上場(IPO)に不可欠なだけじゃない?税務会計から財務会計への転換を!

企業の財務状況を明らかにし、決算書作成のための収支計算等をする会計業務。そのなかに、税務会計と財務会計があります。これらは似て非なるものであり、その違いが上場(IPO)を目指す企業にとって大きなハードルになるケースが多いようです。

企業のスタートアップをメインに会計面や資金調達面でサポートを行う、コンサルティング会社と会計事務所の代表 岡野貴幸氏が、これらの違いを解説し、シンプルな解決方法を提言してくださいます。

上場の大きなハードル 税務会計と財務会計の違い

上場を目指す前は、多くの企業が「税務会計」で決算書を作成しています。一方で上場を目指す会社は、「財務会計」をベースとした決算書を作成しなければなりません。一見同じような言葉であり何が異なるか分かりづらいですが、ここには大きな差があり、その差こそが上場を目指す際の大きなハードルとなります。

財務会計をベースとした決算書を作成することは、上場していない会社にとっても、より経営の実態を把握するために役立ちます。そのため、税務会計と財務会計の違いや、それぞれの必要性を理解することは企業にとって有益です。

税務会計

税務会計とは、企業の課税されるべき所得額を算出するための会計です。単純に言ってしまうと、会社が国及び地方自治体に納める法人税を計算するために行っているものです。そのため、税務会計を作成する上でのルールは法人税法となります。会社は1年に一度決算書を作成しなければならないのですが、未上場の会社は法人税の計算をするために税務会計に基づいた決算書を作成しています。

財務会計

財務会計とは、企業会計原則をはじめとした各種会計基準等に則り、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表に基づいて作成されます。財務会計の目的は、投資家をはじめとする企業の利害関係者に対して財政状態、経営成績などの情報を提供することです。

財務会計を作成する上でのルールとして、金融商品取引法、会社法、企業会計基準があります。株式が売買される上場会社には実態を明らかにすることが求められるため、財務会計での決算書作成が必要となります。

作成目的に違いあり!

税務会計と財務会計は作成の目的が異なることにより大きな違いが生じます。

税務会計の目的は課税所得計算

税務会計は法人税を課税するための所得を計算することが目的であるため、費用を計上するにあたり、その費用が実現しているか、売上の獲得に貢献しているかという点が厳しく定められ、所得が少なく計上されることがないようになっています。なぜなら、法人税は所得金額に税率を掛けて計算するため、所得が少なく計上されると法人税額が少なくなってしまうからです。税務会計は、所得隠しなどを防止し、納税義務を適正に履行させるための計算に役立つものです。

財務会計の目的は財務状況の開示

一方で、財務会計の目的は企業の外部の人に財政状態、経営成績などの情報を提供することであるため、利益が過大に計上されることがないように厳しく定められています。費用は実現していなくても、将来発生する見込みが高ければ計上することが必要です。なぜなら、外部関係者に報告する利益が実際よりも大きくなっていると、外部利害関係者に誤った判断をさせてしまうからです。

財務の実態をよりシビアに表す財務会計

上場をしている会社は、会社と関係性の薄い多くの人がその会社の株式を売買します。そのため、会社の実態を適切に表すことが求められ、財務会計での決算書の作成が必要というわけです。

例えば、売掛金を有しているが相手先からの入金がなく、その後も入金される目途がたっていない場合、回収できないことが確定した訳ではないですが、財務会計では売掛金の全額もしくは一部を貸倒引当金として費用に計上しなければなりません。一方、税務会計の場合は、回収の有無はまだ確定していませんので、相手先が倒産状態にあるか等、定められた要件に該当しなければ費用を計上することは出来ません。

IPOを目指すうえでの課題は財務会計への移行

IPOを目指す会社の場合、上場前の2会計期間は監査法人の監査を受ける必要があります。この期間で上場会社と同様、財務会計での決算書が適切に作成されていることの意見をもらわなければなりません。上場準備期間に入る前は多くの会社で税務会計にて決算書を作成しています。そのため財務会計への修正が必要となり、この修正作業に膨大な時間と労力がかかるケースが多々あります。

早い段階での財務会計導入がおすすめ!

したがって、IPOを考えている会社へのおすすめは、上場準備期間に入る前から、出来るだけ財務会計にて決算書を作成しておくことです。財務会計を作成するのは大変ではありますが、一度税務会計で作っているものを直すよりは労力がかからずに済みます。また、財務会計のほうが会社の実態を表した決算書が出来るため、自社の正確な利益を把握することにも役立ちます。

財務会計での決算書の作成は専門知識が必要な分野です。IPOを考えている場合は、早い段階で専門家に一度相談してみてはいかがでしょうか。

岡野貴幸
ゴージュ株式会社 代表取締役
ゴージュ会計事務所 代表公認会計士

投稿者プロフィール
立教大学経済学部卒業。大学在学時に公認会計士試験に合格。
大学卒業後、あずさ監査法人国際部に入社。
上場企業の法定監査、国際会計基準導入支援業務を経験。

実家は埼玉県で3代続く税理士事務所を経営しているが、ゼロから立ち上げ新しい会計事務所の形を作りたいと一念発起し、2014年に独立。岡野公認会計士事務所(現、ゴージュ会計事務所)を設立。同時にコンサルティング会社であるゴージュ株式会社を設立。

成長する企業を会計面・資金調達面からサポートしたい想いから、スタートアップを中心にサービスを行っている。クラウドを駆使し徹底した経理の効率化、事業計画の作成、資金調達を得意とする。

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