AIも人も“仲間”として働く時代へ――誰もが力を発揮できる仕組みづくりとは

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AI活用やDX推進の重要性が叫ばれる一方で、「実際に現場で運用する人がいない」という課題を抱える企業は少なくないはずです。そんな現実に向き合いながら、業務改善やBPO運用、AI活用支援を通じて企業変革を支えているのがMamasan&Company株式会社代表の田中茂樹氏です。創業当初は在宅主婦を中心としたBPO事業からスタートし、現在は人とAIが共に働くコミュニティ型プラットフォームへと進化を遂げています。「誰もが力を発揮できる仕組みが重要だ」と語る田中氏の経営マインドに迫り、AI時代における新たな働き方の可能性についてお話を伺いました。

在宅主婦向けBPOから、人とAIが協働するプラットフォームへ

Z-EN――前回のインタビューから2年ほど経過していますが、御社がどのように進化されているのかを教えていただけますか。

田中茂樹氏(以下、田中氏)――この2年でかなり変わりました。
もともとは在宅主婦を中心としたBPO会社としてスタートしたんですが、今はそれだけではなく、業務コーチングやCOSMOSを通じ“自走できる組織”づくりを支援しています。
私たちは2008年の創業時から、「働きたい意思があること」と「パソコンが少し使えること」を働くメンバーに求めてきましたが、その対象がたまたま在宅主婦だったんです。

AIについても考え方は同じです。
私は「AIを業務効率化の道具として使う」というより、「AIも一緒に働くメンバー」だと思っています。

2023年7月からDiscordにChatGPTを連携し、「遊びでも仕事でもまず触ってみよう」という環境を作りました。
現在は約350名のメンバーがおり、AI面談の受講率は80%前後です。

チャットにもAIが常駐し、会話履歴や研修内容も学習させています。
大事なのは、業務の時だけAIを使うのではなく、日常の中にAIがいる状態を作ることなんです。
今は在宅主婦だけでなく、会計事務所のメンバーやAIも含めて、一つのコミュニティの中で協働するプラットフォームになりつつあります。

『COSMOS』は、Mamasan&Company株式会社が提供する“組織のOS”を再構築するプラットフォーム。
設計だけでも、実行だけでもない、再現可能かつ持続可能な形に”チームと仕組みと文化”を丸ごと届ける、OS提供型の支援モデル。

「優秀な人材」ではなく「力を引き出す仕組み」をつくる

――そのように事業を拡大されている根底には、どんな価値観があるのでしょうか。

田中氏――一番伝えたいのは、「優秀な人がいるから成果が出る」のではないということです。
うちには特別な天才が集まっているわけではありません。
働き方や仕組みを工夫すると、人は驚くほどパフォーマンスを発揮できるんです。

だから私たちは「優秀なママさんがいる」ことを売りにしたいわけではなく、「誰でも力を発揮できる仕組みがある」ことを伝えたいんです。

実際、過去の経験やスキルよりも、やる気の方が大事だと思っています。
もちろん離職もあります。
でも、ついていけないから辞めるのではなく、新しいことに挑戦し続けたい人が残っていく。
そういう文化ですね。

地方企業のDXを現場で支える伴走型支援とは

――現在は、主にどのような企業を支援されているのでしょうか。

田中氏――もともとBPOなので、ある程度規模のある企業との相性が良いです。
現在は上場企業や中堅企業との取引が増えていますし、ここ数年で特に増えているのが地方の中堅企業です。

例えば、先代が築いた優良企業に二代目や三代目が戻ってきて、「もっと変えたい」と考えても、ITやDXを推進する人材が不足していることが多い。
そこで私たちが入り、業務可視化、標準化、デジタル化、BPO運用まで一緒に伴走します。

地方の場合、銀行やSaaSベンダーも課題を感じています。
『freee』や『マネーフォワード』を導入しても、実際に運用する人がいない。
DXと言われても現場で誰がやるのか分からない。

そこに私たちの役割があります。
単なる提案ではなく、現場まで入って実装することが特徴です。

――具体的にはどのような支援を行うのでしょうか。

田中氏――大きく三つあります。

一つ目は業務プロセスの可視化・標準化です
うちは在宅メンバーが分業で業務を行うので、誰が見ても分かる粒度まで業務を分解します。
その結果としてBPRや業務改善につながるケースが多いです。

二つ目はBPO運用です。
独自システムを使い、業務ごとの単価管理を行っています。
例えばメール作成とメール送信でも単価は異なります。
作業件数、報酬計算、案件別原価管理、請求書発行まで一元管理しています。

三つ目はAI活用支援です。
私たちは「AI導入のために業務フローを書きましょう」という進め方はあまりしません。
まずAIと仲良くなることから始めます。

私はよく「オンライン上の給湯室」や「タバコ部屋」だと説明するのですが、ChatGPT共有機能を活用し、同じ立場のメンバー同士がAIを交えながらクローズドな会話をする場を作る。
そうやって、個々人の本音も引き出しながらAIが前提知識を蓄積し、人と一緒に育っていく環境を作ることが大事だと思っています。

――実際に成果が出ている事例はありますか。

田中氏――地方企業との取り組みは増えています
特に事業承継の場面では、新しい社長が「変えたい」と思っていても実行する人がいないことが多い。
その時に私たちが現場に入り、女性中心のチームで運用まで落とし込むと、かなりうまく進みます。

また、会計事務所向けのコーチングや業務改善支援も行っています。
もちろん全部が成功したわけではなく、会計事務所向けサービスは思ったほど売れず、「そこまでニーズがない」という厳しいフィードバックも受けました。
ただ、その経験を通じて、本当に必要とされる領域が見えてきたと思っています。

AI導入より先に、人とAIの関係づくりを重視する理由

――AI時代において、人が介在する価値をどう考えていますか。

田中氏――経済を動かしている本質は感情だと思っています。
「良いものを作りたい」「ありがとうと言われて嬉しい」「できなかったことができるようになった」という感情が人を動かし、経済を動かす。
その感情そのものは、AIがどれだけ進化しても代替することはできません。
だから、人が不可欠であり、AIだけでは何事も成立しえないでしょうね。

私たちも、AIを活用し生産性を上げようとしてはいても、それだけを追求したいわけではありません。
人は仕事だけをして生きているわけでもないですし、雑談もし、趣味の話もし、それぞれの生活が必ずある。
だから、AIもまず人の生活の中に入り、その延長線上で仕事に活用されるべきだと思っています。

誰もが活躍できる働き方を社会のスタンダードに

――今後どのような挑戦をしていきたいですか。

田中氏――実は私は昔から「全く新しいことをやりたい」と思ったことがありません。
目の前にある課題を見て、「これ面白いな」「こうしたら良くなるな」と工夫したことを積み重ねてきただけなんです。

ただ、2012年に法人化した時から、一つだけ変わらない思いがあります。
それは、「私たちの働き方を世の中のスタンダードにしたい」という思いです。

在宅主婦でも、高齢者でも、海外在住者でも、AIでも、一緒に働ける。
場所や属性ではなく、その人が力を発揮できる仕組みを作る。
そしてAIも含めた「共に働く世界観」を広げていく。
それが今後も変わらないテーマだと思っています。

田中茂樹
mamasan&company株式会社 代表取締役

投稿者プロフィール
私立高校 普通科体育コースを卒業後、専門学校で会計を学び、独学でサーバー、ネットワーク、データベース等のIT関連について学ぶ。
スーパーマーケットを展開する会社で、経理と情報システムを担当。本支店会計基盤作り、部門別損益分析フロー作りを経て、EDI化(主にPOS、EOS)プロジェクト責任者となる。
創業半年の会社のメンバーとしてブライダル事業での経験を積み、2年目以降より、取締役CFO・IPO[新規株式公開]プロジェクト責任者。
管理本部業務の業務改善を業務受託(その後、取締役管理本部長)、管理本部業務フロー構築、リストラプロジェクト責任者を経て、コストダウンの一案でママさん BPOをスタートし「Mamasan&Company 株式会社」を創業。
創業時より、在宅ワークをチーム制で運営する形を創造し、業務プロセス可視化、再構築の達成により日々進化させている。

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