは、日本の商品・技術を求める市場と、進出方法や人脈を持たない企業をつなぎ、設立や現地パートナー紹介にとどまらず、販路開拓、営業、流通、オンライン販売まで支援します。
AIで言語の壁を越えた商談・販売や市場調査も効率化し、各国の企業・専門家が強みを持ち寄って「共存・共栄・和合」を実践します。
目標は数字だけでなく、海外利益を日本に還元して賃金、雇用、地域経済を豊かにし、中小企業、農業、伝統産業を次世代へつなぎ、100年続く企業を増やすことです。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
中村氏――企業が100年続くには変化への対応が不可欠です。
人口減少、高齢化、AIの進化が進む中、従来のやり方だけでは生き残れません。
中小企業が世界へ挑戦できる環境をつくり、「共存・共栄・和合」を世界へ広げたい。
日本企業と現地企業がともに成長し、海外利益が日本へ還元される循環を生み、地域経済を豊かにして若い世代が希望を持って働ける社会を目指します。
これからの20年は、日本と世界の企業をつなぐことに挑戦します。

※1 出典:国土交通省「2050年の社会の姿」
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001845979.pdf
※2 出典:国税庁「令和6年分会社標本調査」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon2024/pdf/R06.pdf














