自社の魅力を語れる企業に!まだ見えていない価値を社会の声から発掘するブランディング
- 2026/9/14
- 企業紹介

「自分たちの会社は、もっと評価されていいはずなのに、うまく伝えられない」。そんな経営者の悩みに向き合うのが、crack株式会社代表取締役、大野陣氏です。企業の魅力を経営者の主観だけで定義するのではなく、顧客や取引先など第三者への調査から“社会からどう評価されてきたか”を掘り起こし、理念やストーリーとして可視化します。さらに、ワークショップや研修、採用支援、アートなどへと展開する独自の手法を構築されています。製薬会社で8年間、数字を軸とした世界を経験した大野氏がたどり着いたのは、数値化しにくい企業の個性や誇りを社会に伝える仕事です。
目次
「自分たちでは気づけない魅力」を、第三者の声から発掘する
Z-EN――大野さんが代表を務められるcrack株式会社では、どのような事業を展開されているのでしょうか。

大野陣氏(以下、大野氏)――大きく分けると、ブランディングの中で「アートを使う」事業と、「第三者の評価を集めて、自社の魅力を言語化していく」事業があります。
アート事業は、従業員が数百名、数千名以上いる企業が多いです。
規模が大きくなるほど、ビジョンや理念を社員一人ひとりに浸透させるのが難しくなります。
もう一つは、求人票を毎年出しているものの、給与や福利厚生などの条件以外の魅力を語れていない企業です。
保育、介護、薬局、製造、運送・物流など、特にBtoB企業には多いと思います。
――御社が考える「ブランディング」とは、どのようなものですか。
大野氏――簡単に言えば、他社にはない自分たちの魅力が、ちゃんと分かりやすく伝わっている状態だと思うんです。
僕らは企業と話し合って主観的に魅力を作るのではなく、まず企業の外側を見ます。
企業が存続しているということは、誰かに選ばれてきたということですよね。
顧客、提携先、株主、仕入れ先など、ステークホルダーがその企業を選んできた理由は外側にある。
だから、会社の魅力をコンセプト化するなら、外部を調査しなければ無理だと考えています。
まず20ページほどの調査設計書を作り、どのステークホルダーに何を聞けば、企業自身も気づいていない魅力を言語化できるかを設計します。
最大70社ほどに対面やオンラインで調査し、30〜40社調査すると、発言をまとめたレポートだけで50〜60ページになります。
それをもとにコンセプトやストーリーを作り、伝わりやすい媒体に変えていきます。

理念を浸透させる鍵は、社員自身が「自分の言葉」で語れること
――その後、社内にはどのように浸透させるのでしょうか。
大野氏――ワークショップと研修をします。
普通のブランディングファームは制作して納品して終わるケースも多いと思うんですが、新しいコンセプトやストーリーも、そこに生きる人たちが腹落ちして、自分の言葉で喋れなければハリボテですよね。
3〜4時間ほどのワークショップで、「社会からこうやって評価されてきた会社ですよ」「こう言われていますけど、どう思いますか」と社員さん自身に考えてもらいます。
弊社の社訓は「自社の自慢できない社員を0にする」です。

実際、大阪の清掃会社さんでは、フィードバック後に「こんなに感謝してもらえていることを知った」「知らないことがたくさんあった」という声が出て、自分たちの会社や仕事に以前より誇りが持てるようになったかという質問に、100%がイエスと答えました。

採用競争を変える、「条件」ではなく「その会社で働く意味」の伝え方
――採用については、どのような支援をされるのでしょうか。
大野氏――採用と理念浸透って、結構近いと思っています。
採用では、「入ったらこんな体験ができる」「こんな社会貢献ができる」と、自社だけの魅力を語らないと競合との差がつきません。
そこで、調査した社会的なファクトから採用説明会資料やピッチ資料を作り、求人原稿にも落とし込みます。
さらに、閲覧数や文言、ターゲットなどを見ながらPDCAを回し、採用運用まで伴走するケースもあります。
新卒や中途で新しいメンバーが入った際には、「魅力伝達研修」を行うこともあります。

製薬会社から起業へ。定量の世界を離れて見つけた「企業の個性」
――大野さんが、今の事業にたどり着いた背景を教えてください。
大野氏――僕は製薬会社に8年間勤めていました。
国内に5,000人ぐらいいる会社で、最年少出世のタイミングを何回か経験(3回ほど経験させて頂いて)して、かなり定量的な世界で生きていたんです。
がむしゃらに突き進んだら、逆に、もっと情緒的で、個性のような数値化しづらい世界に触れたくなった。
それが起業のきっかけの一つです。
最初は、顔を隠してXで「大手で出世する理論」を発信していて、1カ月で数百万回見られるアカウントになったことからSNSマーケで起業しました。
年商1億円ぐらいまでいきましたが、結局はフォロワー数やインプレッション、売上など、すごく定量的なビジネスにしてしまった。
もちろん、SNSマーケが問題ということではなくて、私のやり方と考え方の問題だったと思います。
その上で「これがしたかったわけじゃない」と思い直し、企業の話をじっくり聞き始めたんです。
すると、自分たちの魅力を語れない企業が多いことに気づきました。
本人に聞いても出てこないなら、外に聞くしかない。
そこから「第三者から企業の価値を発掘する」事業へ変わっていきました。
その唯一無二の魅力をレポートにまとめ、求人媒体や求職者への説明会用資料に変換していく。
そしてその後のフェーズとして、魅力を表現するなら、言語だけではなく、非言語での出力、つまりアーティストと組むのがいいと思ったんです。
企業も一社一社の個性を表現すべきだと思いました。
現在は国内外約200人のアーティストと業務提携し、企業の哲学とアーティストの哲学・表現を見て相性をマッチングしています。

言葉からアート、そして地域へ。企業や社会に眠る価値を新しい形で届ける
――具体的には、どのような企業に力を発揮できますか。
大野氏――経営層が「伝わらない」悔しさを持っている企業だと思います。
「もっと理念が伝わってほしい」「うちの会社、いい会社のはずなんだけどな」という悔しさです。
特にBtoBの製造業、運送・物流、薬局、介護、保育など、エンドユーザーと直接接していない企業とは相性がいいです。
あとは、周年を控えている企業ですね。
50周年、100周年などの周年を控えた企業なら、積み重ねてきたものを一つのアートとして残し、グッズやノベルティにすることもできます。
IPOを控え、「頭二つ抜けた見せ方をしたい」というベンチャーも対象です。





――今後はどのような展開を考えていますか。
大野氏――アートだけではなく、戦略PRも持っています。
ユニクロさんや森永乳業さんなどを担当し、広告枠ではなくNHKなどの報道枠に企画を持ち込み、特集してもらう仕事です。
三重県の企業では、NHK三重や中日新聞の夕刊一面で特集してもらった実績もあります。
今後は自分達がひたすら営業するだけではなく、広報やハブになる方々との連携を強め、「話を聞きたい」と来てもらえる形にしたい。
行政や地域のブランディングにも興味があり、福岡県に新しくできる公立中学校の校歌を作る仕事もしています。
企業や地域がすでに持っているけれど、まだ自分たちでは気づいていない価値を見つけて、それをその人達らしい形のまま社会に共感してもらう。
その為に、言語と非言語の全てを使う。
そこを、もっと広げていきたいですね。















