不透明な時代にこそ求められる“リーダーの不安マネジメント術”~ハーバードビジネスレビューを読む~

先行きが不透明な時代と言われ、パンデミックによるさらなる追い打ちをかけられた現代のリーダーたち。部下を勇気づけ自身の不安を管理する術を彼らは独自の方法で見出しているといいます。見えにくい危機感とストレスにさらされるなか、リーダーたちはどのように人々を助けたのでしょうか。

「偉大なリーダーの『不安のマネジメント』に学ぶ」は、ハーバード・ビジネス・スクールのジェームズ・E・ロビソン記念講座の教授で、経営管理を専門とするナンシー・コーエンのインタビュー記事です。彼女が研究した偉大なリーダーたちがこれまで、苦境の中でどういったマネジメントをしたかということが書かれています。

今コロナの試練に耐え不安を抱えている人が多い社会で、リーダーに求められるマネジメント力について、国内外で税理士・経営コンサルタントとしてご活躍の鈴木道也氏の解説でご紹介します。

パンデミック下におけるリーダーのあり方

いま世界のリーダーはパンデミックに直面している先行きが不透明で、人々の不安が募る中、リーダーはどのように導いていけばよいのだろうか。

ナンシー・コーエンが指摘する“パンデミック下におけるリーダーのあり方”という視点から、お話を進めていきたいと思います。

新型コロナウイルスの現状

※表はZ=EN編集部作成

コロナの感染者数を見てみましょう。2020年12月2日午前3時(日本時間)現在、世界全体で、新型コロナウイルスへの感染が確認された人は6,352万2,286人、亡くなった人は147万4,213人(アメリカ ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによる)とされています。うち、感染者数(1,358万941人)も死亡者数(26万8880人)もアメリカが第1位。アメリカはこのコロナでかなりの影響を受けていて、死亡している人が多いことも分かります。

日本のコロナ状況

日本の場合は、感染者数が15万1030人、死亡者数は2,193人ですから、数値的にはかなり少ない状況です。世界から見ると、日本の感染者数はおよそ1.1%と低いですが、死亡率は1.45%ですから、世界的なレベルとあまり変わりがありません。

偉大なリーダーたちは不透明な時代をどう率いてきたか

企業でも政府機関でも、世界中のリーダーたちが大変な難題に直面している。恐ろしいパンデミックにより数十万人が犠牲となり、数十億人の生活が激変した。新型コロナウイルス感染症の今後の展開が不透明な中、リーダーたちは、不安におののく同僚や市民をどのように勇気づければよいのだろうか。また、その過程で自分自身の不安をどうすれば管理できるのだろうか。

希望を提供する偉大なリーダーたち

この問いに対して、ナンシー・コーエンは以下のような明確な答えを示しています。

歴史上最も偉大なリーダーたちは、進むべき道が不透明な時代でさえ、安定性と統率力、希望を提供する術を理解していた。

また、リーダーとしての最も重要な資質として、下記のように分析します。

彼らは人々に対して誠実であり、自分だけの不安解消法がわかっていた。

誠実さと確かな希望で人を導く

直面した危機による不透明性とストレスの中で、リーダーたちが人々を助けたシンプルな方法として、

極めて率直な誠実さと確かな希望の組み合わせ”をナンシー・コーエンは指摘します。

人々に真実を伝え、みんなが情報を持ち、危機的状況を理解できるようにし、信頼を構築します。それから、主な課題に対してどのような対策を講じているか、自分が――そして人々が――目の前の試練に立ち向かうのにどのような資源を持っているか、危機を乗り切るために人々ができることは何かを伝えます。

星野リゾート“18か月計画”に見るリーダーのかたち

リーダーの事例を一つご紹介します。

皆さんもご存知の「星野リゾート」の代表 星野佳路さんです。星野さんは現在60歳。31歳のとき、お父さんが経営されていた「星野温泉」に入社し、現在は4代目社長をしています。

先見の明を持つリーダー

星野リゾートは観光業界なので、当然コロナ以降は非常に厳しい状況に置かれています。彼は、コロナの影響はワクチンの接種などに至るまで1年半くらい続くだろうと見込んで、18か月計画を立てたのだそうです。そのシナリオについて、キーとなる社員と日々話し合いながら現在も計画を進めています。

地元で楽しむマイクロ・ツーリズム

18か月計画の核は「マイクロ・ツーリズム」(自宅からおよそ1時間圏内への短距離観光のこと)。海外からの観光客や遠方からの客が見込めなくなった今、地元客や保養目的の客などに小さな旅を楽しんでもらおうとする試みです。

訪日する外国人に日本の文化を教えるというインバウンド戦略とは異なり、土地のよさを推奨し、その土地に住む地元の人を楽しませることが主眼で、そこではめったに食べられない食事を提供するなど、趣向を凝らしたアイデアの勝負です。

軽井沢ブーム

このコロナ禍では、近くに旅行に行きたいというニーズが高まっています。マイクロ・ツーリズムの成功例として挙げられるのが軽井沢です。テレワークの普及によって観光場所がたくさんある軽井沢周辺は人気が高まっています。軽井沢まで電車で2時間、車で1時間くらいで行けるならば、身近なところの人に集まってもらって宿泊していただくという施策で、星野リゾートはコロナ禍を乗り切ろうとしています。

老舗が生き延びるために必要なこと

星野氏が今考えていることは、創業から100年を超えた星野リゾートがさらに生き延びること。そして、その大切さを従業員にどのように伝えていくかです。そこで彼がやり始めたのは、社員向けのブログです。以前から発信していたブログを、コロナになってから5倍以上の量でアップし続けています。

このブログで発信していることは、「コロナで誰もが不安な時期、よいニュースも悪いニュースも社員にはすべて開示し、今後の予測を教える」ことです。星野リゾートの展望を知らせ、経営陣が考えていることを社員にも共有させることで、社員の不安を取り除けると確信しているのでしょう。

ただし、安心させ過ぎてしまうと社員の気が緩むので、心配させない程度に安心させ、従業員のモチベ―ションを保つ。このバランスがキーですねと星野氏は語っていました。

多くの経営者の皆さんも、このコロナによって売り上げが落ちるなど、いろいろな問題に直面していると思います。そのなかで社員とのコミュニケーションを充実させていくことは重要です。ただし、安心させることにばかり注力するとコントロールが効かなくなったりもするので、その辺のバランスに気をつけましょう。

※この続きはpart2「リーダーには信頼を勝ち取る誠実さが不可欠」でお届けします。ご期待ください!

出典:「ハーバードビジネスレビューを読む~偉大なリーダーの『不安のマネジメント』に学ぶ」鈴木道也氏のセミナーより

※この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

鈴木道也
鈴木道也会計事務所 一般社団法人数理暦学協会 協会理事長

投稿者プロフィール
経営コンサルタント、税理士(国内、国際税務)。
1956年生まれ早稲田大学卒、米アリゾナ州立大学サンダーバード経営大学院にてMBA取得。
世界最大化粧品会社AVONニューヨークのPACIFIC MARK責任者を務め帰国後、多数の顧問会社の税務顧問、経営指導行う。
現在はマレーシア、シンガポールを中心に自らの直接投資経験で得た実践的知識を基に、海外投資コンサルタントとしても活躍。
18年前より注目した華僑の人物解析学の最高峰「算命学」、孫氏の兵法にもある人心掌握術など、アジア富裕層ビジネスメソッド「干支暦学」を活用したコンサルティング人材養成にも力を入れる。

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