IRRを使いこなし効率よいリターンを!
- 2021/1/20
- 事業投資
投資案件の収益性を評価できる指標の一つIRR(Internal Rate of Return)。同じ金額を回収できる投資だとしても、その期間の違いで収益率が異なるため、複数の投資先を比較するうえで大いに役立つ指標です。
今回は、資金調達や会計面でスタートアップ企業のサポートをメインにご活躍のゴージュ会計士事務所代表の岡野貴幸氏にIRRの考え方、実際の活用の仕方について解説していただきます。
目次
内部収益率「IRR」
企業決算書だと、企業全体での利益や保有資産などは見ることができますが、ある1つの事業の利益率がどうなっているかは確認することができません。そのため、事業の利益率を個別に把握する指標として「IRR」があります。
IRRとは、Internal Rate of Returnの略であり、日本語では「内部収益率」と言います。簡単に言うと毎年の利回りがどれぐらいになるかということです。IRRは、キャッシュフローと資金回収期間をベースにした投資へのリターンを評価する指標として用いられています。IRRでは他の指標と異なり、投資期間を考慮して計算します。貨幣の時間価値が大きく影響する※ためです。
※お金の価値は時間経過によって変動しますが、IRRでは投資金額を早く回収できるほど価値が高いと評価します。
IRRは貨幣価値の経年割引率
IRR(内部収益率)の計算は、投資金額(マイナスのキャッシュフロー)と将来キャッシュフローの現在価値の総和(すべての合計)が0(ゼロ)になるときの割引率(r)の値を求めることで計算できます。具体的には、次のような計算をします。
IRRの計算式
投資金額(マイナスキャッシュフロー) + 1年目のキャッシュフローの現在価値 + 2年目のキャッシュフローの現在価値 + 3年目のキャッシュフローの現在価値 + …… が 0(ゼロ)になる時の割引率
この時の割引率(r)がIRRとなります。とはいえ計算式を見ても分かりづらいため、実際に使用する際はExcelでの関数や、関数電卓で求めましょう。今回は、具体的な計算方法というよりは、感覚で掴んでいただきたいので、実際の数字を使って考えてみたいと思います。
同じキャッシュフローでも回収期間が重要
例えば、100万円を投資して、3年間合計で150万円のキャッシュフローが得られる下記表のような投資案件A~Cの3つがあったとします。あなたならどれに投資をするでしょうか?
どれも似たような数字ですが、1年目、2年目いずれもBのキャッシュフローが一番大きいため、Bの案件が一番良いと感じると思います。
キャッシュフローだけで判断できない投資診断
ここで難しいのは、AとCの比較です。1年目、2年目のキャッシュフローの合計額はCのほうが大きいですが、1年目のキャッシュフローの金額はAのほうが大きい状態となっています。このような時にIRRを求めることが有効です。
この3案件のIRRは下記となります。
- 投資案件A IRR 16.46%
- 投資案件B IRR 17.18%
- 投資案件C IRR 16.16%
より早い段階での資金回収がカギ
やはり、Bの案件が一番高いIRRとなりました。次にAとCですが、Aのほうが高いIRRとなっています。より早い段階、つまり1年目(投資から早い段階)で大きくキャッシュフローを得られたほうがIRRは高いことが分かりました。
IRRでより効率的な投資を!
このようにIRRを計算することによって、単純にキャッシュフローの金額ではなく、投資した金額とその回収のタイミングを考慮して投資効率を図ることが可能となります。複数の投資案件を検討している時にはIRRを算出して参考にしてみると良いでしょう。