若手起業家と“共同創業”するVC―次世代スタートアップ戦略

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若手起業家に特化したベンチャーキャピタルとして注目を集めるタクミキャピタルファンド。19歳〜27歳の起業家に対し、資金提供にとどまらず「共同創業者」として深く関与する独自モデルを展開しています。代表の横山拓未氏は、シェアハウスでの共同生活や事業アイデアの提供、人材支援を通じて、創業初期から売上成長を実現し、M&Aや上場など多様な出口戦略を描いています。次世代の連続起業家を輩出し、日本経済に持続的なインパクトをもたらすエコシステムの構築を目指す横山氏に独自の支援策についてお話を伺いました。

黒字化前提の投資戦略でJカーブモデルに一石を投じる

Z-EN――横山さんが現在、運営するタクミキャピタルファンドのコンセプトについてご説明いただけますか。

横山拓未氏(以下、横山氏)――若手起業家への投資を軸としており、将来的にはこの世代からIPOやM&Aを経験した連続起業家を輩出するための土壌づくりに貢献したいと考えています。
結果として、その集合体が日本の経済や国力にインパクトを与える状態になることを目指しています。

――素晴らしいビジョンですね。投資方針の特徴について教えてください。

横山氏――一般的なベンチャーキャピタルは「Jカーブ」と呼ばれるように、初期は赤字で一気に成長させて上場を狙うモデルが多いと思います。
一方で当ファンドは堅実な形を志向しており、翌月に黒字化できる事業や、すでに顕在化しているビジネスモデルなど、「やり切れば儲かりやすい」領域に投資しています。

19歳〜27歳の若手起業家に対して、事業アイデアの提供と共同生活型の伴走支援によって、立ち上げ初期から売上成長を実現していくものです。

創業期まではシェアハウスで生活し、細やかな支援を受ける

シェアハウス型支援が生む、圧倒的な初期成長と信頼関係

――投資先をマンションに住まわせ共同生活をしているとのことですが、どのような取り組みなのでしょうか。

横山氏――渋谷・恵比寿・池尻大橋の3拠点に3段ベッドとデスクを構え、シェアハウス形式で住み込みながら事業に取り組める環境を作っています。
創業期は不安や不明点が多いため、私自身も同じ拠点で生活を共にし、最大限の支援ができるようにしています。

投資前から一緒に過ごすことで見えてくる部分も多く、投資判断の精度向上にもつながっています。
これは、他ではあまりやられていない、当ファンドの特徴の一つです。

――横山さんが投資において重視している考え方とはどのようなものでしょうか。

横山氏――素直さと誠実さです。

若手起業家の方たちに本音で話してもらうことを重視しており、共同生活を通じて深い部分まで知ることで、長期的に一緒に取り組めるかを判断しています。
若手起業家は正しい環境と初期設計さえあれば高確率で成功できる、と私は考えています。

若手起業家たちとの交流
最後列左端が横山さん

IPO偏重からの脱却、M&Aを軸にした柔軟な出口設計

――他の特徴的な点についてもお話いただけますか。

横山氏――当ファンドでは、M&Aやセカンダリーによる流動性確保を重視しています。
従来のVCは上場前提のモデルが主流でしたが、現在は環境が変化しています。

また、将来性でバリュエーションが上がりすぎ、M&Aが成立しづらいという課題もあります。
そこで適正な価格で投資し、M&Aと上場の両方を選択できる状態を作ることを意識しています。

――タクミキャピタルファンドとして、今最も打ち出したい点は何でしょうか。

横山氏――(2026年3月)現在、1号ファンドの投資が終了し、2号ファンドを開始するにあたり、私たちの活動を共に支えてくださる方々との接点を増やしていきたいと考えています。
また、一部既存投資先でも、上場前提ではなく、積み上げながら途中でM&Aを行う設計を志向しています。

数億円から10億円未満で成立するバリュエーションで投資しているケースも多く、M&A情報を開示しやすい状態でもあるので、買い手にとって参入しやすい環境づくりを心掛けています。

事業アイデア×人材供給で「起業前」から価値を創出

――若手起業家たちに対する、横山さんならではの支援内容とはどのようなものですか。

横山氏――具体的には、学生ネットワークを活用した月数名規模の採用支援創業前に事業アイデア検証を行うプログラムシェアハウスでの24時間相談可能な伴走体制といった3つを提供しています。
採用支援に関しては、起業前提でインターンとして投資先に入ってもらう仕組みも整えています。

創業前のプログラムを経て、1年程度で売上1〜2億円規模に成長したケースもあり、早い段階で再現性が見えています。
ほかに、1号ファンドの設立前から「枠を用意する」と言ってくださった起業家の方々がいて、実際の投資にも繋がっており、大変心強い存在が身近にいることも強みだと考えています。

起業を目指す皆さんと横山さん(左から3人目)

 

若手起業家の意思決定を支える伴走型インフラとは

――若手起業家が抱える課題についてはどのようにお考えですか。

横山氏――一「何で起業するか分からない」という声が多く、特に優秀な学生ほど意思決定に悩む傾向があります。
そのため、事業アイデアの候補をストックし、適したものを提案することで起業のきっかけを提供するといった支援も積極的に行っています。

――事業アイデアを提供し成功した事例について教えてください。

横山氏――1件目の投資先でもある、輸出事業を行う企業は、創業前からシェアハウスで一緒に過ごし、日本の一次産業の可能性を掘り起こしていく事業アイデアへの対話を重ねて検討しました。
2025年の起業時に投資し、現在も順調に成長を続けています。

――御社の実績についてはいかがでしょうか。

横山氏――投資先も十数社と増えてきており、すでにセカンダリーにより約10倍で売却した実績があります。
ファンドとしては比較的早い回収であり、流動性の高さは特徴の一つです。

連続起業家を生み出す、日本発スタートアップ・エコシステムの未来

――今後の展望について教えてください。

横山氏――若手起業家に対する事業アイデア提供や人材支援を強化しつつ、M&Aや上場など多様な出口を増やしていきます。
出資に限らず、買収や事業連携にも積極的に取り組んでいきたいですね。

今後は、起業前の学生からシリーズA手前の若手起業家に対して、事業アイデアの提供と人材供給を組み合わせ、3年以内にM&Aまたは黒字化できる企業を継続的に輩出していきます。

横山拓未
株式会社タクミキャピタルファンド 代表取締役社長

投稿者プロフィール
2024年1月に独立系ベンチャーキャピタルであるスカイランドベンチャーズ株式会社へ入社。
起業家シェアハウスなど個人の活動でも起業家支援活動を行う。
2025年に、若手起業家と共同創業するベンチャーキャピタル、TKM1号投資事業有限責任組合を設立し、General Partnerに就任。
株式会社タクミキャピタルファンドは、若手起業家に特化したベンチャーキャピタルで、TKM1号投資事業有限責任組合ほか複数組合を組成し、本格的な投資活動を開始。資金提供に留まらず、若手起業家と共に「共同創業者」として深く関与する支援モデルを展開する。
プレシードからミドルステージのスタートアップに対して、シェアハウスやシェアオフィスを活用しながら、公私共に伴走する形で支援を行う。
事業戦略の立案から資金調達、人材採用、さらにはグローバル展開やイグジット戦略まで、あらゆるプロセスにおいて寄り添い、若手起業家が真に挑戦に集中できる環境を構築する。

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