M&Aは実行してからがスタート、重要なのはPMI(統合後)実務
- 2021/5/19
- インタビュー

M&Aのゴールは契約実行日と思われていますが、実はそこがスタート日です。実行後の統合業務はPMI※と言われ、M&Aが普及するにつれて最重要ポイントと認識されつつあります。買手のM&A担当者として、ある日突然M&Aに関与し、老舗企業の代表取締役会長として事業拡大に邁進している株式会社月刊総務 代表取締役会長の 阿保 晴 彦さんにその経緯と成功の秘訣をお聞きしました。
※Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略。M&A成立後に統合効果を最大化するためのプロセスで、経営面、業務面、意識面で行っていく。
目次
創業58年の総務部門専門誌『月刊総務』
Z-EN――御社が発行する『月刊総務』は間もなく720号を突破する老舗の総務専門誌だと伺いました。
阿保晴彦氏(以下、阿保氏)――はい。弊社は1963年創業で58年の歴史を持ちます。
日本で唯一の総務・人事部門専門誌『月刊総務』の発行を行っています。

Z-EN撮影 株式会社月刊総務 代表取締役会長の 阿保 晴 彦 氏
――58年の歴史を持つ総務部門専門誌ですか!経済・社会の激変の中、総務の在り方や価値の変化も相当なものでしょうね。
阿保氏――そうですね。
コロナを契機に働き方の変化だけでなく、管理部門のIT化、効率化やDX化、それに伴う規程作成など、期待される役割はどんどん大きくなっています。
変化に対応するために、社内外の人脈を使って最新情報を収集し発信し続ける。
総務部門の対応力が、従業員のモチベーションを変え、企業の労働生産性をも左右するようになっていますね。
創業者の想いを繋ぐために
――月刊総務は、2018年に㈱一貫堂さんに事業承継されていますね。阿保さんは買収後に着いたプロ経営者と伺っています。
阿保氏――はい。月刊総務は2018年に(株)一貫堂グループに事業譲渡され、今はグループ会社になっています。
私は、高校卒業後に岐阜県の製版会社に勤めました。
入社まもなく、製版業という業態がなくなりかけており、グループ合同での新規事業に参画し、新規事業の立ち上げや業態転換を行いました。
事業が軌道に乗った頃に新しいステージでのチャレンジをしたいと思い転職をしたのですが、その時の転職先が今の一貫堂です。
その後東京で一貫堂の仕事をしながら、週末は岐阜で過ごすというデュアルライフを15年間続けています。
一貫堂代表の長屋はビジョナリストで先進的な考えを持っているので、現場と意見が乖離することもたびたびあります。
私は長屋の言っていることをまずは受け入れ、解釈して0→1に具体的に組み立てていくというフォロワーシップ(リーダーシップではない)を実行しているうちに、その考え方が自分の中にストンと落ちて自然に受け入れられるようになりました。
今はスポークスマンとして管理業務をすべてやる立場です。
長屋イズムの継承をすることが会社の存続につながる。
そして、理念だけでなく、今会社が一年毎にスクラップ&ビルドをやっているその社風を存続させることもできるでしょう。
この先、私が承継しても10年でやめると言っています。
創業者ではない者が、創業者の想いをどこまで繋いでいけるのか?
もしかすると、どこかで私物化が起きるかもしれない。
事業承継のサイクルを5~10年と短くしていけば、私物化を避け社会的意義のある会社としてバトンを繋いでいくことができるだろうと思っています。
創造と戦略による企業内の橋渡し役
――もはや経営戦略を考える立場になってきているということですか?
阿保氏――はい。月刊総務では、2018年頃より「戦略総務」と言う言葉を使用しています。
企業の目的や目標を達成するために会社の仕組みなどを改善していくことに、総務の在り方を置いています。
環境の変化や従業員のニーズを吸い上げ、創造性と戦略をもって経営陣に提案し、経営と従業員を繋いでいく立場になる総務には、今大変注目が集まっています。
――御社では総務部門にどのような情報を発信しているのですか?
阿保氏――月刊誌『月刊総務』のみならずオンラインメディア、セミナー、サロンを通じて、総務業務の考え方、最新情報、有用なサービスを紹介しています。
また、総務顧問サービスやコンサルティングによる総務業務相談、プロジェクトサポートも行っています。
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