日本酒を世界酒に!トレンドで終わらない日本酒と酒蔵の在り方を創る(前編)
- 2021/6/16
- インタビュー
目次
存続の危機に直面する各地の酒蔵
――日本酒の酒蔵はいま日本に何軒あるのですか?
畔柳氏――残念なことに日本酒の酒蔵は年々減り続けています。
2000年には2,000蔵近くありましたが、今実際稼働している酒蔵さんは1,200~1,300蔵程度だと言われています。
廃業までには至っていないけれど、操業は休止していて免許だけもっている酒蔵さんも多いですね。
このコロナ禍でますます減少するとの予測もあります。
ちなみに日本酒の製造に必要な清酒製造免許は新規発行されていません。
つまり新規参入できないということですから、今後数も増えないのです。
だからこそ、酒蔵経営に興味のある方には、M&Aしかない!という状況が続いています。
継ぐことでマイナススタートになることも
――コロナ禍で飲酒の機会も減っていますから、財務状況は厳しいでしょうね。
畔柳氏――酒蔵の製造規模を示すものとして石数があります。
「一石=一升瓶100本分」として、地酒蔵の多くは300石~2,000石くらいを製造されています。
ざっくりですが500石以上あるところでないと、家族経営から脱却して利益を出すのは難しいイメージを持っています。
まだまだ世襲で継承する酒蔵は多いですが、継いでしまうと、借金も引継ぎマイナスからのスタート。
そのため、若い後継者にとって酒蔵を引き継いだときのデメリットは、やはりこの負の承継が大きな負担になることでしょうね。
しかし、メリットもあります。
酒蔵は地域の中心となっている場合が多いので、地域に広いネットワークを持ち、歴史的バックグラウンド、昔ながらのブランドがある。
このブランド力こそ地域で唯一無二の無形の財産であり、それを引き継ぐことができるわけです。
それでも苦戦しているのは、需要が減って昔のように回らず解決策も見い出せないからなんですね。
新たなチャネルを切り拓く若手後継者たち
――以前、弊社でも酒蔵M&Aの相談がありまして、その会社は24歳の新しい経営者を招聘した後、数年で財務改善したという話を聞きました。酒蔵の財務体質はどうやって改善していくものなのですか?
畔柳氏――ものづくりの背景からいくと、長い歴史のなかで培った技と、バイオ等の技術革新も進み、下手なものは造らないでしょう。
問題は、これだけ需要が減っている中で従来と同じ流通にのせるままでは販売量は減る一方だということです。
各酒蔵がどれだけ新しいチャネルを切り拓けるかで、その後の財務状況が大きく変わってくるでしょうね。
経営的センスももちろん必要ですが、より需要の高いチャネル開拓によって、財務面も改善します。
また、世代交代した若い経営者は最新技術導入による機械化にも意欲的で、効率が上がるうえ、結果的に品質、味もよくなっています。
東京農業大学OBの蔵元杜氏の人脈からの情報交換や、代替わりした新しい世代の今までにない発想で販路開拓し利益を出せるようになった酒蔵さんもあります。
酒蔵への経営改善を支援
――御社は酒蔵への販売手法の紹介、コンサルティングも行っていらっしゃるんですか。
畔柳氏――はい。協業するリボーン社では、酒蔵に販売手法を紹介するだけでなく、コンサルティングとして販路の開拓や、最新技術導入などの設備投資支援、働く方々の内部統制方法の提案など、経営面での改善支援を行っています。
酒蔵は同族経営であることも多いですから、家族のいざこざの相談もされたり(笑)どっぷり入り込んで改革しています。
同族経営にありがちな議決権のない少数株主の存在などもあり、変革は一筋縄ではいきません。
コンサルとして手を差し伸べるだけではなく、自立してもらうことも必要なので、酒蔵の問題に合わせて一つ一つ課題解決に取り組んでいます。
――素晴らしいです!メイン事業である日本酒のプロモーションやブランディングは、どのようなことを行っていらっしゃるのですか。
畔柳氏――日本酒の生産量が減ったことで、今や問屋も疲弊しています。
昔のように酒蔵が酒造りに徹して販売を問屋に頼り、石数を追って量を捌いて利益を生むのが難しい時代です。
かといって、上代をいきなりあげて、利益額を増やすことも難しいですから、直販で利益率を上げようとオンラインショップを開設するところも増えています。
ところがいざネット販売を始めても、集客は一筋縄ではいかない。
弊社が昨年10月にデジタル・メディア「おいしい日本酒」を開設したのは、そんな酒蔵の課題解決がきっかけになっています。
効果的に露出できるサイトを作って、酒蔵のオンラインショップに送客することを目的としています。
銘柄自体は伝統的に受け継いでいるものですが、ラベルデザイン等の刷新で魅せ方を変えたり、クラウンドファンディングを活用して資金を調達しながら新しいことにチャレンジしたり。
普段飲みするお酒とハレの日に飲むお酒というように需要が二極化していく中で価格帯も大きく分断されています。
日本酒にはこの先、需要と供給の関係を見据えたターゲティングやマーケティングを重視することが大切になります。
この続きは後編でお届けします。
※日本地酒協同組合は、お水やお米にこだわった地酒を日本に普及させた日本全国の地酒蔵の組合です。ジザケジャパン社は、組合の加盟蔵が醸す地酒の販売会社としてスタートしました。