リーダーには信頼を勝ち取る誠実さが不可欠~ハーバードビジネスレビューを読む~

Part1「不透明な時代にこそ求められる“リーダーの不安マネジメント術”」では、偉大なリーダーたちが不透明な時代をどう率いてきたかについて、日本のリーダーの事例を交えながら、税理士の鈴木道也氏の解説でご紹介しました。本稿はその続きとなるpart2です。

ハーバード・ビジネス・スクールのナンシー・コーエンのインタビュー記事から、パンデミック下におけるリーダーシップのあり方を、台湾とニューヨークのリーダーの事例から鈴木氏が紐解きます。

パンデミック下におけるリーダーのあり方

いま世界のリーダーはパンデミックに直面している先行きが不透明で、人々の不安が募る中、リーダーはどのように導いていけばよいのだろうか

ナンシー・コーエンが指摘する“パンデミック下におけるリーダーのあり方”という視点から、part1に続きお話しします。

※表はZ=EN編集部作成

この表からは、コロナ感染による深刻な状況が未だ世界規模で拡大していることが見て取れます。日本も例外ではなく、コロナ感染者や重傷者、死亡者の数は、収束の兆しを見せていません。

しかし、いかなる苦境においても、私たちは過去の偉大なリーダーたちから生き抜く術を学ぶことができます。この不透明な時代にリーダーとして国民を率い、自己の不安と折り合いをつけながら日々格闘するリーダーたちから“人を率いるヒント”が得られるかもしれません。

CEOや政治家はこの危機的状況でどのように存在感を示すべきか

危機の時期の大きな不安は、誰が責任者で、その責任者がどのように行動するかに左右されます。人々には、リーダーとその周辺は起こっていることを正しく理解しているのだと、理性的に、そして直感的にも本能的にも信じてもらわなければなりません。さらに、彼らは自分たちのしていることをしっかり理解したうえで、計画に基づき、人々を気遣いながら進めていると思わせる必要があります。

台湾のコロナ政策に見るリーダーシップ

台湾は、コロナ政策が成功したといわれていますが、その立役者がオードリー・タンという人です。2016年に35歳の若さで入閣し、デジタル担当を務めています。IQ180と言われる天才で、シリコンバレーでも一躍有名人となった彼をAppleがスカウトしたという逸材です。

3つの“F”で国民を不安から救う

オードリー・タンがおこなったコロナ対策には、特徴的な3つの施策があります。

・ファースト(First)

2019年12月、コロナが大きく取り上げられる前に、中国の武漢でウイルスによる拡大が起きているという情報をキャッチし、いち早く国を封鎖しました。日本でもコロナウイルスの情報が入り始めたころだったのですが、日本はすぐに国を封鎖しなかった。台湾は対応が早かったのです。

・フェア(Fair)

限りあるマスクを国民に公平に分配しました。日本は中国製マスクに依存していたため、一時期、国内でマスクを入手できなくなってしまいましたが、台湾は健康保険の番号を利用し一人2週間で9枚、均等に分配する施策を実行。国民にとって一番わかりやすかったのは、オードリー・タンが数日で作成した「マスク在庫マップ」でしょう。マスクの流通や在庫が一目で分かるようにし、枚数の制限こそあったものの、国民みんなにマスクがいき渡るという公平性が担保されたのです。

・ファン(Fun)

楽しむというのはチャットボットの活用です。マップになれていない高齢者などが、今自分がいる場所から一番近いマスクが売っている場所を専用のLINEアカウントの自動返答によって教えてくれるというもの。自分の携帯で調べてマスクのある場所を特定し買いに行くという一連の行動を楽しめるように工夫したのです。

台湾はこれら一連の国としての施策が国民の安心感を生み、コロナの感染を拡大させない有効な手段を講じることに繋がっています。日本もこの様にできればいいんですが、災害が多い割には危機管理面が弱い。今後の日本においても、国のリーダーが新しいことを導入する時に国民の賛同を得るには、強いリーダーシップが求められるでしょう。

リーダーは自らの不安にはどう向き合うべきか

いま、話している種類の危機(対応の巧拙が命運を決するような危機)では、リーダーが職務を成し遂げられると、人々が信じる必要があります。そのためには、慎重に自分の人間らしさを出すのはかまいませんが、公の場では感情の発露を抑制しなければなりません。人々の前で自分の不安を見せることは、目的達成の邪魔となり、不安定化と破壊を招くことになります。リーダーが懸念と恐れでいっぱいであると知ったら、人々はあなたについていく気がしなくなります。

不安を悟られないこと

これは経営者に言えることですが、「決して不安を顔に出してはいけない」ということです。実際はわからなくても自信をもって社員に話すということが必要だとリーダーは自覚すべきなのです。

リーダーがどういうことをすべきかについて、ナンシー・コーエンは以下のように述べています。

リーダーはある地点から別の地点へと導くことが自分の職務だと信じなければなりません。水平線に目指すべき明確な目印があり、それに向かってすすんでいけばよいという信念です。

目の前の一歩を示す

例えリーダーでも、不透明な状況ではどうなるかはわかるはずがないんです。ただ、目の前の一歩はわかるので、その見える範囲内で、まずみんなに、「今、どういう状況なのか」「私はこういう風にしていこうと思う」と丁寧に説明していくことが、リーダーとして非常に重要だということです。

これについては、多くの経営者が「やろうと思っても実際は先が見えないからなかなかできない」と言うんです。でも、「Step by Step」見えるところから皆に説明し、最終的な目標に達する。この地道な努力をしないと、社員の不安は解消されないでしょう。

パンデミックの中心ニューヨークのリーダーシップ

出典:ウィキペデイア

ニューヨークは、コロナの死亡者も多く出て、アメリカの中でもパンデミックの中心となり街が混乱しました。その混乱のなかで、州知事のアンドリュー・クオモは非常に迅速に対応し、効果的な戦略を打ち出しました。コロナの初めの頃、トランプ大統領が事態を軽く考え、深刻に捉えていなかったのとは対照的でしたね。*

ニューヨークは2020年3月~4月ころ、コロナの感染が爆発的に広がったんです。そこでクオモ氏は、3月の初めから毎日、記者会見を行いました。コロナとの闘いというのは、市民への情報提供と市民の協力が欠かせないと確信し、CNNに毎日登場してニューヨーク市民に説明したんです。結果、ニューヨーク市民は勇気づけられ、癒され、リーダーのあるべき姿を目の当たりにし、彼の人気はどんどん上昇していきました。

状況と見通しを丁寧に伝える

このクオモ氏の行動は簡単なことのように思えるんですが、実際は大変な忍耐を必要とする作業。110日間、一日も休まず、「今コロナの状況はどうであるか」「今我々はどのような考えを持っていて、今後どんな行動をとるか」を毎日1時間話すわけです。こうすることによって市民の信頼を得、「マスクをしなくちゃいけない」というようなリーダーの話を皆が聞くようになりました。ニューヨークの感染者が次第に減り収束に向かったのは、彼の力によるものだといわれています。

クオモ氏の会見は3部に分かれています。

  • データを確認し、事実を話す
  • 自分の考え方や意見を述べる
  • プレゼン形式でみんなの意見を聞いて意見交換をする

事実と意見を分ける

クオモ氏が一番気をつけていたのは、事実と意見を分けるということです。たとえば、コロナの初期、若者は罹らないと言われていましたが、ニューヨークの統計では全感染者の54%が18歳~49歳の若年層だったのです。そのような事実を知らしめていくことで、市民もリーダーの言うことを理解していくという流れが出来たのだと思います。

コロナ禍で、国内外の偉大なリーダーたちが人々を導き、不安を取り除いていった行動事例は、われわれ経営者のリーダーとしてのあり方にヒントをもたらしてくれるでしょう。

鈴木道也
鈴木道也会計事務所 一般社団法人数理暦学協会 協会理事長

投稿者プロフィール
経営コンサルタント、税理士(国内、国際税務)。
1956年生まれ早稲田大学卒、米アリゾナ州立大学サンダーバード経営大学院にてMBA取得。
世界最大化粧品会社AVONニューヨークのPACIFIC MARK責任者を務め帰国後、多数の顧問会社の税務顧問、経営指導行う。
現在はマレーシア、シンガポールを中心に自らの直接投資経験で得た実践的知識を基に、海外投資コンサルタントとしても活躍。
18年前より注目した華僑の人物解析学の最高峰「算命学」、孫氏の兵法にもある人心掌握術など、アジア富裕層ビジネスメソッド「干支暦学」を活用したコンサルティング人材養成にも力を入れる。

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