土地選定から販売まで、一気通貫で挑む住宅プロデューサーの価値創造と資産設計
- 2026/4/11
- インタビュー

住宅の価値は「建てた瞬間」ではなく、その後の時間の中でこそ問われる――。諸戸の家株式会社常務取締役でシニアプロデューサーとして企画から販売までを一貫して担う一級建築士の吉川政弘氏。分業が主流の住宅業界において、あえて一気通貫の体制を貫く理由とは何か。暮らしの質と資産価値の両立、そして再販性を見据えた設計思想について、吉川氏に伺いました。
目次
用地取得から販売・アフターまで一貫してプロデュース
Z-EN――唯一無二の高級分譲住宅を販売する諸戸の家株式会社の常務取締役で、シニアプロデューサーを務める吉川さんは、300棟以上の建物を手がけられてきた一級建築士でいらっしゃいますが、現在の吉川さんの業務について伺いたいと思います。一般的な住宅営業や設計職との違いも含めて教えていただけますか。
吉川政弘氏(以下、吉川氏)――一般的な建売住宅会社は、土地の仕入れ、設計、工事、販売、アフターと役割が分かれています。
一方で僕たちは、数多くの候補の中から資産価値の高い土地を厳選し購入、設計士と共同で間取りや素材、コンセプト設計を行い、施工の進め方やコストにも関与しながら最終的には自分自身で販売しアフターフォローまでを一貫して行います。
このように、一気通貫でプロジェクト全てに関わるのがプロデューサーです。
――プロデューサーが一気通貫で担当する体制だからこそ実現できている価値や、お客様にとってのメリットはどのような点にあるとお考えでしょうか。
吉川氏――一般の建売住宅会社の分業体制では、売れなかった場合に責任の所在が曖昧になりがちですが、僕たちは全工程を一人で担うため、責任の持ち方が大きく異なります。
その分、お客様の暮らしを具体的に想像しながら、土地選びから設計、施工、販売まで一貫して関わることで、暮らしの質と資産価値の両方を高める住宅を提供することが可能です。
――御社の「30年後も価値が変わらない家づくり」というポリシーが印象的でした。吉川さんが提供されるどのような価値が成果や売上につながっているとお考えでしょうか。
吉川氏――私たちのビジョンは「心豊かで最良な人生を提供すること」です。
そのために、お客様の暮らしを具体的に想像し、日々の生活の中で感じるストレスをできるだけなくすとともに、ここに住まわれるお客様がいかに毎日を心豊かに過ごすことができるかを重視し、週末は友人知人を集めてパーティなども行えるような設計を行っています。
動線や空間の使い方、素材の選定など、細かな部分まで意図を持って決めています。

フランク ミュラー監修のもと誕生した邸宅。
“ビザン数字”の意匠が象徴的。
住宅というのは資産なんですよね。
かつて20年〜30年で建て替えられていたのが、現在は長期的に住み継がれていくものへと変わっています。
一人の居住期間は30年程度なので、その後所有者が変わるとき、個性が強すぎる住宅は受け継がれにくいという課題が生じます。
だからこそ僕たちは、個性を過度に強めることなく、住まいとしての王道を守りながら多くの人に受け入れられる設計にすることで自然と再販性が高まる家づくりを目指してやっています。
そのうえで、コラボレーションなどを通じて住宅ごとにテーマ性や特徴を持たせ、受け入れられる範囲での個性を付加する。
その結果、市場における希少性が生まれ、資産価値が自然と高くなる家づくりとなるのです。
役割分断型モデルでは実現しにくい価値創出の仕組み
――吉川さんが日々の意思決定で大切にされている判断基準や強みとはどのようなものでしょうか。
吉川氏――僕は現場監督出身であるため、現場に対する理解が深いことが強みです。
施工の納まりや構造を理解した上で現場監督と具体的な議論ができますし、コストについても、どこが高くどこが適正か、代替案があるかといった判断ができます。
設計だけでなく工事の視点を踏まえたプロデュースができる点は特徴だと考えています。
――これまでのご経験の中で、現在の仕事観につながっている原体験があれば教えてください。
吉川氏――もともとは別の業界から建築業界に入り、マンションやビル、工場などさまざまな建築に関わる中で住宅が一番面白いと感じ、この領域に進みました。
ただ、注文住宅ではお客様が決めた図面通りに作るため提案が反映されにくく、従来の建売住宅でもコスト重視で作り手の意見が入る余地はありませんでした。
その結果、自分たちが良いと思うものが反映されないというか、議論もされないことにフラストレーションを感じていました。
そんな中で、こだわりを持った建売住宅をつくる諸戸の家の考えに共感して入社し、現場管理を経てプロデューサーとして一気通貫で携わるようになりました。
お客様から「この家を選んでよかった」と言っていただける瞬間が、この仕事に携わることができて一番幸せな瞬間です。
将来の流通まで見据えた設計基準とデザインの考え方

代々木上原の邸宅。
諸戸の家「SUPER LUXURYブランド」の象徴的な存在。
――これまで手掛けられた物件の中で、特に印象に残っているプロジェクトについてお話いただけますか。
吉川氏――1年前に手がけた代々木上原の邸宅です。
高額かつ条件の難しい土地でしたが、建て替えによって価値を引き出せると判断して購入しました。
購入することを決めた瞬間、いままでで最高価格の物件になることは決まっていましたので、中途半端なものを作ることができないというプレッシャーが強く、京都まで建物アイデアを探しに行き、そこで現代の5人の天才たちというコンセプトにたどり着きご協力いただけたことですばらしい邸宅が完成しました。
完成するまでは確信が持てませんでしたが、全体が見えた瞬間にこれまでにない感動があり、その後無事に販売できたことで心底ほっとしました。
現場視点とチーム意思決定が支える高付加価値住宅開発
――プロジェクトを進行する際の意思決定で難しかった点について教えてください。
吉川氏――再販性を高める設計と、個性を出しながらも出しすぎない、そのバランスを取ることが難しい点です。
プロデューサーが一人で意思決定をするとどうしても個性が強く出てしまうため、社内でプロジェクトチームを組み、各工程ごとに共有と議論を重ねながら方向性を調整しています。

大森レイ氏作『DORAGON』。
代々木上原邸宅の玄関扉を開けると正面に飾られている。
――再販性を意識する考えはどんな点を重視して培われていますか。
吉川氏――「老舗はいつも新しい」という弊社代表の考えのもと、常に新しいことに取り組む姿勢を大切にしています。
うまくいったものを繰り返すのではなく、新たなものを積み重ねることで住宅は自然に変化していきます。
世代を超えて資産価値が維持される住宅を提供することで、長期的に豊かな暮らしと資産形成の両方に貢献していきたいと考えています。
――今後どのような価値を提供していきたいとお考えでしょうか。
吉川氏――現在は、アメリカでの事業展開に取り組んでいます。
現地の文化に適応した住宅を開発し、その中で得た知見を日本に還元することも今後は考えていきたいですね。
将来的には、建売住宅の領域において世界的なラグジュアリーハウスメーカーとなることを目指し、日本発で住宅の価値向上に貢献していきたいと考えています。
――日本発ラグジュアリーハウスメーカーとしての諸戸の家と吉川さんが、芸術作品ともいえる住宅を世界に発信していく未来が楽しみです。ありがとうございました。














