サービス業を“憧れの仕事”に!旅館支配人から起業へ──宿泊業を変革する挑戦
- 2025/8/20
- インタビュー
目次
藤原和博氏からの学び
――働き方改革のヒントはどこから?
向谷氏――藤原和博さんのオンラインサロンです。
藤原さんは、元リクルート営業統括部長で初代フェロー、教育改革実践家としても知られています。
動画の視聴をきっかけにファンになりサロンに入りました。
特に響いたのは「100万分の1の人材になれ」という言葉です。
とてもハードルが高く聞こえる言葉ですが、3つの分野で100分の1になればそれを掛け合わせることで100万分の1になれるということです。
例えば、営業、料理、犬のトリミングという3つの異分野でそれぞれ1万時間の経験をして100人に1人の人材になることができれば、唯一無二の「食事中にワンちゃんをトリミングをしてもらえる営業力が高いレストラン」という、おそらく国内に数件しかない存在になれる。
あともう1つは、成功の秘訣は何かという問いに対し、「行動の数」と答えられたことですね。
トライアンドエラーをどれだけやれるか、繰り返して精度を上げる、これしかないでしょう、と。
会社員の枠を超えて、副業でもいいから早く挑戦を始めるべきだと教わりました。
3室の宿に込めた戦略
――なぜ3室に絞ったのですか?
向谷氏――旅館業は繁閑差が激しく、10室を超えると繁忙期は人手不足、閑散期は人余りになります。
3〜5室規模なら通年安定稼働が可能で、少人数で運営できます。
スタッフが疲弊せず、待遇改善もしやすい。
このモデルをもとに、業界全体の働き方改革にも取り組みたいと考えています。
発信で変える業界の構造
――出版や講演の構想もあるそうですね。
向谷氏――著書の仮タイトルは『サービス業が嘘くさい』です。
採用基準がなく、やる気のある新人とそうでない人が同列評価される現状を変えるため、チップ制度や明確なキャリアパスの導入を提言します。
人気職種になれば選考基準が生まれ、搾取企業は淘汰されるはずです。
河口湖での新展開
――新たなプロジェクトについても教えてください。
向谷氏――2025年秋に開業を予定している、藤原さんプロデュースのゲストハウスを運営するために、現在伊豆と河口湖を行き来しています。
今後は運営に集中するために河口湖畔の古民家に移住する予定ですが、素晴らしい空間なので、インバウンド向けの古民家民泊にして体験型寿司店を併設させようと考えています。
日本文化と食体験を組み合わせ、海外からのお客様にも楽しんでいただきたいですね。

「水鞠」エントランスで
未来へ希望を込めたメッセージ
――10年後の自分に声をかけられるとしたら、どんな言葉を贈りますか?
向谷氏――「旅館の直営は学びの場として活かしつつ、宿泊・飲食業の経営改善を支援しながら、気楽に焼き鳥屋をやっている自分がいますか?」
夜遅くまで働くサービス業の人たちが、気兼ねなく立ち寄れてホッとできる――そんな“まずい焼き鳥屋”を目指しています。
――最後に、Z-EN読者へのメッセージをお願いします。
向谷氏――日本は今後インバウンドに頼らざるを得ません。
サービス業で良い仕事をした人をぜひ褒め、チップなどで応援してほしい。
皆さんの行動が業界の未来を変えます!
向谷太陽さんの挑戦は、待遇改善にとどまらず、業界価値そのものを引き上げる試みです。「サービス業を人気職種に」──その一歩を、小さな宿「水鞠」から踏み出した向谷さんにこれからも注目していきたいと思います。