【書評】部下やチームを成長させる、「徹底的な本音」の関係

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日本では、批判や不満などは、思っていても口に出さないことが美徳のようなところもありますが、口に出さないと相手に自分の考えは伝わりません。特に、仕事で日々多くの同僚や部下と関わりながら意思決定をしていくプロセスでは、よりひとりひとりのとがった意見が重要になってくるでしょう。そこでは、相手を思い気遣いつつも、自らの意見をズバリと言う「徹底的なホンネ」を言い合える関係が非常に大事なのだそうです。今回は世界一人材競争が厳しいと言われるシリコンバレーで、数々の名だたるIT企業のCEOからコーチに迎えられたキム・スコットによる著書について、企業支援のエキスパートとしてご活躍の書評ブロガー、徳本昌大氏の書評から紹介します。

GREAT BOSS(グレートボス) ―シリコンバレー式ずけずけ言う力
著者:キム・スコット(東洋経済新報社)

本書の要約

「心から相手を気にかける」ことと、「言いにくいことをズバリと言う」ことを同時に行うと「徹底的なホンネ」を実践できるようになります。
部下に配慮するばかりで何も伝えない上司は、部下の力を引き出せず、彼らを不幸にしてしまいます。
部下のスキルを高めるために、心から相手を気にかけ、議論を重ねるようにしましょう。

よい上司について学ぶ

1)あなたは独りではない
2)いい上司になる方法はあなたが思っているよりも難しくない
この2つを知れば、気持ちが楽になるはずだ。

よいボスになりたければ、「ラディカル・キャンダー」を身につけるべきだと著者のキム・スコットは指摘します。ラディカル・キャンダーとは、「徹底的なホンネ」という意味。
アップルやグーグルの管理職研修プログラムで結果を出してきた彼女は、ボスには遠慮は禁物で、部下の反応を気にしすぎないようにすべきだと本書の中で述べています。

徹底的なホンネ(ラディカル・キャンダー)のメソッドはとてもシンプルです。

上司が同僚や部下を心から気にかけつつ、言いにくいことをズバリと言う文化を社内に築くようにすればよいのです。

3つの責任を知る

上司には以下の3つの責任があります。徹底的なホンネで部下と議論することで、上司は責任を果たせるようになります。
■指導
フィードバックを与え合う(褒めると同時に批判する)文化を作り、メンバーを正しい方向に導きます。

■チーム構築
チームメンバーひとりひとりのやる気の源になるものを理解し、燃え尽きや退屈を防ぎ、チームを一体に保ちます。

■結果を出す
上司としての役割と部下との関係がうまくいきはじめると、好循環が生まれます。チームで力を合わせることで、一人では出せないような結果を出せるようになります。

あなたと直属の部下との関係は、部下とその下にいる人たちとの関係に影響し、ひいてはチーム全体の文化に影響する。

お互いに信頼し合える、人間らしい絆をあなたが直属の部下と築けるかどうかが、そのほかのすべてを左右する。

この信頼関係を固めることが成功のカギになる。

2つの姿勢を意識する

よい上司になりたければ、次の2つの姿勢を組み合わせましょう。

①「仕事上の鎧」を捨てる
信頼関係を築くには、上司としてではなくひとりの人間として全力で部下のひとりひとりを気遣います。「心から気にかけること」で、部下との強固な人間関係を築けます。

②部下の仕事がお粗末な時、正直にそう伝える
上司は結果を出せない部下には、厳しい評価を伝える必要があります。
部下が失敗した時には、はっきりとダメ出しをしますが、頭ごなしに叱るのではなく、なぜ、どこがダメなのかが本人が理解できるようにすることが大切です。

ここでは、上司としての視点で、思いやりを持って接することを忘れないようにしましょう。

部下からの批判を受け入れる

徹底的なホンネを出せる文化を作りたければ、まずは自分を批判してもらうことから始めましょう。
批判を引き出すことで、上司も失敗するということを部下は理解し、フィードバックを歓迎している姿勢も示せます。

また、批判を受け入れたり、キャリアについての話し合いや部下との1on1を定例化したりすることで、部下からの信頼を得られ、結果を出せるようになります。

チームの風通しが良くなる「徹底的なホンネ」(ラディカル・キャンダー)

「徹底的なホンネ」の関係は、相手を「心から気にかけ」ながら、「言いにくいことをズバリと言う」時に生まれる。
ホンネをズバリと言うことで、信頼が築かれ、コミュニケーションが生まれ、狙った結果が出るようになる。

また、「徹底的なホンネ」の関係は、管理職の心の奥にある恐れを減らすことができる。

部下が上司を信頼し、上司が自分を気にかけてくれていると信じられると、次の5つのいいことが起きやすくなります。

①部下は上司からの褒め言葉も批判も受け入れて、行動するようになります。

②上司は部下にどこがうまくいっているかを教え、ダメな点も正直に教えられるようになります。

③部下同士の間にホンネの関係が伝染し、無駄な努力と同じ失敗を繰り返さなくなります。

④チームにおける自分の役割を理解し、受け入れるようになります。

⑤結果に目を向けるようになります。

相手のことを第一に考えたホンネこそ極上のアドバイス

上司が部下との対立を避けると、チームの中で隠し事が当たり前になり、コミュニケーションが悪くなります。
上司と部下が本音で話せるような文化を作るには、全員が批判に慣れなければなりません。
お互いへの批判は、あいまいでは伝わりませんし、謙虚な姿勢がなければ、組織がギスギスします。
上司が部下のことを「心から気にかけている」ことが分かれば、強いメッセージを伝えても悪い感情はすぐに消えてなくなります。

例えば、友達のズボンのチャックが開いているのを見つけた際、 あなたがその事実を友人に伝えたら、友人は一瞬、恥ずかしいと感じます。
しかし、もしあなたがそれを伝えなければ、その後、より多くの人たちの前で友人は恥をかいてしまうのです。

相手の事を第一に考え、「ズボンのチャックが開いていますよ」と伝える方が、何も言わないよりもはるかに気にかけていることになるのです。

部下に失敗をさせたくなければ、現実から目を背けない率直なアドバイスをすべきです。

徹底的なホンネがチームを育てる

「心から相手に気をかけること」と「言いにくいことをズバリ言う」マトリックスを使い、部下とのコミュニケーションを活性化させましょう。

出典:GREAT BOSS―シリコンバレー式ずけずけ言う力
(図表はZ-EN編集部作成)

部下同士がお互いに「ホンネに徹する」ようになれば、チームのコミュニケーションが改善します。
上司も間に入る必要がなくなり、他の重要なタスクに時間を使えます。

チームの風通しをよくし、お互いに支え合うことで、組織はより大きな成功を収められるようになるのです。

人間の知的あるいは倫理的な徳のすべての源泉は、間違いを正す力である。

人間は議論と経験を通して、間違いを正すことができる。経験だけでは、間違いは正せない。

経験がどのように解釈されるかを知るためには、議論が必要である。(ジョン・スチュアート・ミル)

「心から相手を気にかける」ことと、「言いにくいことをズバリと言う」ことを同時に行うと「徹底的なホンネ」による議論が活発になり、誰もが自身の間違いに気づくようになります。

部下に配慮するばかりで何も伝えない上司は、部下の力を引き出せず、彼らを不幸にしてしまいます。
部下のスキルを高めるために、心から相手を気にかけ、議論を重ねるようにしましょう。

徹底的なホンネで言い合える関係を構築することで、チームを強くできるのです。

徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)

出典:徳本昌大の書評ブログ!毎日90秒でワクワクな人生をつくる「GREAT BOSS(グレートボス)―シリコンバレー式ずけずけ言う力(キム・スコット)の書評」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
iU 情報経営イノベーション専門職大学特任教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。
現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。
ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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