ピアノ業界を牽引する老舗企業の2代目は、絶えず変革を試みる(前編)

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世界でも最大規模のピアノコンペティションの運営やYouTubeでのクラシック視聴機会の拡大、オンデマンドピアノ学習サービスなど、日本のピアノ業界を牽引する株式会社東音企画 代表取締役および、 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会の団体代表であり専務理事でいらっしゃる福田成康さん。団体は指導者・学習者・愛好家17,000人の会員組織に拡大しています。少子化が進み、ピアノ学習者人口が減り続けているなか、様々な角度で変革を試み実現される福田さんに、変革の軌跡と今後の音楽と業界の可能性を伺いました。

創業55年老舗企業の軌跡

※PTNAはピティナの略称

Z-EN――御社は、福田さんのお母様が始められた事業ですよね。

福田成康氏(以下、福田氏)――1966年に母が東京音楽研究所の名称で発足し、1968年に全日本ピアノ指導者協会と改称、1970年に株式会社東音企画(以下、東音企画)として法人成りしました。
母は作曲学科出身で、ヨーロッパ第一だった自国に日本人が作曲した曲を広めたいという想いがあり事業を始めます。
ですが、残念ながら日本人の曲は当時全く売れなかったようです。

落ち込むところですが、母はさっさと方向転換(笑)
事業継続に主眼をおき、ニーズの高いショパンやベートーヴェンを扱い、ピアノの先生向けのセミナー事業をやるようになりました。

――セミナー事業からスタートされたのですか。

福田氏――当時はピアノの導入本といえばバイエルくらいしかなかったんですが、海外の秀逸なメソッド本を十数種類ほど発掘・取り寄せして、ピアノ指導者にセミナーをやっていたようです。

――海外のメソッドを持って来られた先駆者だったのですね。海外留学のご経験がおありだったのでしょうか?

福田氏――今弊社で取り扱っているバスティンの教本も、当時大手楽器店に断られたことで、思い切って自分たちでやるようになったものです。
母には留学経験はありませんでしたが、満州で生まれ12歳まで過ごした、いわゆる帰国子女です。
大陸的な感覚があって、海外との取引には全然抵抗がなかったようですね。

当時は朝日生命ホールとか、第一生命ホールとかでセミナーをやると、小さな新聞広告だけで全国から800人もの人が集まってきていたようです。
新しいものをどんどん取り入れようという時流に乗っていたんでしょうね。

ピティナ・ピアノコンペティションの始まり

――世界でも最大規模のピアノコンクールとなったピティナ・ピアノコンペティションは、何がきっかけで始まったのですか?

福田氏――セミナーが大成功して全国から人が集まっていたのに、実際の指導力が上がっていないことに気づいて、先生の指導力アップのためにはじめたようです。

1977年にPTNAヤングピアニスト・コンペティションという名称で第一回目が開催されました。
今年で45回目の開催となり、延べ40,753組が参加する大きなコンペティションに成長しています。
最上位となる特級のファイナルはサントリーホールで、新日本フィルハーモニー交響楽団とのコンチェルトというもので大変華々しいです。

(上)2021年開催ピティナ・ピアノコンペティション特級ファイナル(Youtube ピティナ ピアノチャンネル より)
(下)いずれも、2021年度ではありませんが、「全国大会表彰式の様子」(ホテルニューオータニ)
画像提供:ピティナ

▶開催から45年の歴史を持つピティナ・ピアノコンペティション。日本のピアノコンクールを牽引する福田さんが、ピアノ事業承継の詳細について次のページでお話くださいます!

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福田成康
株式会社東音企画 代表取締役社長
一般社団法人全日本ピアノ指導者協会 専務理事
公益財団法人福田靖子賞基金 理事長

投稿者プロフィール
1964年生まれ。筑波大学生物学類卒業、栗田工業(株)で3年間勤務し、1989年4月から株式会社東音企画入社、1990年4月に同社代表取締役社長就任。
1991年4月より社団法人全日本ピアノ指導者協会の事務責任者として経営に関わり、現在は専務理事(団体代表)。
1996年、日経BP社より情報システム大賞の準グランプリ受賞。2001年、第3回「フジタ未来経営賞」を受賞。2002年、財団法人商工総合研究所 中小企業懸賞論文 準賞受賞。2011年 文部科学省 社会教育功労者表彰受賞。

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