「社長の右腕」には注意が必要?『三国志』が教える分業の重要性

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答えは『三国志』にあり

では、どうやって「社長の右腕」に依存せず、うまく会社を安定させていけばよいのでしょう。
ここで参考として挙げたいのが『三国志』です。
Amazonに『三国志Three Kingdoms』という、97話のドラマがあります。
もちろんエンタメとしても面白いのですけれども、3つの国それぞれの指導者のスタイルやリーダーシップの取り方が違うので、ビジネスにも役に立つ面があるのです。

『三国志』とは、しょくという3つの国の争いが物語の中心になっています。
登場人物として一番有名なのは、人徳者のリーダーとして知られている蜀の王様、劉備玄徳りゅうびげんとくです。
ほか、魏の曹操そうそう、呉の孫権そんけんという王様が登場しますが、今回は比較的知名度が低い孫権の話を取り上げます。

若くして突然No.1を承継

呉という国は、もともと孫権のお父さんである孫堅そんけんがつくった国ですが、孫堅が戦死し、長兄の孫策そんさくが王位を継ぎます。
しかし、間もなく亡くなってしまい、結局、弟の孫権がまだ20代前半という若さで王位につきました。
これを聞いただけで「結構大変な状況だな」と感じる経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
若くしてたまたま国を継ぐことになってしまったことは、現代の2代目、3代目社長が思いもよらず会社を継いだケースと重なると思います。

優秀な右腕の存在

孫権が呉という国をマネジメントしていくに当たって、右腕となる存在がいました。
それが周瑜しゅうゆという有名な軍師です。
著名な武将、諸葛亮しょかつりょうとのライバル関係は結構有名ですが、周瑜は、孫権が王位につく以前から呉に支えている軍師で、かなりの影響力を持っていました。
要するに、孫権を社長、周瑜を「社長の右腕」にたとえることができるわけです。

右腕が組織を主導する

ドラマのなかでは、いろいろな衝突が生まれます。
その1つが孫権と周瑜の主導権争いで、周瑜は孫権の指示を仰ぐことなく軍を動かしてしまったりするわけです。
周瑜という人物は軍部を掌握していて、将軍たちは孫権の言うことよりも周瑜の言うことを聞くようになっていました。

これが先ほど右腕の危険性の1つ「右腕の放任」です。
「社長の右腕」にすべて任せてしまったことによって、「社長の右腕」が組織を掌握し自分の思いどおりに動かしていくという事態が起こっているのです。
自分が王様であるにもかかわらず、影響力では周瑜に負けていて、国を思い通りに動かせないことで、孫権は非常に悩みます。
このように「社長の右腕」の罠にはまっているのが呉という国だったのですが、同じような悩みを抱えている現代の社長が結構いるのではないでしょうか。

組織変革で危機を乗り切ろう!

その後、どうやって孫権は呉を治めていったのか、ここに皆さんにも役に立つヒントが隠されています。
孫権は統治の構造をつくり直していったのです。
つまり、周瑜が「社長の右腕」として1人ですべてを握っている状態ではうまくいかないことがわかってきて、組織の構造を変えていくのです。

図表出典:幻冬舎ゴールドオンライン『三国志』に学ぶ…「社長の右腕」には要注意といえるワケ

分業により独占を防ぐ

周瑜は軍を掌握するポジションに就けたままですが、新たに2人の重臣を自分の味方として直下に置き、右腕を3人で分業させたわけです。
そのうちの1人が、父親の代から呉に仕えていた張尚ちょうしょうという人です。
この人は武将というよりも、どちらかというと管理業務、会社で言うと総務のような職務を担っていて、この人を内政のトップに据えることにします。

こうして、周瑜と張尚というツートップ体制することによって、周瑜が全てを思いのままにすることができなくなりました。
さらにもう1人、軍事のことも内政のこともある程度分かっている魯粛ろしゅくという人物を社長の補佐役のようなポジションに就かせ、スリートップ体制に。
その結果、孫権はようやく王としての威厳や影響力を持つことができるようになって、呉という国もまとまり始めました。

経営者が自ら仕組みを作る

この『三国志』のエピソードから得られる教訓としては、「社長の右腕」に全てを掌握させるような組織づくりは絶対にやってはいけないということです。
できれば3人、少なくとも2人を自分の下に置き、そのうえでもう1人、他の2人にはない能力を備えた人を入れるというのが、安定した経営を目指すには非常に大事になるのです。
多くの経営者は「社長の右腕」を育てようとして、自分と気が合う人や能力の高い人、自分の言うことを聞いてくれそうな人を探しがちですが、それではコントロールできなくなる可能性が高まります。
もちろん人を見極めることは大事ですが、経営者が自分で会社をコントロールしたければ、その仕組みを自分でつくり上げなくてはいけません。

変革を恐れない組織づくりに挑戦

社長の右腕はいたほうが楽ではありますが、危険もあります。
最たる危険は、経営が右腕に依存し、彼の存在無くしては会社が回らなくなってしまうこと。
そうならないために、右腕に依存にしない組織と仕組みを作るべきです。

「社長の右腕」に依存してしまうことなく、経営者が自分でコントロールできる安定した構造をつくり、そこに人を当てはめていくという発想で、「社長の右腕」が存在する経営の仕組みをつくっていくことを目指しましょう。

出典:幻冬舎ゴールドオンライン『三国志』に学ぶ…「社長の右腕」には要注意といえるワケ
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

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清水直樹
一般財団法人日本アントレプレナー学会 代表理事
仕組み経営株式会社 取締役 

投稿者プロフィール
大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。
海外の経営ノウハウをリサーチし続け、世界No.1(米INC誌による)の起業・経営の権威、マイケルE.ガーバーと出会い、同氏の講座「ドリーミングルーム」を日本で初開催し、10年以上にわたり学びを受け続ける。また、同氏の認定ファシリテーターを世界最多の20人以上輩出(現在、認定制度とドリーミングルームは終了)。
現在は、日本企業をワールドクラスカンパニー®にするための支援活動に力を注いでいる。

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