「社長の右腕」には注意が必要?『三国志』が教える分業の重要性
- 2023/2/3
- 経営全般
会社経営において経営者が1人でできることには限界がある。だからこそ「社長の右腕」を据えてトップを分業することで企業を成長させようとするのですが、実際はその右腕の存在が企業存続の足かせとなっているケースも多いと警鐘を鳴らすのが、仕組み経営株式会社取締役 清水直樹さんです。今回は、中国の三国時代の歴史書『三国志』から、「社長の右腕」のいる組織編成に必要なポイントについて、清水さんのナビゲートで学びます。
目次
会社のNo.2「社長の右腕」
「社長の右腕」別名「No.2」とは、会社のなかで実質的に社長の次に影響力がある人物を指します。
成功に不可欠なのか
シリコンバレーでは、社長の右腕=共同創業者である場合も多く、皆さんがよくご存知の成功した会社もあります。
たとえば、アップルは、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックという「2人のスティーブ」、マイクロソフトではビル・ゲイツとポール・アレンが創業者として名を連ねています。
日本の製造業でも、ソニーは盛田昭夫さんと井深大さん、ホンダは本田宗一郎さんと藤沢武夫さんのコンビが知られています。
このように、「社長の右腕」が存在することで成功・成長した企業の実例は確かに多いのです。
ところが、その存在によりかえって問題が起こっている会社もあります。
今回は「社長の右腕」が組織を壊す3つの理由と、その対処法についてご説明します。
「社長の右腕」は将来の危険要素?
先述の成功例を見て、「うちも自分の分身となる右腕がいたら楽になるのでは?」と、右腕人材を探したり育成を目指したりしている経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。
「社長の右腕」とは、どのようなイメージですか?
たとえば、会社の管理業務など「経営者がやりたくないことを代わりに担ってくれる人」として社長の直下にポジショニングする。
そういう組織を理想として描いている方が多いのではないでしょうか。
しかし、このようなパターンは、会社にとって非常に危険です。
その理由は3つあります。
永遠に右腕でいてくれるわけではない
理由の1つ目が、「社長の右腕」が離脱する可能性があるということです。
当然ながら「社長の右腕」も自分の意思を持った1人の人間ですから、ちょっとしたキッカケで別の会社で働こうと考えてしまう可能性もあるわけです。
あるいは家族の事情や病気など、やむを得ない理由で離脱してしまうことも考えられます。
そうすると、これまで「社長の右腕」に任せていた業務を社長自身が全部自分でやらなければいけない事態に陥ってしまいます。
「社長の右腕」に依存する危険性
先ほどのシリコンバレーの成功者たちは、基本的に共同創業者という立場でその多くが会社の所有権を持っています。
要するに、株を持っている可能性が高く、社長とほぼ同じ立場であることが多いのです。
ところが、おそらく日本の中小企業で「社長の右腕」が欲しいという場合、所有権は社長が持っていて、社員として頑張ってもらいたいと考えていることが多いと思います。
そうすると、「社長の右腕」が離脱しても文句はいえません。
そして、右腕離脱時の依存度が高ければ高いほど、経営者は困難に直面するわけです。
No.1と対立しやすい
2つ目は、「社長の右腕」が経営者と対立することです。
これは、株を持っている共同創業者か株を持たない社員かにかかわらず、仲違いして会社が崩壊していくパターンです。
先述の成功事例は、たまたま共同創業者の関係がうまくいって成功し有名になったわけですが、世の中にはNo.1とNo.2が対立してしまって会社が崩壊し、世に出ることなく終わってしまったケースが山ほどあるのです。
うまくいった事例だけに目を向けないようにしていきましょう。
右腕への放任が生む弊害
3つ目、は結構多いパターンですが、「社長の右腕」に経営を放任し主導権を奪われることです。
実態として、「社長の右腕」以下のポジションをすべて「社長の右腕」がみている組織で起こりがちです。
「社長の右腕」が優秀であればあるほど、社長は楽になります。
社長が見切れない組織の部分を「社長の右腕」が見てくれるわけですから、社長はめちゃくちゃ自由になって、会社の将来像を考えたり、新規事業を開拓したりすることができるようになります。
しかし一方で、社長にとって組織がブラックボックス化してしまい、現場で何が行われているのか分からなくなってしまう可能性もあります。
そうすると、「社長の右腕」にすべて任せて上手くいっていると思っていたつもりでも、いつの間にか社長自身が思い描いていた基準で仕事が行われていなかったり、望んでいた会社の文化ではなくなっていたりする事態が生じるのです。
右腕が経営する会社になってしまうケース
「社長の右腕」が優秀で影響力が高ければ高いほど起りがちなのが、右腕が実質経営権を握ってしまうことです。
社長がつくった会社にもかかわらず、社長ではなく「社長の右腕」の基準や価値観で事業が行われ、いつの間にか自身の会社ではないような感じになってしまいます。
このようなパターンは結構多くみられるので、非常に注意が必要です。
結局、社長が「社長の右腕」に依存してしまっていること、これが原因です。
▶次のページでは、どうしたら「社長の右腕」が企業にとって有益となるかについて、『三国志』を例にお届けします。右腕が欲しい経営者必見です!