研究者から“植物のお医者さん”へ——現場起点で切り拓く植物ケアビジネスの可能性

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合同会社Green Design代表の滝口肇氏は、国立研究所で植物研究に従事したキャリアを持ちながら、現場に課題を見出し“植物のお医者さん”としての道を選んだ異色の起業家です。研究と実務のギャップ、そして植物に関する情報の不透明さに疑問を抱き、顧客の声を直接聞く現場へと軸足を移しました。現在は訪問診療やレンタル、フランチャイズ展開を通じて、植物の維持管理における新たな価値を創出。植物ケアの社会インフラ化を見据えた事業戦略と、その根底にある理念をお話いただきました。

研究者から現場へ—植物を枯らす人をゼロに!

Z-EN――滝口さんは、国立研究所で研究をされていた植物学者でいらっしゃいますね。現在は、樹医さん、“植物のお医者さん”として活躍されていますが、植物に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか。

滝口肇氏(以下、滝口氏)――子どもの頃に食虫植物を知って面白いと思い、いくつか育てていましたが、当時は動物の方が好きで、植物にはあまり魅力を感じていませんでした。

大学では微生物の研究をして、就職を機に植物学に携わることになり、研究を進めるうちに植物の成長や生態に面白さを感じるようになりました。
自宅でも、ガジュマルやパキラ、ウンベラータなどの観葉植物を窓際で育ててみると、成長する姿が可愛らしく、面白いと感じるようになって、「植物」への興味が湧いていったという感じです。

その一方、植物を育てる中で、情報が錯綜していることや、研究で得られた知見が一般には伝わっていないことに疑問を持ち、多くの人が原因も分からず植物を枯らしてしまう現状に違和感を覚え、研究者を辞めて現場に出ることを決意しました。
お花屋さんや造園業で働きながら顧客の声を聞くと、アフターサポートがないことが大きな課題だと分かりました。

園芸店は、枯れたらまた買ってもらうというビジネスモデルが一般的で、売ったら売りっぱなし。
これでは植物へのリテラシーが上がらないと強く感じたんです。

――現場での気づきが起業に結びついたのですね。起業後も持ち続けていらっしゃる目標について教えていただけますか。

滝口氏――植物を枯らして困る人をゼロにしたいという思いと、“植物のお医者さん”が当たり前に存在する社会を作りたいという目標はずっと変わっていません。

植物それぞれの特性についてお話くださる滝口さん

動物を治療する獣医さんのように、植物に関して気軽に相談できる“植物のお医者さん”の存在を全国に広げたいという思いが一番強かったですね。
さらに、都市緑化や農業、ヒートアイランド対策などの社会課題への貢献も視野に入れており、まずは園芸の分野から取り組みを進めています。

サブスク×フランチャイズで広げる安定収益基盤

――現在の事業について詳しく教えていただけますか。

滝口氏――販売はほとんど行っておらず、お問い合わせがあった場合に対応する程度です。
主な事業は、造園工事や植栽工事、庭木の剪定、植物の訪問診療、観葉植物の植え替えなどです。

さらに、“植物のお医者さん”を増やすフランチャイズ事業と、サブリース型の植物レンタル事業も展開しています。
このレンタルサービスは、初期費用なしで植物を設置でき、月1回の交換が可能で、1年後には所有権が移る仕組みです。

知り合いの紹介などで契約が増えており、順調に拡大しています。

――会社や店舗などでもインテリアグリーンの世話が手に負えなくなってしまうことが多いですよね。

滝口氏――そうですね。水のやり方など世話の仕方が分からず、枯れれば責任を問われるので大変だと思います。

弊社では、管理が難しい飲食店やクリニック、美容室などに植物を設置し、サブスク型レンタルや月1回の交換・訪問診療、LINEでの写真相談などのアフターサポートを提供しています。

細やかなサポートをすることで、お客様の植物の状態を確実に改善し、満足度を高めながら成果に結びつけることができています。
また、フランチャイズ展開により同様のサービスを全国の店舗に広げることで、加盟店の安定した収益基盤を構築する効果も期待できます。

研究者の知見が生きる“植物のお医者さん”

エアコンの暖房の風が直接当たる場所で実験中

――植物の耐性を調べるため、さまざまな環境下で、どの植物が弱りどれが生き残るのかといった実験をされていらっしゃるとお聞きしました。

滝口氏――はい。暖房環境や寒冷地など、さまざまな過酷な条件下で検証しています。

例えばガジュマルやドラセナは予想以上に強く、モンステラは逆に弱い面があることも知りました。
塩害についても、葉が硬い植物は比較的強い傾向があり、環境に応じて適切な植物選びが重要だとの認識が深まっています。

――どのような相談が多く持ち込まれますか。

滝口氏――虫の被害や天候によるダメージが多く、LINEで写真を送ってもらい診断しています。
モンステラの葉に付くカイガラムシなどは、殺虫や拭き取り、活力剤で回復させます。

個人からの検索での問い合わせも多く、企業は顧客全体の3割ほどですが、ほとんどの植物は適切に処置することで回復できていますね。

――滝口さんの植栽へのこだわりや規模などについて教えてください。

滝口氏――案件規模は個人宅の剪定などで7〜8万円、庭を丸ごと作り替えるリガーデンはより高額になりますが、私にとってやりがいがあります。

メインとなる木の原産地に合わせた植物選びを徹底することをポリシーにしています。
例えばオリーブを使用する場合は、他も地中海沿岸の植物のみで構成し、和風庭園には洋風植物を入れません。

こうすることで、植栽したものすべてが同じ環境で育ちやすく、枯れにくくなります。

再現性ある植物管理と全国展開に向けた取り組み

――滝口さんが最も大切にしていることは何ですか。

滝口氏――お客様への説明です。
植物ごとに育て方や注意点が異なるため、細かく伝えることを重視しています。

また、実際に自分の手で試すことも大事ですね。
本や論文で得た知識だけでなく、現場での経験こそが信頼につながると実感しています。

――今後の展開や新たに挑戦したいことなどについて教えてください。

滝口氏――“植物のお医者さん”事業を国内全土に展開できるように、認知拡大と加盟店拡大に努めたいと考えております。

サブスク型レンタル事業の拡大を進め、フランチャイズ展開での異業種との連携も広げていくことで、植物をきっかけにした継続的な関係を構築したいですね。
研究経験を活かし、土や活力剤も開発・調整して、より効果的なケアを実現していきます。

滝口肇
合同会社Green Design 代表取締役 樹医

投稿者プロフィール
元国立研究所の植物学者で植物の専門家。
樹医の資格を取得後、2019年に個人で植物の訪問診療をはじめる。そこから造園の設備を整え、2022年に合同会社GreenDesignを設立。
造園、治療など植物のあらゆるサービスを提供し、植物の病気と薬剤の知識で、どんな植物の不調も解決する。
また、植え替え後に最適な活性剤を調合・処方して、ダメージを最小限に抑える技は超一級品!
Green Designは、「あなたの植物をもう枯らしません」をスローガンに掲げ、お客様に大切な植物と長い時間を共に過ごして欲しいと願っている。

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