「学びたい」を無料サポート、子どもを伸ばす現代版寺子屋(後編)
- 2023/11/16
- インタビュー
学びたい思いを持つ中学生・高校生を無料の塾で学習支援し、実際のカフェ営業などの体験学習を通じてキャリアについて考える機会を作っているNPO法人「テラコヤ」。前編では代表の前田和真さんに、ご自身の教員時代の経験も含めて、教育にかける思いなどを伺いました。後編では、自身が構築したもう一つの教育システムであるオンライン家庭教師や、「カフェ塾テラコヤ」の今後などについてお話くださいます。
目次
地方の生徒に授業する「オンライン家庭教師」
Z-EN――会社では有償の教育事業も展開していらっしゃるそうですが、メイン事業について教えてください。
前田氏――地域による教育の選択肢の格差是正をめざして、オンライン家庭教師「Re:sta(リスタ)」を事業展開しています。
主に高校生をマンツーマンで指導するもので、北海道や石川県など地方の生徒が多く、現在は30人くらいにご利用いただいています。
全国の生徒とつながり、刺激を与え合うことができるオンライン自習室も設けているのも特徴です。
集客はSNS広告で行うほか、ありがたいことに最近は八王子や石川県などの郊外の塾にチラシを置いていただき、問い合わせを繋いでもらいマージンを払う協業体制を組んでくださるところも出てきています。
弊社の強みは、難関校出身の講師が在籍しているところ。
リアルの塾には少ない東京大学などの現役生講師とオンラインといえどマンツーマンで指導してもらえる機会は、特に郊外では評価が高いです。
学習内容は地方では対応できる塾がほとんどない総合型選抜に関することも多いので、今後地方に需要があると思っています。
オンラインだから、講師も時間が自由に
――これから需要が高まりそうですが、どんな方が講師をしていますか。
前田氏――最初は私が教えていた高校の生徒が大学生になってボランティアで参加してくれていました。
その後はSNSなどを通して大学生講師が増え、現在は40人以上になっています。
大学生講師はよい子たちばかりで指導力もありますが、親御さんのご不安も尽きないと思いますので、私自身が必ず週1回生徒と面談をして声を聞くようにしています。
――オンラインですと講師の居住地を問わないですから、良い方が集まりそうですね。
前田氏――そうなんですよ!ジョインしやすいので、最近、北陸地方にある大学の医学部の学生が数人、講師に加わり、各地の生徒に授業をしています。
また、学校という枠を飛び出そうと考えている教員の転職先の選択肢としても機能できればと思っています。
私自身、学校現場にいた時は将来像をうまく描けず、転職先探しも難航した経験があるので、少しでも選択肢を増やせれば。
オンラインという選択肢を得た今は、地方に夜行バスで行って日中は観光をし、夕方はオンラインで子どもたちに勉強を教え、終われば美味しいものを食べて帰るようなこともあります。
いろいろな経験値があってこそ教育を豊かにできるし、そんな先生が増えたら学校教育も面白くなると思っています。
高学歴のお笑い芸人さんも巻き込みたい!
――確かに、働き方の幅を広げたいと思っている先生は多いかもしれませんね!
前田氏――公立や私立の常勤の先生は副業が認められていませんが、非常勤は許されています。
自分の経験では、非常勤の先生の方が常勤の先生より面白い人が多いイメージがありました。
今は、「生き方もキャリアも自由だ」とよく言われますが、目の前の先生がそういった生き方をしていないなら、生徒は「本当に自由なの?」と不安になりますよね。
子どもたちの可能性は、接する大人によって変わると思っています。
今はYouTubeなどでいろいろな大人のロールモデルを見ることができるので、子どもたちは「あれ、身近にいる大人たちと何か違うぞ?」と、何となくそのギャップに気付き始めています。
なので、彼らが求めるロールモデルに出会える場として、カフェや塾を実施しているところもあります。
――オンラインが広げる可能性は大きそうですね。
前田氏――はい、オンラインが可能なエリアがどんどん広がっているので、島嶼部や山間地域に住むお子さんの勉強の機会も広げられたらいいなと思っています。
コロナ禍以降、残念ながら増えている不登校の生徒にも受け入れられています。
今、高学歴のお笑い芸人さんを巻き込んで講師になってもらい、そういった生徒に教えてくれるシステムが作れたらなぁと考えています。
▶コミュニケーションの新たなツールとして広がっているオンラインシステムを家庭教師の現場で活用を広げている前田さん。中学・高校生に限らず、より広い世代に向けた取り組みも進めていることを、この後、お伝えくださいます。