契約書に強くなる!リーガルチェックポイントを弁護士が解説
- 2021/1/11
- 経営全般
起業した際の取引では必ず「契約書」を交わす場面が出てきますが、書面にあるどの項目がどのような意味を持つのか、素人にはわかりにくいものです。だからといって、十分に確認もせず契約を結んでしまうと、思いもよらない内容が契約書に書かれていることに後から気づいて、困った事態に陥ることがあります。
IT企業経営者としてのご経験をお持ちの弁護士、中野秀俊氏が、専門家の視点から、起業家が知っておくべき「契約書」の基本的なチェックポイントについてお話しくださいます。
契約書のチェックポイント
起業して取引が始まると「契約書」を提示されることがあります。契約書チェックなどは、弁護士に依頼することも考えられますが、コストがかかりますし、そもそも弁護士の知り合いがいないといったことも考えられます。そこで今回は、取引相手から契約書が提示された場合に、最低限チェックしてほしいポイントを解説していきます。
契約の期間と更新
継続的な契約(基本契約、業務委託契約など)を締結する場合には、契約期間がいつから始まり、いつ終わるのかをチェックしましょう!また、自動的に更新するかどうかもチェックが必要です。
契約の解除
契約の解除とは、既に成立した契約関係を一方的に失わせることをいいます。一般的には、契約違反があった場合に契約を解除することができます。その他にも、企業の経済状態が悪くなった場合などが契約を解除されるケースとして考えられます。チェックする際には、契約解除の要件として、自社が守れそうもないことが盛り込まれていないかを確認しましょう!
契約時に確認すべき条項
実際の契約の際、確認してほしい具体的な事項をいくつか紹介します。
期限の利益喪失条項
お金を借りたり、分割で支払ったりする契約には、「○○の場合には、当然に期限の利益を喪失し、相手方に債務の全部を直ちに弁済しなければならない」といった条項があります。これが「期限の利益の喪失条項」と呼ばれるものです。
これに該当すると、場合によっては債務を一括で支払う必要が出てきます。スタートアップ・ベンチャー企業としては、資金繰りの問題に直面するケースともなり得るので、「期限の利益の喪失条項」がある場合には、どのような事項が記載されているかを確認するようにしましょう。
損害賠償条項
損害賠償条項で気を付けるべき点は、損害賠償を負わない場合(免責)や損害賠償額の上限があるかどうかです。免責規定があると、相手方は損害への賠償を負わないですむことになりますし、賠償額に上限がある場合には、それ以上の賠償金額を相手方に請求できないことになります。契約の種類や内容によってはリスクと見合わない可能性も出てくるので、しっかり押さえてほしいポイントです。
完全合意条項
法律上、契約書に記載がない条項でも、お互いの合意があれば契約内容になります。例えば、担当者同士がチャット・メールや会議の場で、契約書にはないやり取りをしている場合です(会議の発言については、議事録として残っていれば証拠になります)。
実際、当事者間に争いが生じた場合、契約書に記載がない事項が契約内容として有効か、といった争いになることがあります。
そこで、このような事態を回避するため、「契約書に記載されたことに限って合意事項とする」という完全合意条項を設けることがあります。このような規定があれば、契約書に記載されている事項以外は、お互いを拘束することはできないと肝に銘じておきましょう!
合意管轄条項
「合意管轄条項」とは、裁判になった場合にどこの裁判所で裁判するかについての規定です。どこの裁判所で裁判できるかは、法律で決まっているのですが、お互いの合意で決めておくこともできます。合意管轄条項に示した裁判所があれば、訴訟の際はその裁判所で裁判をすることになります。
当然、会社の所在地から近い裁判所の方がよいでしょう。自社所在地の管轄裁判所を指定できれば、万が一訴訟になった場合、裁判所までの交通費や弁護士への日当など、経費を節約することができます。
ただ、この条項に拘りすぎて、契約自体が白紙になってしまうのでは本末転倒なので、その辺りはどこまで交渉するのかを考え折り合いをつけるのが得策です。東京や大阪の裁判所では、建築・労働関係専門の部署があり、当該分野に精通した裁判官が審理をしてくれます。またIT紛争では、大都市部の裁判所の方が扱っている件数が多いので、その手の事件に裁判官も慣れている場合が多いです。その点も加味して決定するとよいでしょう。
出典:マイナビニュース「『契約書』結ぶ前にココをチェック!」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。