映画「からかい上手の高木さん」がロケーションジャパン大賞地域の変化部門賞を受賞

  • 2025/2/20

2025年2月20日の第15回ロケーションジャパン大賞(主催:ロケーションジャパン編集部)授賞式で、実写映画「からかい上手の高木さん」がロケーションジャパン大賞「地域の変化部門」部門賞を受賞しました。授賞式には今泉力哉監督と香川県土庄町・小豆島町の町長が登壇し、映画ロケが地域に与えたインパクトが高く評価されました。本記事では、映画「からかい上手の高木さん」の魅力と小豆島ロケの舞台裏、撮影後に起こった地域の変化、今泉力哉監督の作風を紐解きながら、映画がもたらした聖地巡礼と地域活性化の相乗効果を探ります。

映画「からかい上手の高木さん」と小豆島ロケの魅力

青春の煌めきを描く物語

実写版映画「からかい上手の高木さん」は、原作漫画の持つ甘酸っぱい青春模様を再現しながら、大人になった主人公たちのその後を描いている映画です。子どものときにも大人になってからも、隣の席の男子・西片をからかうのが得意な高木さんと、いつも返り討ちにあう西片のほのぼのとした日常が、瀬戸内の美しい自然を背景に描かれます。特に小豆島の穏やかな海風が運ぶような淡い恋心の描写は、観る者の郷愁を誘います。

ロケ地が小豆島になった理由

今泉力哉監督が小豆島を映画の舞台に選んだ理由は、もともと原作漫画の作者が小豆島出身で、小豆島自体を舞台にしているからです。しかし実際に映画を見てみると、映画も小豆島ロケになった理由はただそれだけではないのではないかと感じられます。小豆島には、時間の流れがゆるやかで、現代でも懐かしさを感じられる景観があります。オリーブ畑が広がる坂道、潮風に揺れる松並木、昭和の面影を残す商店など、作品の世界観に必要な要素がすべて揃っていました。これらの存在が、小豆島ロケを実施する決め手になったのではないでしょうか。

小豆島はどんな島なのか

小豆島は、数多くの観光地を抱えています。そして、数々の映画のロケ地にもなっています。
小豆島全域にわたる観光スポットの中でも特に注目すべきは、土庄町のエンジェルロード。干潮時に現れる砂州は、恋人たちの定番スポットになっています。オリーブ公園周辺も美しいエリアです。
映画では、かつては二十四の瞳が撮影されたことも有名で、第15回ロケーションジャパン大賞授賞式でも、プレゼンターから「私の世代は小豆島の映画といえば、二十四の瞳ですが、」という言葉から始まりました。他にも、実写版の魔女の宅急便や、八日目の蝉などの作品も有名です。

映画「からかい上手の高木さん」の自然と物語の融合美

映画「からかい上手の高木さん」を見てみると、撮影クルーは小豆島の光を最大限活用していたのではないかと感じます。柔らかな日差しが差し込む教室シーン、夕暮れ時に黄金色に染まる海辺のシーンなど、現地の自然光を活かした撮影技法が作品の詩情を引き立てていました。

映画ロケが引き起こした小豆島の変化

観光客数急増の実態

映画「からかい上手の高木さん」の公開後、調査によると小豆島の訪問者数が、映画公開から4か月で前年比1.5万人増加したとのことです。例えば、高木さんと西片が歩いた道として描かれるロケ地の細い路地裏では、フォトスポットが自然発生し、SNS映えする写真が若者を中心に拡散されたとも聞き及びます。ロケ地を巡礼するためのロケ地マップも登場するなど、新たな観光資源が誕生しています。

聖地巡礼ルートの確立

地元では映画の舞台を今泉力哉監督と一緒に巡るバスツアーも設計。このバスツアーはすぐに完売し、追加席を用意するまでの反響があったそうです。ツアーに申込まずとも、独自にロケ地を聖地巡礼する人たちも多いようです。また小豆島の土庄港と高松港を結ぶフェリーには、アニメ版のからかい上手の高木さんの絵がラッピングされています。このフェリーは映画や原作のファンなら一度は乗ってみたくなるでしょう。

移住希望者の増加傾向

さらに特筆すべきは、聖地巡礼という言葉を飛び越えて、聖地移住が発生しているということです。小豆島はもともと香川県内でもトップクラスの移住者数でしたが、映画からかい上手の高木さんの影響もあり、小豆島の移住者がどんどん増えているそうです。映画を見た若年層からの「あの映画のような穏やかな暮らしを体験したい」というような期待があるのではないでしょうか。
小豆島はそうはいっても人口減が進んでおり、空き家も増加していますが、移住者の増加によって空き家問題の解決にも寄与していると聞き及びます。

地域経済への波及効果

アニメ版の「からかい上手の高木さん」を使用した、小豆島町・土庄町の特産品であるオリーブオイルを使用したオリジナル商品が発売されるなど、地元への経済効果も発生しています。これらは映画だけではない二次経済効果とも言えます。

今泉力哉監督の作風と地域活性化

社会派ラブストーリーの名手

今泉監督は、現実的な社会背景と繊細な人間関係描写を融合させる手法を確立している映画監督です。「知らない、ふたり」や「アイネクライネナハトムジーク」などの恋愛映画の名手でもあり、角田光代原作の「愛がなんだ」も話題になりました。

ロケ地特性の活かし方

監督作品の特徴は、単なる背景としてではなく「場所そのものがキャラクターになる」点にあります。小豆島の場合、潮騒の音やオリーブの香りを感じる景色といった五感に訴える要素を脚本に反映させ、観客が「その場所に行った気分」を体験できるような演出を感じることができます。地元との対話をしっかりとおこなうなど、細部までこだわりを見せました。

受賞における今泉監督のコメント

第15回ロケーションジャパン大賞の地域の変化部門の受賞にて、今泉監督は「朝、たまに漂ってくるごま油の匂い。いつでもおだやかな海。オリーブ畑。そして何よりもそこに暮らす人々の人柄。小豆島が本当に好きになりました。また遊びに行きます。」とコメントしています。
また、土庄町の岡野能之町長は、第15回ロケーションジャパン大賞において「この度の受賞、大変光栄に思っております。今泉監督やスタッフの皆様、エキストラなど多くの関係者のご協力により、作品の世界観と小豆島の美しい風景がとてもうまく調和した作品です。今後もロケを通じた魅力発信に努めてまいります。」とコメント。小豆島町の大江正彦町長は「オール小豆島ロケの本作品が、多くの人に愛され、小豆島の魅力を知るきっかけになれば幸いです。二人の『もてなし上手の町長さん』が皆さまをお待ちしています。」とコメントしています。この二人のもてなし上手の町長さんというのは、もちろん土庄町長と小豆島町長のことです。地域ロケを支えているのは地域の力があってこそですね。

まとめ

映画「からかい上手の高木さん」実写版が小豆島にもたらした影響は、単なる観光促進を超えた文化的価値の創造と言えます。今泉力哉監督の「場所を活かす」力も相まって、小豆島の美しい自然景観と地域コミュニティの力を引き出し、持続可能な地域活性のモデルを提示しました。この作品がロケーションジャパン大賞(主催:ロケーションジャパン編集部)の地域の変化部門賞を受賞したように、今後も映画と地域が共鳴し合う新しい関係性が、全国のロケ地で展開されることが期待されます。小豆島を訪れる際は、ぜひ映画「からかい上手の高木さん」の世界観を感じながら、地域の変化そのものを体感してみてください。

 

ピックアップ記事

  1. 岩手県紫波郡紫波町で公民連携事業開発コンサルティング業務を手がける株式会社オガール。代表の岡崎正信氏…
  2. 社長がしくじった経験から一定の法則を導き出し、それに学ぶことで成功につなげていこう!との趣旨で開催さ…
  3. 「PR」と聞くと、企業がテレビやラジオなどのメディアで流すイメージCMや、商品やイベントなどを情報発…

編集部おすすめ記事

年別アーカイブ

ページ上部へ戻る