ピンチをチャンスに変える事業承継(後編)”中小企業のM&Aは人材が命”
- 2020/12/16
- インタビュー
家業の危機と突然の社長交代、再建と異業種への事業買収、そしてリーマンショック……激動の経営者人生を送られてきた株式会社城南村田の青沼隆宏社長。前編「ピンチをチャンスに変える事業承継(前編)”異業種への進出”」では、周囲の援助も乏しい中、積極的なM&Aによって会社存続の危機を乗り越え、見事に事業リノベーションを成功させたお話しをしてくださいました。この後編では、コロナ禍での新たな挑戦と青沼社長にとってのM&Aについて伺います。
社会貢献を実感して従業員のモチベーションがアップ
Z-EN――今回のコロナ禍でも新たな取り組みをされていますね。
青沼隆宏氏(以下、青沼氏)――そうですね。弊社の技術を使って何ができるか?を考えていて、ちょうど医療機関でフェイスシールドが足りていないという報道があったので製作しました。
うちの機械設備がちょうどマッチしましたし、資材もあるもので作ることができたんです。
今までの経営者人生の中で、人に貢献したい、社会に何かお返しがしたいという気持ちを強く持っていましたので、フェイスシールドを医療、介護、手話通訳関係者、教育機関を中心に1万枚の予定で寄付することを決めました。
実際募集しましたら、1週間で1万7千件のお申し出を頂戴して、最終的には2万枚ほど配らせて頂きました。
正直利益には殆ど結びつかない取組でしたが、寄付した方々からのお礼の手紙やメールは、社員のやる気を奮い立たせて、本当に良い効果を生みました。
代表の私が言ってもここまでモチベーションは上がらなかったですね。
会社の収益的にはまだまだ、コロナ前の状況には程遠いですが、新しいことをやって喜ばれるのはやはり自信に繋がります。
事業承継は人事面での事業価値に注目!
――青沼さんはご自身の事業承継されたご経験を元に、講演などもされていらっしゃるようですね!
青沼氏――はい。中小機構さんなんかから取り上げてもらって、最近では長野や鳥取といった地方でもお話する機会を得ています。
5年前は会社再建というテーマで話してほしいという内容の依頼だったんですが、このところ事業承継の話をしてほしいと言われます。
――これから事業承継をしたいという事業投資家や経営者の方々に、ぜひアドバイスをお願いします。
青沼氏――そうですね。
中小企業は、仕事を仕組化せず書面化していないというケースが殆どではないでしょうか。
事業承継というと、みなさん数字で見える部分にフォーカスしがちなんですけど、中小企業にとってやはり一番大切なのは「仕組み」と「人」だなと思っています。
これは、数字にはなかなか表れない部分で、ここをしっかり見極めることが大事だと確信しています。
――人事DDが大切だということですね。
青沼氏――はい。
働いている人は自分の意志で退職できますので、承継する事業が一部の人に依存して成り立っていないか良く見た方がいいと思います。
営業的なことをすべて代表がやっているようなところも危ないですよね。
社内で事業を回している人がどのような技術を持っているか、会社の内部のことをちゃんとわかっていて、尚且つ承継後も残ってくれる意思があるか!これは本当に数字では見せないので、しっかり見極めた方がいい。
また自分が実務の中心になる場合(中小企業の場合はこのケースも多いと思います)は、技術面・人間関係の引継ぎが問題なく出来るかも要検討事項です。
M&Aは組織づくりが重要
――青沼さんはM&Aをどのようなものと捉えますか?
青沼氏――昔は事業をするということは0から立ち上げることでした。
でも今は、出来上がっている組織を買って事業をやるという選択肢がある。
M&Aは事業が一定の形でお膳立てされているものだから確かにやりやすいでしょう。
でもその反面、創業者に共感できる人をゼロから集めて作られた組織を承継するため、「人」の部分で難しさを感じることもあります。
そういった数字で見えないリスクもすべて理解したうえでM&Aを決めるのであれば、新しい市場や既存事業とのシナジーも期待できると思います!!