シャトレーゼは何をやらかした? 不祥事だらけコンプラ違反
- 2025/8/13

山梨発の洋菓子チェーンとして全国に愛されているシャトレーゼ。その看板に大きな傷がついていることをご存知でしょうか? シャトレーゼが次々のやらかしをして不祥事を起こし、コンプライアンス違反を繰り返す背景には、下請法違反、労働問題、価格転嫁問題など、次々と発覚した重大な不祥事があります。シャトレーゼのような一般市民から人気の企業がなぜこんな事態を招いたのか、その全容と中小企業が学ぶべき教訓を深掘りします。
シャトレーゼがやらかしたコンプライアンス
シャトレーゼから下請け企業への受領拒否という重大違反
2025年3月、公正取引委員会が衝撃の勧告を発表しました。シャトレーゼが製造委託した包装資材など(2024年12月時点で約2383万円分)を正当な理由なく受け取っていなかったという下請法違反です。発注した製品の受領を拒否し、代金も支払わないという行為は、中小の下請け業者に壊滅的な打撃を与えます。
下請け業者は消費期限切れの製品を廃棄せざるを得ず、長期保管費用や分割配送のコストまで負担させられていました。これは不当な経済上の利益の提供要請にあたると公取委が指摘。シャトレーゼ側は「未受領分を正確に把握していなかった」と説明しましたが、取引先管理の杜撰さが浮き彫りになりました。
中小企業庁からシャトレーゼが最低評価を受けた支払い問題
2025年8月5日、経済産業省中小企業庁が公表した調査結果でさらに追打がかかります。シャトレーゼは取引代金の支払い条件で最下位の「エ」評価を受けた15社の一角に名を連ねたのです。この調査は価格交渉の公平性や支払サイトの適正さを厳格に評価したもので、手形の現金化費用を受注者負担にさせるなど、下請けいじめとも取れる実態が明らかになりました。
なお、他に支払条件が最低評価だった企業には以下があり、中小企業庁のウェブサイトで公表されています。
テルモ(東京・渋谷区) ・三菱鉛筆(東京・品川区) ・三協立山(富山・高岡市) ・SMC(東京・中央区) ・住友重機械工業(東京・品川区) ・芝浦機械(東京・千代田区) ・牧野フライス製作所(東京・目黒区) ・パナソニックAP空調・冷設機器(群馬・大泉町) ・一建設(東京・練馬区) ・セーレン(東京・港区) ・共和コンクリート工業(北海道・札幌市) ・イワタボルト(東京・品川区) ・新日本建設(千葉・千葉市) ・古河産機システムズ(東京・千代田区)
シャトレーゼがやらかした労働法制を無視したブラック経営の実態
シャトレーゼによる外国人労働者への休業手当未払い
2025年5月、出入国在留管理庁が特定技能外国人への休業手当不払いでシャトレーゼに改善命令を出しました。休業手当は法律で定められた労働者の権利です。グローバル人材に依存しながら基本的な保護を怠った事実は、社会からの信頼を大きく損ないました。
違法残業と書類送検という前代未聞の事態
さらに甲府労働基準監督署は、違法な時間外労働をさせたとしてシャトレーゼを労働基準法違反の疑いで書類送検しました。急拡大する店舗網を支えるために、従業員に過重労働を強いていた構造が浮かび上がります。優しいお菓子のイメージとは裏腹な、ブラック企業体質が露呈した瞬間でした。
やらかしたシャトレーゼの社長謝罪と成長ストップ宣言の重い意味
シャトレーゼ古屋勇治社長のインタビューと創業家のガバナンス能力の疑問符
不祥事が相次いでいるシャトレーゼですが、産経新聞で古屋勇治社長が緊急インタビューに応じた様子が公開されました。そこで語られたのは「急成長でバランスを崩した」という痛切な反省です。「全てのステークホルダーに心配をかけた」と謝罪し、これまでの経営方針を根本から見直すことを明言しました。
なお、株式会社シャトレーゼの社長は古屋氏ですが、株式会社シャトレーゼホールディングスの代表取締役社長は齊藤貴子氏です。斉藤貴子氏は創業者で亡くなった斉藤寛氏の子どもとして事業を急成長させてきた方でもありますが、シャトレーゼホールディングス斉藤貴子社長のインタビュー等は発表されていません。創業家の人物のガバナンス能力についても疑問符がつくところです。
シャトレーゼ出店凍結という苦渋の決断
シャトレーゼ社長の古屋氏の発言で最も衝撃的なのは「成長を止める戦略」の発表です。2023年度まで店舗数を2.2倍に急拡大させたシャトレーゼが、新規出店を事実上凍結すると表明しました。「量が少なくなることもあり得る」と認めつつ、コンプライアンス強化を最優先する姿勢を示したのです。社内では品質保証部に加え労働安全推進部を新設し、弁護士による年2回の点検体制も導入するなど、抜本的な改革に乗り出しています。
シャトレーゼの隠蔽体質と信用失墜・コンプライアンス違反体質
シャトレーゼの情報開示の遅れが招いた隠蔽疑惑
一連の問題で指摘されたのは情報開示の遅さです。下請法違反の問題が内部で認識されながら迅速な対応が取られず、結果的に隠蔽体質と批判される事態を招きました。消費者の「なぜ早く公表しなかったのか」という不信感は、シャトレーゼのブランド価値の低下に直結しています。
SNSでも、シャトレーゼに対して以下のような発言がされています。
「シャトレーゼは、幼少期にお母さんが連れて行ってくれたお店という善のイメージと結びついていたので、外国人労働者への賃金未払い、下請法違反、中小企業への支払い条件が最低評価と続く悪辣ぶりと乖離が激しい」「シャトレーゼは大体こういう話になると出てくるな。改善する気あるのか?」「シャトレーゼはいわゆる下請けいじめ企業なわけだが、従業員は直接のいじめ役をやらされるわけで、ブラック企業確定だろう。」「シャトレーゼ、酷い会社」「経済産業省が発表した、中小企業への支払い対応が最低だと評価された企業の中にシャトレーゼが入っていて、久しぶりにシャトレーゼでアイス買おうかと思っていたけど、買う気が削がれた…」「シャトレーゼ、ケーキは甘くても支払いは渋すぎた。下請け泣かせて作ったスイーツに、誰が笑顔になるんだよ。」「シャトレーゼ従業員の扱いにもあんまいい話し聞かないけど支払いも悪いんだな。」
賞味期限管理と改ざんリスクへの懸念
受領拒否問題では、消費期限切れ製品の廃棄事例が報告されています。ここで消費者が危惧するのは自社商品の賞味期限管理です。シャトレーゼの製造現場のモラルハザードが指摘される中、顧客からは「改ざんの可能性はないのか」という疑問の声も上がり始めています。実際に食品業界では過去に改ざん事件が相次いだ経緯があり、シャトレーゼにも厳しい目が向けられています。
シャトレーゼ事件から中小企業が肝に銘じるべき3つの教訓
下請法遵守は取引の大前提
シャトレーゼの事例が証明したのは、下請法違反が企業生命を脅かすリスクであることです。中小企業と取引する際には、適正な価格転嫁と支払条件の設定が不可欠です。発注元が一方的に優位に立つ構図は、長期的にはサプライチェーン全体を脆弱にします。
労働環境整備はコストではなく投資
違法残業や休業手当未払いは、短期的な人件費削減のように見えて、実は莫大な信用毀損コストを生み出します。シャトレーゼのように、特に外国人労働者への対応では、法令遵守が国際的な評価にも直結します。労働環境整備は人材投資として位置付ける視点が重要です。
急成長ほど基盤強化を
「売上3倍増」という急成長がかえってアキレス腱となった事実は、シャトレーゼだけでなく全ての成長企業への警鐘です。組織の拡大スピードに管理体制が追いつかなくなる成長の罠に陥らないためには、計画的なコンプライアンス体制の構築が不可欠です。シャトレーゼ社長が「少なくとも2年間は基盤強化に注力」と語った背景には、この深い反省があります。
まとめ
シャトレーゼがやらかした一連の不祥事は、下請法違反、労働問題、情報開示の遅れという様々な課題が重なり合った問題です。これらの背景には、急成長による管理システムの破綻とコンプライアンス軽視の経営体質があります。現在シャトレーゼ社は出店凍結で成長ストップを宣言し、改革に取り組んでいますが、信頼回復には長い時間がかかるでしょう。
中小企業経営者が学ぶべきは「取引先との公正な関係構築」と「急成長時の基盤整備」の重要性です。シャトレーゼの事例は、社会的信用がビジネスの根幹であることを痛烈に思い起こさせます。不祥事が発覚した後の謝罪は必要ですが、真の企業価値は不祥事を起こさない予防的な経営にあるのです。