社会インフラを止めない!完全自動復旧のフリーズ対策
- 2024/6/21
- インタビュー
ネットワーク機器のフリーズ(動作停止)を検知して自動で復旧する「NONフリーズ」を自社開発し、設計・製造・販売を手掛けるバリューソリューション株式会社(以下、バリューソリューション)。ポート監視による電子機器のフリーズ対策用機器の特許を取得し、世界初の完全自動化による機器トラブルの回避に貢献されています。メディア等も注目する同社の代表、日野利信氏に、「NONフリーズ」開発にいたる経緯やそのメリット、設置事例などのほか、今後の展望も含めてお話を伺いました。新たな市場開拓を見据え、投資家からの資金調達を構想するバリューソリューションは、社会インフラを支えるこれからの電子機器を無人で保守管理する救世主です。
目次
デジタル機器の避けられない問題「フリーズ」
Z-EN―― 「NONフリーズ」を自社で開発することになった経緯について、バリューソリューション代表の日野利信氏(以下、日野氏)からご説明いただきました。
パイオニア株式会社のデジタルサイネージ事業を事業移管した会社(合同会社クリエイティブワークス)が、北は青森県から南は石垣島まで、全国100ヶ所以上のデジタルサイネージの配信業務を開始し、広範囲に渡って事業展開しており、日野氏は技術顧問として各地のサイネージの管理を行っていました。
そんななか、デジタルサイネージで事件が発生。
岩手県の三陸鉄道の久慈駅に、2011年3月の翌年、2012年に緊急地震速報や津波警報がでるデジタルサイネージを設置しました。
デジタルサイネージは自動で動かしているため、どうしても不具合が発生します。
久慈駅のものも他にもれずフリーズ状態とおぼしき状態になっていることが、川崎の事務所から監視していて判明しました。
緊急速報等を備えたものですので、放っておくことはできない。
そこでまず、先方に電話し、電源プラグを抜いて再投入することをお願いしました。
しかし、・・・三陸鉄道は、第三セクターで、雇用されている方々が年配者ばかり。
電源を抜いて電車が止まったらどうする・・・みたいな話になり、それはないと説明しても怖くてできないと言われ対応してもらえませんでした。
結局、電源を抜いて差すという作業をするため、川崎から片道7時間かけて久慈駅に出向くことになったのです。
深刻な損失の多大さ
電源を切り入れ直すという約10分ほどの作業で、フリーズは解消したが・・・
- 帰ろうと思っても電車がなくて、1泊の出張になってしまった。
- デジタルサイネージの売り上げは、月々1.5万円。この1年分の売上を全てなくした。
- これが石垣島だった場合は、片道7.5万円の交通費になる・・・etc.
フリーズする度に無駄で大きな経費が発生し、どうにかしないと!という危機感を持っていました。
「止まった!」を解決する
当時、不具合があった時に電源切入できるサービスは、あったにはあったんですが、OSがフリーズしていることはつかめても、プログラムがフリーズしていることが分かり、電源制御が行えるサービスや製品はありませんでした。
デジタルサイネージの場合、OSが止まろうが、絵が出ていればOK。
それを確認できるものがなかったので、プログラム監視ができるものが必要だと気付きました。
そこで、ポート監視ができる機能をつけてほしいと競合他社と4ヶ月打ち合わせをしましたが、対応できないということでした。
ならば、自分でつくろう!と、ポート監視機能を有した「NONフリーズ」を製品化し、サイネージに付けていきました。
OSまでしか見られなかったものが、「NONフリーズ」ではプログラムまで監視できるので、既存の顧客にもぜひつけてほしいと要望をいただき非常に好評。
事業として将来性も感じられたため、独立して現在のバリューソリューションを立ち上げたという経緯です。
多岐に渡る導入実績
――監視している機器がフリーズしてしまっても自動的に復旧してくれるのは大変ありがたいですね。「NONフリーズ」の用途が広がり、さまざまな場で活用されているようですが、具体的には主にどういった場面で使われているのでしょうか。
日野氏――デジタル機器が止まると大変なところ、つまり、最も主要なのは社会インフラの部分ですね。
鉄道会社の監視カメラ等
駅構内監視カメラや踏切センサー等に導入されています。
大手鉄道会社の1駅あたりの監視カメラは、最大数百台。
「NONフリーズ」でフリーズのほぼすべてを自動復旧できることにより、業務効率化と保守費用の低減に貢献しています。
高速道路の非常電話等
高速道路の監視カメラやセンサーなどに「NONフリーズ」を設置していますが、弊社で数多く導入している例の1つが高速道路の非常電話です。
法律では1㎞ごとに非常電話を置くことが義務づけられていますので、その整備・保守に非常に多くのコストがかかって負担が大きい。
ネットワーク対応新型非常電話では、「NONフリーズ」による自動でのフリーズ対処を実行し、それで復旧しないものに関してのみ機器故障を想定し現地訪問を実施するという対応が可能です。
太陽光発電所の稼働状況監視
太陽光発電所は無人施設であり、設置場所が地方の僻地となるので保守・管理する会社が遠方から駆け付けなければならず、その経費を抑え安定した効果を得るという意味でも「NONフリーズ」を導入するメリットが大きいと思います。
また、ニュースでも報じられているように、太陽光発電所の銅線泥棒による被害が大きく、監視カメラが切れる時にアテンションを出すことによって被害を抑えられる効果も大きいでしょうね。
このほか、ホテルや旅館等大型施設のWifiアクセス、デジタルサイネージの自動復旧、賃貸マンションのインターネット設備、RFID(ID情報が書き込まれた専用タグによる通信技術)を利用した地域見守りシステムへの導入など、社会インフラとして人々の安全を守る多様な機器に導入されています。
人が駆け付けなければならない管理・メンテナンス業務において、「NONフリーズ」が最小限の費用に喰い留めるという役割を担っています。
避けられない機器停止を回避する「NONフリーズ」
――デジタル機器の動作停止が監視され自動で復旧されることの社会的意義は、非常に大きいですね。「NONフリーズ」の概要について、簡単にご説明いただけますか。
日野氏――「NONフリーズ」の主な特徴として、以下を挙げられます。
- 日本初のポート監視可能なハードウェア機器であり、特許取得済みであること
- フリーズを感知すると、人手を介さずに自動的に再起動し復旧を行うこと
- コマンド(Telnet/HTTP)による制御やWOLの発行にも対応
- 電源のON/OFFをスケジュールできること
- 監視用ソフトウェアのインストールが不要なため、IPカメラやルーター等組込機器の監視も可能
今までにない監視方法
ネットワーク機器が停止する原因の90%は、OS・アプリケーションのフリーズです。
その解消にはほとんどの場合、機器の電源プラグを抜き差しして再起動するしかありません。
それを自動化し、遠方にいても監視することを可能にするのが「NONフリーズ」です。
監視を行うことで、安価なルーターから企業が採用しているサーバーまで、IP通信できるほぼ全ての機器のフリーズを検知することができます。
「NONフリーズ」の台数が多く一括管理を行いたい場合には、クラウド上での一元管理も可能。
PCやスマートフォン等で、どこからでも状態を監視することができ、クラウド上から電源操作を行うことも可能です。
グローバル展開を加速する
――将来小型化が進むと家庭用の電化製品などにも設置されるようになると思いますが、汎用製品の実用化はもう少し先でしょうか。
日野氏――現在、徐々に小型化していて、Wifiルーターのフリーズの解消なども視野に入れています。
これもデジタルサイネージと同様、電源の入れ直しで解消するものではあるのですが、一般の知識のない方はそれだけでサポートデスクに電話したり、業者を呼んだりすることもあります。
ビジョンとしては、チップ化して家庭の電化製品に入っているような世界観を目指します。
現状はBtoBですが、将来的にはIoTのスマート機器などに設置し、BtoCの市場でも成果を出していきたいですね。
――経費削減だけでなく、無人化・自動化の新たな事業展開を考えるきっかけになったり、リソースの再分配が可能になったりと、可能性の幅が広がりますね。次のステップとして、日本だけでなく海外の市場も視野に入れていらっしゃると思いますが、具体的に考えていらっしゃいますか?
日野氏――最終的にはアメリカやヨーロッパを中心に参入を考えていきたいです。
ただ、やはり時差が少ない東南アジアやインドなど、アジア圏への参入が海外進出への足掛かりになるとは思います。
現在、東南アジアにある日本企業からの問い合わせが多く、東南アジアでのプレセールをしているところです。
日本に比べて電源事情やインフラ事情が劣悪なことに加え、距離的なハードルが高くて現場に駆け付けることが容易ではないので、需要が高まっているのです。
シンガポールを拠点に、東南アジア市場への展開を進めています。
――現在は国内の代理店を通して販売するのがメインとお聞きしていますが、どのくらいの数の代理店を使っていらっしゃいますか。
日野氏――主に商社7社をメインに代理店契約しています。
Webなどで直接問い合わせいただくこともありますが、その際も代理店を通して販売するようにしています。
――今回の資金調達は、どういった事業に使われる目的なのでしょうか。
日野氏――調達の目標は3億円です。
使用用途としては、まず、外部に出している設計や開発費用をなんとか内製化したいので、そこに充当したいですね。
その延長に、現状製品の強化、海外展開を見据えています。
技術者を含め、従業員の採用も今後の拡充の要素です。
投資家から見たイグジットをIPOと考え、2028年度を目標に準備しているところです。
――「NONフリーズ」の用途が拡充し経費削減の実績が上がっているなかで、将来的な展望をどのように想定されているのかをお聞かせいただけますか。
日野氏――現在「NONフリーズ」は約7,000台設置されており、7,000カ所の保守管理に要する費用を削減することに貢献できていると思います。
実績としては、不具合が起こったときの80%以上を経費削減できている(当社調べ)ので、本来1,000人必要だったものが200人で稼働可能になるということです。
今後の新規開拓市場としては、地震計や風速計、雨量計など、センサー系の市場に着目したいと考えています。
これらも含め、皆さんの暮らしの安心安全につながっているものですので、突然止まってしまうという不測の事態はできるだけ回避したい。
無駄なコストを抑え、個人の時間も無駄に消費しないよう、コインパーキングやコインランドリーなど、無人店舗の自動精算機等のトラブルについても、保守の担当がいちいち駆けつけなくても自動でリセットさせることで解決することがほとんどだと思います。
私たちのビジョンは、情報インフラの安定稼働を通じて、豊かな社会生活に貢献することです。
死活監視電源制御機器のシェアトップを目指し、ストレスフリーの監視機器の提供や、人的保守の負担軽減と人的リソースの有効活用のお手伝いができます。
社会インフラを止めず、その先にある一人ひとりの安心安全を守るのが、私たちバリューソシューションの使命です。
――さまざまな国の情報インフラを担う今後の展開もとても楽しみです。ありがとうございました。
※画像・資料等は、バリューソシューション様にご提供いただきました。