飲食店経営の奇才が語る「成功の秘訣とエンターテイメント性」(前編)

長期化するコロナウイルス感染症の経済的影響は、飲食業界に暗い影を落としています。1月に発表された帝国データバンクの調査では、飲食店事業者の倒産は780件と過去最多。しかし、自主廃業や多店舗経営の一部閉店は含まれないため、実際にはこの数倍に上るでしょう。この環境化でも予約が殺到する弁当屋があります。これまで1700軒以上の飲食店舗をつくり、8000人の飲食店経営者と会ったという、店舗ナンバーワンホールディングス株式会社 代表取締役 三浦正臣さん。その飲食店づくりに掛ける熱い想いと、成功の秘訣についてお話を伺いました。今こそ飲食業界への参入のチャンスと考える経営者は必読です!

店舗ナンバーワンホールディングス株式会社 代表取締役 三浦正臣 氏

飲食店づくりは物件と周囲の雰囲気で決める

――これまで多くの飲食店プロデュースを手掛けてきたと思いますが、もう三浦さんが手掛けていない業態はないのではないでしょうか?

三浦 正臣氏(以下、三浦氏)――そうですね。これまで1700軒以上をつくってきて、「つくっていない業態はない」と自負しています。チェーン展開で3000~4000店出している飲食店でも、バラバラの業態でやっているところはないでしょうね。

店舗流通ネット時代から、飲食店、不動産業と金融業をミックスした開業支援をしていて、物件も紹介するし資金も提供していた。運良く4年半で上場でき、資金調達して出せるお金も増えました。

海外の飲食店から受けた影響

――退任して、海外へ行かれたとか?

三浦氏――はい。僕の噂も広まっていて、「うちの国で飲食店を出してほしい」とオファーが入るようになりました。仕事が好きすぎて、退任した2日後には恵比寿のガーデンプレイスに事務所を借りていました(笑)。それで、バンコクやパリ、台湾などいろいろな国に呼ばれて現地に行きましたね。

当時は主に、物件の取得費用や内装費用などの資金を提供する仕事をしていて、さらに店舗運営も業務委託してもらっていた。運が良いことに、腕の良い職人さんが僕の周りにたくさんいて、現地に彼らを引き連れて行って開業支援をしていました。ところが、逆に僕の方が現地で刺激を受けちゃった。バンコクやパリですごく感化されたんです。

日本では食べたことのない味。見たことのない食材や調味料。かっこいい内装。それに、現地のスーパーマーケットもすごく刺激的でした。それで、帰りの飛行機の中で「もう一回会社を作ろう!」と思ったんですよね。

現場から感じるインスピレーションが大事

――三浦さんは、感受性が豊かで行動力もすごいですね。しかも、本当にこの仕事が好きなんですね。

三浦氏――それは間違いないですね。最近は、2020年7月にオープンした「海苔弁 いちのや 靖国通り本店」に夢中になっています。最初、海苔弁を始めることは役員にもスタッフにも大反対されました(笑)。

六本木ヒルズの横に事務所があって、ちょうど引っ越すタイミングだったんです。試作をつくるために、できれば厨房付きの事務所が欲しかった。あちこち探して、今の物件をたまたま見つけまして。靖国神社の目の前で、事務所から見える景色に惚れました。

「片づけも撤去も自分たちでやるから」と、2020年の5月末にカフェの居抜きを借りて7月にはオープンしちゃいました。工事は一切外注しないので早いんですよ。図面も引かせず、僕は工事中現場にいて、「もうちょい右右…はいOK!」みたいな(笑)。色とか質感とか現場にいないと感じられないことも多いですからね。この事務所の壁の青色も、現場に入った瞬間「イメージが違う!」と全部塗り直しました。あとは、アンティークが好きなので自分で買いに行ったり。1階の海苔弁屋も図面は引いてないです。同じ幅の木だけで作りました。本社の引っ越しがきっかけで始めたのですが、本社の1階で日銭が稼げるというのもすごく安心感があります。事務所の家賃がタダになるようなものですから。

1階を海苔弁屋にしようと思ったのは、物件を見て、「ここなら海苔弁だ」と直感が湧いて。鳥居のすぐ横っていうのも良いじゃないですか。それで、ロゴに自分で描いた鳥居を入れたんです。「靖国」と、店名に入れたかったので、「靖国通り本店」にしました。きっと、靖国神社の直営店だと思っている人もいるでしょうね(笑)。

海苔弁 いちのや 靖国神社本店前 鳥居を目の前に臨む立地と物件に、すぐに「弁当屋をやる!」とピンときたという

――物件を見たときにインスピレーションがあったわけですね。いつもそういう感じで業態を決めていくのですか?

三浦氏――そうですね。実は「こういう店をやりたい!」と思って始めたことはなくて、物件を見て、その周辺の雰囲気などを感じていつも決めています。その方が、成功確率が高いんですよ。

「東京名物・海苔弁」を作る!

品格の高さと丁寧な取扱は高価格だからこそ

――海苔弁は好調なようですね。

三浦氏――おかげさまで。横浜の高島屋さんでも催事で1週間だけ販売したのですが、最初の100個は45分で完売しました。高島屋さんのかき入れ時に商品がないんじゃ顔が立たない!と、追加で100個つくって並べたのですが、それも夕方30分で完売しちゃって。厨房が狭く、フライヤーも小さいので、つくれる数に限界があるんですよ。高島屋さんでは、10個とかまとめて買う人がいて、後ろに並んでいる人が「あらら…なくなっちゃう…」と不安気で。好評だったので、5月にまた催事に出す予定です。そのときには、「東京名物・海苔弁」にしようかなと。それで話題になったら、東京駅からオファーが来るかもしれない(笑)。東京って、お店がすごく多いから「東京名物」がなかなかないんですよ。言ったもの勝ちだから、東京名物・海苔弁として打ち出していこうと企んでいます!

――それはすごく良いですね。このしょうゆの容器が金色ですし、箱や紙袋のデザインも高級感があって手土産や会合で出すお弁当としても良いですよね。

三浦氏――それはもちろん狙ってやっています。金色のしょうゆ容器はたまたま運良く見つけたんですが、箱は手づくり。大阪で紙屋さんをやっている役員から、木目をプリントするアイディアをもらってコストを抑えた良い箱ができました。蓋を開けると、料亭のコースメニューみたいになっているでしょ?これは「コースメニューの紙を見ているのってワクワクするよね!」ってことで、このデザインになったんです。当初は、「海苔弁を1000円で売る」と言ったら、「お願いだから600円で売らせてくれ」と店長に泣きつかれましてね。でも、「ダメだ!」と、1000円で通しました。この品質とデザインなら1000円で売れるという確信があったし、1000円で売るからみんな丁寧につくって包装して丁寧に届けてくれる。これが600円の海苔弁だったら、もっと雑になっちゃいますから。

Z-EN撮影

土日も影響しない安定売上の秘訣

――考え抜かれてますね。宅配もしているんですよね?どれくらい売れているのですか?

三浦氏――宅配で1日150~300個くらい売れています。予約だけで毎日150個くらいあります。ロケ弁注文も多くて、フジテレビやテレビ朝日、TBSなどテレ東以外はほとんどの局から来ていますね。ロケ弁だと、タレントさんの口に届くので、インスタにアップしてくれたりと、集客効果も高い。先日テレビで紹介されて電話が鳴りっぱなしでしたよ。1日で580個売れた日もあります。

今の厨房ではつくりきれず、お断りせざるを得ないこともあって、次の店舗を準備しています。場所は新宿でほぼ決まっています。甲州街道沿いのオフィスがたくさんあるエリアで、元うどん屋さんの物件です。面積が広く、フライヤーやダクト設備もあるので機動力が上がるでしょうね。人口も今の店舗エリアの50倍くらいいるので、うまくいくと思いますよ。

――それは楽しみですね。靖国通り本店は、どれくらいの売上なのですか?

三浦氏――売上は1日30万円くらいです。土日も落ちないですね。これは予想外でした。夕方は18:00まで営業しているのですが、ランチタイムだけではなくて15:00とかでも売れています。まとめて買う人が多くて、車で来る人もいますね。7月にオープンして、まだ春を経験していないので今から楽しみです。春限定の季節弁当もつくっていて、ここは桜があるので、すごいと思いますよ。秋や冬の季節弁当は1日50個限定で販売したのですが、予約と店舗販売で午前中には完売していました。

――予約で安定的に売上があるというのは、経営の観点からは安心感が増しますね。

三浦氏――「今から40個」と急に電話で注文が来ることもありますが、それはそれで嬉しい悲鳴ですね。本当は、前日とか早めにご予約いただけるとスタッフの負担も減るのですけどね(笑)。

「見せ方」を大切にしてブランド価値を保つ

――Uber Eatsは、あえて使っていないのですか?

三浦氏――そうですね。わざわざ予約していただくとか、お客様に来ていただくとか、スタッフがお届けするとか、そういう付加価値が大切だと思っているので。靖国通り本店は、レンタカーとリヤカー付きの自転車で届けています。Uber Eatsは今後もやらないですね。ブランド価値が下がると思います。やっぱり、ビシっと海苔弁屋の衣装でお客様の手元まで届けたい。そば屋の出前みたいなイメージですかね。オープン前にポスティングしていたのですが、結構坂道も狭い道もあるので自転車の方が良いと思って。スタッフからは「どうしても電動自転車にして」と言われたので、そこは奮発しました(笑)。

――ポリシーがあって素晴らしいです。ブランド価値を落とさないというのは、とても重要ですよね。三浦さんは、インスピレーションやエンターテイメント性をとても大切にされている印象があります。次回は、過去に手掛けてきた飲食店についても教えてください!

後編に続く…)

三浦正臣
店舗ナンバーワンホールディングス株式会社 代表取締役

投稿者プロフィール
1980年生まれ、神奈川県出身
2002年、店舗流通ネット株式会社に入社。
24歳で取締役営業本部長になり、同社の上場に貢献。数多くの飲食店プロデュースを手掛ける。2008年には「恵比寿横丁」をオープンし、多くのメディアから注目を集める。
2012年に独立し、ストアクリエイティブ株式会社を設立。海外の店舗プロデュースも手掛けるようになる。
2015年1月、店舗ナンバーワンホールディングス株式会社を設立し、これまでに1700軒の飲食店をプロデュースしてきた飲食業界の奇才。

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