地域一体型スポーツビジネスをTOKYO PRO Market上場活用で支援
- 2021/6/11
- ファイナンス
2021年3月「琉球アスティーダスポーツクラブ」がTOKYO PRO Market へ上場を果たしました。国内プロスポーツチームとして初の上場企業となり、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO(ファンディーノ)」で資金調達を行う企業が新規株式公開を行うのもこれが初の事例です。
今回の上場を機に琉球アスティーダは、新スローガン「世界を獲りに行くよ。」を掲げ、夢と感動を与えるスポーツがビジネスとして成り立ち、お金を循環できるモデルを描き、全国の地域企業やスポーツ関連企業を上場支援する新事業を開始します。
今回は、ガバナンス強化を目的とするインフラ整備で琉球アスティーダの上場を支援した株式会社エイトレッドとの共同記者発表会の模様から、琉球アスティーダ代表取締役の早川周作氏よりIPOを目指す企業への支援取り組みについて、エイトレッド代表取締役社長の岡本康広氏からは上場におけるワークフロー整備の重要さについてお届けします。
目次
スポーツビジネスの新しい循環モデルの創出
■琉球アスティーダスポーツクラブについて
早川氏―沖縄県中頭郡中城村という人口2万人の村から上場会社を作るというミッションを果たすべく、琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社(以下、琉球アスティーダ) を2018 年 2 月に設立。2021年3月、プロスポーツチームとして日本初のTOKYO PRO Market(以下、プロマーケット)に上場を果たしました。
琉球アスティーダは世界最高峰のプロ卓球リーグ「Tリーグ」に所属するクラブチーム。沖縄発プロ卓球チーム運営のほか、トライアスロンチームの運営、スポーツバル、卓球教室、卓球物販ECサイトの運営など、総合型地域スポーツクラブとして活動し、さまざまな企業のマーケティング支援に取り組んでいます。
■今回のテーマ「スポーツビジネスの新しい循環モデルの創出~弱い地域、弱い者に光を当てる社会の仕組みを創る」について
早川氏―現在、沖縄の上場企業は8社ですが、より多くの企業が評価を得て上場に向かうことを計画しています。地方の企業がIPO準備に取り組むことによって体力をつけて強くなります。結果、半永続的な企業を作り増やすことに繋がるでしょう。その需要は確実に高まっており、このIPO支援を全国に広げていけたらと考えています。
これまでのプロスポーツは、大手資本の企業PR として、人気スポーツを大都市で展開してきました。財務基盤が安定している一方で、人口の多い大都市圏、かつ人気スポーツでなければ成立しにくいものでした。これからのプロスポーツは、地元資本による持続可能な運営体制を確立し地域に根ざした経営を目指すべきと考えています。そのためには、運営、収益、財務運営・管理を地域で完結できる経営基盤を構築し、マイナースポーツでも十分成立可能なビジネスモデルにしていく必要があります。
地域プロスポーツが持続していくための安定経営基盤は、チームを支えるサポーターやスポンサー、直営店等を利用するユーザー、出資者となる株主によって構成されます。チームが地域住民や地域企業に支えられ、チームの活動が地域の価値向上につながるという循環型のビジネスモデルが理想形。地元企業、地元住民から出資を募り、資本の充実を図るのが望ましいですが、明確なリターン、換金可能性、 価格、情報開示など様々な課題があり、現状での実現は非常に困難です。
■プロスポーツビジネスが地方創生で持続できない原因について
早川氏―プロスポーツビジネスは安定経営ができないというイメージが強いことです。では、どうしたら持続可能で安定した経営基盤を整備することができるか。以下の要素が重要と考えています。
■これから取り組んでいく上場支援の具体的な計画について
早川氏―株式上場のプロセスの中で、準備段階で最も重要になるのが「上場のための課題調査」です。弊社が提供するIPO準備への支援としては、①課題抽出、②経営管理体制整備への助言、③申請書類作成審査対応へのサポートなどです。
なかでも、経営管理体制整備におけるコーポレート・ガバナンスや内部統制は上場審査をクリアできるレベルまでの引き上げが必須です。とはいえ、内部統制に関する知識や経験を備える人材に乏しく、どこから手をつけてどこまでやるべきか、分からないまま上場スケジュールが遅延してしまうケースも多くみられます。
内部統制強化に関する相談には、㈱エイトレッド 、主幹事証券会社、監査法人と連携しながら支援していきます。
琉球アスティーダ上場におけるファースト DXの取組
■株式会社エイトレッドについて
岡本氏―株式会社エイトレッド(以下、エイトレッド)は、東京都渋谷に本社を置くワークフローシステムの開発・販売をメインにクラウドサービス「X point Cloud 」の提供を行う東証一部上場企業です。ワークフローのリーディングカンパニーとしてファーストDXの考えのもと、琉球アスティーダの上場準備をガバナンスを目的としたインフラ整備の面でサポートしてきました。
■エイトレッドが考える企業の「ファーストDX」としてのワークフロー
岡本氏―ワークフローとは?=ワーク(業務)+フロー(流れ)
具体的には、「誰かが申請(起案)して、上長が確認や承認をし、最終決定者が決裁をする」という社内申請手続きの流れのこと。企業の意思決定を支える重要な業務です。
企業の「ファーストDX」としてのワークフロー
■ワークフローがファーストDXである理由
企業が変革するには、全社でDXに取組むことが重要です。
そもそもDXは推進ガイドラインによると、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、 データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること※」と定義されています。
※DX推進ガイドライン Ver.1.0(経済産業省)より
■DXツールには何があるのか?
DXツールには、財務会計、販売管理、労務管理、勤怠管理、電子契約などがあり、全社員が関係し利用するツールは、コミュニケーションツール、グループウェア、ワークフローなど。なかでも、コミュニケーションと業務システムの両方を実現してバックオフィスを支えるには、ワークフローこそが企業のDXにおいて最初に取り組むべきものだと考えます。
■ワークフローの価値
ワークフローDXでは、意思決定の迅速化、内部統制・監査効率の改善、バックオフィス効率化、コスト・無駄の削減のほか、働き方改革やペーパーレス化など、さまざまな社会課題への対応が期待できます。
ワークフローDXで改善・改革できること
■ワークフローDXについて
生産性向上に伴う働き方改革やリモートワークの浸透、脱はんこ・脱出社、ペーパーレス化などの社会的要因により、企業には改善すべき課題が多様に存在しますが、ワークフローDXにより多くの課題を改善・改革することができます。具体的には以下の通りです。
琉球アスティーダが株式上場に向けて取り組んだ課題とワークフローDX
■琉球アスティーダとのワークフローDXの取り組みについて
バックオフィス業務量の急激な増加で、監査法人から以下の指摘がありました。
第一に、人員不足による業務ミスや手戻り修正が多発し業務信頼性に課題があること。第二に、業務フローのバラつきや運用の正確さと統一性がなく業務手順が定型化されていないこと。第三に、売上などの報告が遅く経営と現場との数値が乖離し、予実管理の精度が低いことです。
琉球アスティーダはこれらの課題をワークフローシステム「X-point Cloud」を導入し解決することができました。業務プロセスをデジタル化しミスの低減とスピードを向上させ業務の効率化を図り、社内規定及び業務フローの策定では、業務フローを標準化し正確な業務運用を実現。さらに、決裁プロセスをデジタル化してリアルタイムでの数字の把握と予実管理の精度向上を図りました。
内部統制は何をどう進めるべきか?
■内部統制への包括的支援
内部統制の基本要素は大きく6つに分けられ、やるべきことが明確になります。
- 経営者の意向、方針・戦略など基本要素の基礎をなす基盤→意識を高める
- リスクの識別、分析及び評価と適切な対応→リスクを見極める
- 指示・命令の適切な実行のため権限・職責の付与、規定整備→ルールを決める
- 必要な情報の適時かつ適切な情報伝達→適切に業務を実施する
- 内部統制が有効に機能していることをモニタリング→継続的に評価する
- 目標達成のため適切なIT 方針及び手続の決定→ITで業務を支える
これら実現のためにワークフローが果たす役割とは、規程に準拠した業務運用です。決められた職務権限・社内規程通りにワークフローで承認ルートを設定することにより、規程に準拠した業務運用・情報伝達を行うことができます。また、稟議書などをワークフローで証憑書類の管理、承認履歴の証跡を残しておくことにより、監査時にスムーズに書類提出を行うことができる、モニタリングと監査対応を可能にします。
上場準備には内部統制が必要不可欠ですが、その詳細はいくつもの要素が絡み合っています。ワークフローDXにより内部統制でやるべきことを包括的に支援することが可能です。また、今回の琉球アスティーダ株式上場への支援では、パートナー企業として連携体制をとりながら全国の地域企業やスポーツ関連企業へのワークフローによる“内部統制 × DX”を支援し広めていきたいと考えています。