経理業務のDX化には俯瞰からの視点が不可欠
- 2021/7/12
- 経営全般

「働き方改革」が叫ばれ、AIを初めとした科学テクノロジーが急激に進化している現代。前回は、ゴージュ会計事務所の代表で公認会計士の岡野貴幸さんによる、電子帳簿保存導入に関するアドバイスを紹介しましたが、今回は「経理業務のDX化」についての解説を紹介します。見かけ上のDXに陥らないようにするために必要なこととは何でしょうか。
業務プロセスを見える化して誰にでも分かりやくする
最近よく「DX化」という言葉を耳にします。そのなかで、「経理業務のDX化」も注目されるトピックとなっています。前回の記事で記載した電子帳簿保存も、経理業務のDX化を推し進めるポイントのひとつです。
経理業務のDX化にあたり、論点となるのが“紙の書類をいかに電子化するか”ということ。電子データはそのまま保存すればいいのですが、紙の領収書はスキャンして電子データ化する必要があります。
しかし、紙の電子化を考えるよりも、まずやるべき重要なことがあります。それは、最適な「業務フロー」を作成すること。業務フローとは、現場での業務プロセスを可視化するフロー図のことで、業務プロセスを見える化し、誰にでも分かりやすくするために使います。このフロー図は、会社の業務改善を進める際、現場業務の分析や課題の洗い出しにも利用されます。
業務フロー作成は経理業務DX化に不可欠
上場企業の場合、内部統制の構築が義務化されており、監査法人の監査を受けるため、業務フローの作成は必須となっています。しかし、未上場かつ上場を目指していない会社の場合、この業務フローを作成しているところはごく少数だと感じます。
経理業務のDX化を成功させるには、この業務フローの作成は必須と言えます。一例として、紙の領収書を電子化する業務フローを見てみましょう。
取引の発生→紙で領収書を受け取る→経理部に郵送→経理部は紙の領収書を元に仕訳計上→「領収書をスキャンしてデータ化」→紙とデータの両方を保存
上記のような流れの場合、データ化するための無駄な工数が増えています。「このようなことは生じないだろう」と感じる人も多いかもしれませんが、意外にもこういったことが実際の業務では生じるものです。結局、無駄に気付き、また紙のみのやり方に戻るケースもあります。
密接に関わっている現場の業務把握から始めよう
上記の場合、問題点はどこにあるのでしょうか。最初の「取引の発生→紙で領収書を受け取る」という箇所を「紙で受け取っている領収書を電子データに変えてもらう→担当者と経理に送ってもらう」とできれば、データ化の工数は増えません。このような改善をするためにも、まずは紙で受け取っている領収書の取引先がどれほどあるか洗い出しましょう。
この洗い出す作業は結構大変なため、実施しないという会社も多いかもしれません。しかし、根本要因を見つけるには、現状の業務のやり方を可視化し、業務課題をどう改善するといった、現状の把握が重要なのです。
また、このときに起こりがちな事例が、“経理業務だけ”見た目上のDX化を行ってしまうことです。バックオフィスの経理は、会社の取引のほぼ全てと繋がっており、現場と密接に関連した業務となっています。そのためDX化の際は、現場で生じた取引が、どのようなプロセスを経て経理に繋がっていくか、また全体の過程を把握した上でどうDX化するかという意識がなければ成功しません。
経理業務のDX化をしたい場合、まず始めに、最初に経理と現場、そしてその間で関係する人も含めてコミュニケーションを図り、業務フローを作成しましょう。その後、どのようにDX化するかを話し合い、全体のプロセスを変更するやり方が有効です。会社全体として意識を持って取り組むことであり、皆で作り上げようという意識が重要です。そのような姿勢で取り組めば、経理をDX化した効果が、会社全体の業務のDX化に繋がっていくはずです。
出典:マイナビニュース 「経理業務のDX化」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。