デザインは、新しい景色をつくるためにある!心を動かす物語の伝え方
- 2026/7/23
- 企業紹介

映画の宣伝は、作品を紹介するだけの仕事ではない。株式会社プレインズ代表の吉川俊彰氏が大切にしているのは、作品に込められた想いや世界観を深く読み解き、人の感情が動く形へと翻訳することです。その姿勢は、『ソウ』シリーズや『カラオケ行こ!』をはじめとする数々の映画宣伝で培われ、現在では企業ブランディングや地域プロジェクトにも生かされています。「デザインで新しい景色を作る」というPurposeのもと、目に見えるクリエイティブだけでなく、その先に生まれる体験や感情までを設計する吉川氏に、映画宣伝の第一線で培った思想と、それを社会へ広げようとする挑戦についてお話を伺いました。
目次
作品・制作者・観客。三者をつなぐクリエイティブという仕事
Z-EN――吉川さんは、株式会社プレインズの代表として、映画宣伝クリエイティブの制作に20年以上携わっていらっしゃいますが、現在は、どのようなお客様へ、どのような価値を提供されているのでしょうか。
吉川俊彰氏(以下、吉川氏)――対象となるお客様は大きく3者です。
直接ご依頼をいただくのは、映画配給会社の宣伝部や宣伝プロデューサーの方々で、映画をより多くの人に届け、観客動員や売上につなげるというビジネスの成果としての価値を提供しています。
一方で、本当に大切なのは、その先にいる、実際に映画を観てくださる観客です。
その作品を観ることで得られる新しい体験との出会いのきっかけ、観終わった後に残る感情まで届けたいと思っています。
さらに、作品をつくる制作側に対しても、作品に込めたテーマや思いをビジュアルで表現し、多くの人へ届ける役割があります。
この3者それぞれの価値が生み出せるようにバランスを意識して仕事をしています。
世界観を読み解き、感情へ翻訳する「伝える力」
――他のデザイン会社と異なり、プレインズの強みと言えるのはどのような点でしょうか。
吉川氏――一番の特徴は、「作品の世界観と届けたい相手を深く読み解くこと」です。
映画は価格や機能ではなく「物語」を届ける仕事なので、感情や空気感、時代性といった言語化しにくいものを扱います。
さらに、言語化を不得手とするターゲットや世の中の「気分」にチューニングして作る必要があるため、作品に込められた思いや世界観を読み解き、届けたい相手の感情に合わせて表現を組み立てることが重要になるんですね。
この「物語を読み解き、伝わる形へ変換する力」が、プレインズらしさだと思っています。

――代表的なプロジェクトと、印象に残っているエピソードを教えてください。
吉川氏――代表作の一つが『ソウ』シリーズです。
実は僕はホラーが苦手なのですが、試写で作品を観た瞬間、その圧倒的な衝撃に引き込まれ、「この体験をどう伝えるか」を考えました。
結果的に従来のホラー作品とは違う、白い余白を生かして想像力を刺激する表現にすることで、作品の斬新さを伝えられたと思っています。
また、『カラオケ行こ!』では映画の撮影段階から携わり、主演の綾野剛さんが「これは変なヤクザが主役の話ではなく、一人の中学生の青春物語なんだ」と話してくださいました。
その一言で宣伝の軸が定まり、二人の関係性を中心にしたビジュアルへ方向転換できました。
作品づくりに関わる皆さんと一緒に面白がりながら作れた印象深い仕事です。

偶然の出会いから映画宣伝へ
――吉川さんご自身は、どのようなキャリアを歩み、プレインズを立ち上げられたのでしょうか。
吉川氏――高校まではサッカーばかりしていて、大学も経済学部でした。
転機になったのは「渋谷系」カルチャーとの出会いです。
デザインや写真、映画に惹かれ、バウハウスの思想にも影響を受けて桑沢デザイン研究所へ通いました。
当初はフォトグラファーを目指しましたが、学生時代にアルバイトをしていた広告デザイン会社の社長に声を掛けていただき、「absolute glamour」を立ち上げました。
デザイナー経験ゼロから映画会社へ営業に行き、偶然、映画宣伝の仕事と出会いました。
その後、10年以上携わる中で、「クリエイターがもっとのびのび働けるチームをつくりたい」と考えるようになり、その思いからプレインズを設立しました。
作品の本質を捉えることで生まれた、新しい伝え方
――プレインズのPurpose「デザインで新しい景色を作る」には、どのような思いが込められているのでしょうか。
吉川氏――デザインは見た目を整えるものではなく、人や社会に新しい体験や価値を生み出す手段だと考えています。
作品を受け取る人の心象風景や、プロジェクトに関わる人たちが見る景色まで含めて「景色」をデザインしているという考え方です。
目に見えるクリエイティブだけでなく、その先にある感情や体験まで設計することが、自分たちの役割だと思っています。

映画を超え、企業や地域へ。「物語」が持つ可能性を広げる挑戦
――映画宣伝で培った強みは、現在取り組まれている企業ブランディングや地域プロジェクトでは、どのように生かされているのでしょうか。
吉川氏――映画宣伝で培った「物語を読み解き、組み立てる力」が、そのまま生きています。
企業や地域、商品も、それぞれ背景や価値を持った一つの物語です。
私たちは機能や特徴を伝えるだけではなく、人の感情が動く文脈へ変換することを得意としています。
そのため、映画だけでなく企業ブランディングや地域プロジェクトでも、本質的な価値を伝える支援ができると考えています。

――今後はどのような事業やパートナーとの取り組みに力を入れていきたいと考えていますか。
吉川氏――動画やSNSが普及し、映画宣伝のあり方も大きく変わっています。
「物語」と「情報」が同質で混在する時代なので、その中で「物語」としてちゃんと伝えられるかが課題だと思います。
今後は、観客自身も参加して作品を一緒に育てていく「ナラティブ」を生み出すような、新しい映画宣伝モデルに挑戦していきたいですね。














