2025年コンクラーベで誰が次の教皇になる?有力候補と選挙の行方を予想
- 2025/4/28

2025年5月、ローマ・カトリック教会は歴史的な転換点を迎えます。2025年4月21日のフランシスコ教皇の逝去を受け、新しい教皇を選ぶ選挙「コンクラーベ」が始まるからです。バチカンのシスティーナ礼拝堂に集う枢機卿たちの投票によって、誰が次期教皇に選出されるのか——世界中の注目が集まっています。今回は、コンクラーベの仕組みや日程、有力候補者の背景を分析し、予想を試みてみましょう。
コンクラーベの基本と日程~なぜ5月上旬に始まるのか
「教皇選挙」のルールと秘密
コンクラーベは、ローマ教皇を選ぶための厳格な選挙制度です。80歳未満の枢機卿のみが投票権を持ち、投票はバチカンのシスティーナ礼拝堂で秘密裏に行われます。伝統的に、新しい教皇が決まると煙突から「白い煙」が上がり、鐘の音で全世界に知らされる仕組みです。
フランシスコ教皇の葬儀が4月26日に執り行われたことを受け、次期教皇を選ぶコンクラーベは5月上旬に始まると予想されています。ただし、枢機卿たちの到着状況によっては日程が前後する可能性もあります。現時点では、5月5日から10日頃に投票が開始されると予想されています。
誰を選ぶかで変わる教会の未来
コンクラーベで枢機卿たちが最も重視するのは、誰が現代の課題に対応できるかという点です。移民問題や気候変動、教会内の分裂といった課題を解決するリーダー像が議論されています。特にフランシスコ教皇が推進した改革路線を継続するか、それとも保守派の意向を反映するかが焦点となります。
次期教皇の有力候補者を予想~地域別の顔ぶれ
イタリア出身の候補者たち
コンクラーベでは、イタリア出身の枢機卿が常に有力視されます。今回は、ピエトロ・パロリン枢機卿(70歳)の名前が挙がっています。フランシスコ教皇の側近として中国との関係改善に尽力した実績があり、外交手腕が評価されています。また、マッテオ・マリア・ズッピ枢機卿(69歳)は、ロシアとウクライナの和平交渉で仲介役を務めた経験から国際的な調停者として注目されています。
アジア初の教皇誕生なるか?
フィリピン出身のルイス・アントニオ・タグレ枢機卿(67歳)は、アジア地域で初の教皇候補として名前が挙がっています。中国や東南アジアの信徒との接点が多く、多様性の象徴としての期待が高まっています。韓国のラザロ・ユ・フンシク枢機卿(73歳)も、北朝鮮との対話実績から平和の推進者として支持を集める可能性があります。
アフリカとアメリカの候補者
コンゴ出身のフリドリン・アンボンゴ・ベスンガ枢機卿(65歳)は、紛争地域での活動経験から忍耐と対話の重要性を説く人物です。アメリカからは、移民支援に取り組むジョセフ・ウィリアム・トービン枢機卿(72歳)が社会的弱者への眼差しを評価されるでしょう。
ヨーロッパの保守派と改革派
ハンガリーのペーテル・エルドー枢機卿(73歳)は伝統的な教義を重視する保守派の代表格です。一方、フランスのジャン=マルク・アヴリーヌ枢機卿(66歳)は移民やイスラム教徒との関係でフランシスコ教皇と理念的に近いと目されています。
コンクラーベを左右する3つの要素
1. フランシスコ教皇の「遺産」をどう扱うか
フランシスコ教皇は環境保護や貧困問題に積極的に取り組みましたが、教会内では保守派からの反発も根強く残っています。次期教皇が「改革の継続」を選択するか、「伝統回帰」を選ぶかで、枢機卿たちの投票行動は大きく分かれるでしょう。
2. 地域バランスと「グローバル教会」の模索
現在の枢機卿のうち、108人がフランシスコ教皇によって任命されました。これは、全体の枢機卿252人の中で、80歳未満の投票権を持つ枢機卿135人のうちの数です。ヨーロッパ以外の出身者が増えたことで、ヨーロッパではなく南半球などの声を反映する教皇が選ばれる可能性もあります。アジアやアフリカの候補者が選出されれば、カトリック教会のグローバル化がさらに進むでしょう。
3. 教会の「一致」をいかに実現するか
分裂した教会を再統合する能力が、次期教皇に求められています。フランシスコ教皇の路線を継承しつつ、保守派との対話を進められるバランス感覚を持つ人物が有利とみられます。例えば、外交経験が豊富なパロリン枢機卿や、中東和平に携わったズッピ枢機卿は、こうした資質を兼ね備えていると予想されます。
映画「教皇選挙」は現実をどれだけ反映しているのか?
フィクションと現実のギャップ
アカデミー賞にもノミネートされた映画『教皇選挙』は、現在も日本で公開中で話題になった作品です。劇中では、保守と改革の対立や枢機卿たちの駆け引きがドラマチックに表現されていますが、実際のコンクラーベはより厳格な秘密主義が守られます。投票の詳細や議論内容は外部に漏れず、映画のような個人的な交渉シーンは現実的ではないと考えられます。
イタリア以外の出身者は不利は本当か?
映画では「ヨーロッパ出身者が有利」という描写がありましたが、実際にはフランシスコ教皇(アルゼンチン出身)の選出でこの固定観念は打破されました。2025年のコンクラーベでは、枢機卿の42%がヨーロッパ以外の出身者です。アジアやアフリカの候補者が選ばれれば多様性の象徴として評価される可能性も高く、地理的偏見は薄れつつあります。ただし、バチカン内部の伝統を重んじる保守派の存在は無視できず、出身地域だけでなく「どのような改革案を提示できるか」が、誰が選ばれるかの鍵となるでしょう。
フランシスコ教皇の功績
貧しい人々の教会を掲げた改革
2013年に就任したフランシスコ教皇は、カトリック教会史上初のラテンアメリカ出身者として「弱者に寄り添う教会」を宣言しました。その代表的な功績が、2015年に発表された回勅『ラウダート・シ』です。気候変動を「人類共通の課題」と位置づけ、環境保護を信仰の一部として訴えました。このメッセージは宗教の枠を超え、国際的な環境運動に影響を与えています。
教会の透明性と倫理の強化
フランシスコ教皇は、性的虐待の被害者との直接対話を行い、彼らの声を聞くことに努めました。また、教皇は性的虐待の加害者に対する処罰手続きを迅速化する方針を打ち出し、教会内での報告義務を強化しました。具体的には、すべての聖職者が虐待の疑いを報告することを義務付けるルールを制定しました。またフランシスコ教皇は、バチカンの財政の透明性を高めるために、国際的な金融基準に沿った改革を進めました。これには、資金洗浄防止のための新しいルールや監査制度の導入が含まれています。教皇は、バチカンの財政管理を見直し、透明性を確保するための取り組みを強化しました。
社会的マイノリティへの包容的姿勢
フランシスコ教皇は「神の愛はすべての人に開かれている」とし、特に離婚者やLGBTQ+コミュニティに対しても寛容な姿勢を示しています。教皇は、教会がすべての人々に対して開かれた存在であるべきだと強調し、個々の歩みを尊重する必要性を訴えていました。また、フランシスコ教皇は移民や難民の支援にも非常に積極的でした。地中海での難民救助を行うNGO船に対しても支持を表明し、彼らの活動を称賛しています。フランシスコ教皇は、移民が直面する困難や危険についても言及し、国際社会に対して人道的な対応を求めていました。
まとめ~白い煙は誰に上がるのか?
2025年のコンクラーベは、カトリック教会の未来を決める重要な選挙です。フランシスコ教皇の改革を引き継ぐ継続型か、新たな方向性を示す変革型か——枢機卿たちの投票結果は、世界の10億人以上の信徒に直接影響を与えます。
有力候補者のなかでも、外交手腕と穏健な姿勢を持つピエトロ・パロリン枢機卿や、アジアの成長を代表するルイス・アントニオ・タグレ枢機卿が有力視されています。しかし、コンクラーベは常に予想外の結果をもたらす歴史があります。2013年に意外な候補とされたフランシスコ教皇自身の選出も、その典型例です。
システィーナ礼拝堂から上がる白い煙が、誰を指し示すのか。5月上旬のコンクラーベ開始まで、予想と注目がますます高まっていくでしょう。