
企業の事業責任者のお立場から、赤字事業を引き受けて現在の会社、株式会社チームエルを立ち上げた代表取締役 堀越勝格氏。
前編となる「責任を負えない結果を招かないために誠心誠意のコンサルを!」では、起業後に事業を軌道に乗せるまでの葛藤と実践の軌跡や、責任が取れない責任を持つことの大切さを聞かせていただきました。
後編では、会員数を伸ばしている「会員システムCaSS」や組織づくり支援などについてもお話しいただき、将来の展望についても伺っています。
目次
会員システムCaSSを始動
――会員システムCaSSは資金繰りが安定したときに始めたんですか?会員3,000社とはすごいですね!
堀越氏――はい。「会員システムCaSS」を始めたのはその前後くらいからです。
創業当時は顧客数が40社程度で、1社平均月40万円くらいのコンサル料を頂いていました。
当初は、顧客が3,4社退会して1社入会してくるといった感じで安定しませんでした。
そこで、どうにか顧客を獲得しなければとアイディアを出すなかで思いついたのが、いわゆるナーチャリングビジネス※1を前提に月額数万円の会員制度を作ることです。
だけど、元いた会社のコンサルティング料金に対する考えが年間何百万円だとかなので、月額数千円?何それ?と思ってしまう感覚なんですよ。
社内からも、儲からない会員組織を作ってどうするのか?という声が上がりました。
でも、顧客の基盤を作るにはそれでいいんだ!と、そのチームのコンセプトと働きを称賛し続け3~4年の間は試行錯誤しました。
最初は価格帯も分からず月額1万円だったらお付き合いでの入会もあるだろうなんて感覚でいたら、全然集まらないんですよ。
むちゃくちゃ営業しても入らない。
金額設定はどこなのだろうと探っていった最後、この会員制度はマーケティングをする場所じゃなくて数を増やす場所であり儲けは目的じゃない、と気づき、思い切って月額980円にしました。
※1 ナーチャリングとは、実際に利用はしたことはないがサービスの存在は知っている潜在顧客(見込み客)をターゲットにしたマーケティング手法のこと。購入意欲を高め購入に繋げるため、メルマガやブログなどでアプローチする。
売るという呪縛から解放され初めてお客様目線に立てる
――思い切った低価格戦略に出ましたね!
堀越氏――成功したかどうかの判断基準は、このサービス安すぎるけど本当に大丈夫なの?と、怪しまれるくらい関心を持ってもらうこと。
それができたら勝ちだ!と、これを合言葉に広めていき、今までの対面での仕組をWebでできるセールスシステム組上げサービスに転換し創り上げていくと、980円ならばと、入会のお客様が増えていきました。
その後も月額980円ではあり得ないほどコンテンツを揃えていき注目されるようになると、自動車販売チェーン団体などからも提携話が入ってくるようになりました。
サービスはナーチャリングをベースとしていますので、月額980円の上位サービスに「カーリンク」という、月額49,800円の会員も募り、現在140社の会員がいます。
ここから顧客の規模や希望に合わせて月額10~20万円くらいのSV支援付きサービスを提供し、さらにそこから何割かのお客様が年間数百万円のコンサルティングを受けてくださるという構造を作っています。
顧客数が少ないとずっと一生懸命売り込みをして押し通すことになってしまうことを過去に経験しましたが、そうすると、どこかでお客様目線から外れて売上先行になってしまうんです。
私たちは会員サービスを構築して顧客数を増やせたことで、営業への圧を離れて、お客様の利益のために全力投球できるようになりました。
そのおかげで、営業といっても「顧客となる相手企業が業績を上げ、人を育てるために何ができるか?」ということに集中して考え、資料を作り、プレゼンするので、お客様に喜んでいただけるんです。
そうすると営業活動が楽しくなるんですね。
今では、会社全体に「営業はお客様に喜ばれる楽しいもの」という雰囲気が広がっています。
パートナーだからできる顧客の状況に見合ったコンサルティング
――お客様は本業ではどのようなことをされている方ですか?
堀越氏――多くは、自動車の販売店、リテーラーやディーラー、整備工場の方たちです。
――サービスの提供方法は、フランチャイズ本部の変型版のような感じですか?
堀越氏――顧客が経営環境の変化に柔軟に対応できるように様々なノウハウやサービスを提供したいと考えており、フランチャイズビジネスとは少し違います。
フランチャイズではなく、パートナー契約として行っていますので、商標利用は自由です。
そして新規の集客をするシステムではなく、パートナーとして営業プロセス改善や業務改善をコンサルティングすることでお客様とともに収益を向上させていこうというものです。
さらに、業界特化のコンサルなので、お客様の課題や提案できるソリューションも重なる部分が多く、廉価版にでき大量生産ができるんです。
コンテンツには妥協しませんので、こちらからの発信内容や、全体に対しての研修やセミナーなどを活用して頂ければ、感度のいい人にとっては十分使えるサービスです。
さらに、もう少し一気に収益向上を目指したいからお金を使ってもいいという方向けのコンサルティングや、逆に経営状態が悪い方向けのサービスなど、状況に合わせて選んでもらえるように、パッケージングを構成し直しました。
過去にコンサルティング料金月額30~40万円だったときに退会していったお客様が、嬉しいことに半分ほども戻ってきてくれたんです。
――素晴らしいですね!普通抜けるともう戻ってこないものですが。
堀越氏――会員の方々のお客様への接客成功体験をまとめた栞を作成しているんです。
体験談がどんどん増えていき内容も充実したものなので、理想のカスタマーエクスペリエンスを実現しているパートナーさんが増えてきているのを感じます。
成功要因は理念とビジョンに共感してもらえたこと
――サービスがここまでお客様に受け入れられ、お客様自身の利益を伸ばしている成功要因はどこにあると思われますか?
堀越氏――成功要因として大きいのは、理念やビジョンにあると思っています。
理念がないと、ただ儲けるために集まった集団になってしまうんです。
理念やビジョンがあると、これに共感したスタッフが共に頑張ってくれるんですよ。
理念や行動指針を作るために、星野リゾートさんなどを参考に研究しました。
そこから、カーリンク理念、カーリンク5つの行動指針を作り、パートナーである顧客に浸透させるために、この行動指針に沿ったエピソードをアップしてもらい、それを本部で半年に一回選定し表彰して栞本として編纂しています。
長期的な視点が大切
――何かエピソードがあれば教えてください。
堀越氏――例えば、車に乗り続けることをご不安に感じているご家族がいらっしゃるご高齢のお客様の車購入に際して、販売店側がお客様のお住まいの地域で車を所有せずに過ごせるサービスや交通手段を調べてお知らせしてあげることです。
結果として車を購入していただける機会は失ってしまいますが、ご家族から信頼と感謝を寄せて頂けたので、このような例などを栞本に載せています。
その一時だけを見れば機会損失ですが、口コミで地域での評判があがり、最終的に多くのお客様の獲得に繋がることを大事にしています。
――フランチャイズ本部を作りたいと思っている方にもよい事例だと思います。緩やかな繋がりのなかで、お互いにとって利点の高い部分だけ共有するような新しい形は、多くの方の参考になると思います。
堀越氏――私たちは、パートナーさんにはノウハウをすべてオープンにしています。
ギブ&ギブを徹底して無料セミナーも開催し、包み隠さずノウハウを話すことで少しずつでも使ってもらって広まっていけば、お客様が本気でコンサルティングを入れようと意思決定されたときには選んでいただける、そう信じて目先の利益だけに囚われないようにしたいと思っています。
組織作りへの支援も
――サービス提供のなかで採用支援もされているそうですね。
堀越氏――はい。自動車販売で伸ばしていく時には、やはり組織作りが大切です。
よく、人が育たないという相談を受けますが、採用時から間違っていることも多いのです。
母集団を増やしていっぱい採りましょうという支援ではなく、どんな人を採るかというところから組織作りが始めっていることをお伝えしています。
ベースにあるのが、経営プラットフォームと呼んでいるんですが、最上位に経営理念があって、この経営理念を実現できる人材、100%理想の人材像をブレイクダウンしていき、そこに近づけるようにするのが評価制度であると言っています。
展望と未来予想図
――重要指数は規模拡大になるのでしょうか?
堀越氏――それでいうと、重要指数は基盤数顧客の数です。
これが起点になります。
自動車販売のマーケット自体はこれから縮小に入ってきますので、拡大戦略というよりも顧客サービスの質を上げ離脱を防ぎ、生き抜く手法を学び、勝ち残ることが戦略になるでしょう。
私自身も拡大が必要なのだろうか?と悩んだ時期もあったのですが、結論としてはあたりまえかもしれませんが、お客様から求められ自然のペースで広がっていくのが正なんだと思っています。
それがないなら、価値を認められていないのだと受け止めるべきですね。
――今後の未来予測 今後目指される方向についてお尋ねさせてください。
堀越氏――実は、デリバリービジネスをやりたいと思っているんです。
業界の今後10年のコンセプトはコミュニティ作りだと思っています。
その場所へお客様が向かうのは、車を買ったり修理しに行ったりすることだけじゃない。
別の目的でも向かうんです。
それは、生活や趣味と連動していくものになると思っています。
生活必需品がキーワードなので米やパンなどなんでもいいんですけど、それを逆にこちらからも地域のお客様にデリバリーしに行く。
お客様に来てもらうことと、会いに行くことの双方からのアプローチがあって、我々の場所が、昔の集会場みたいな地域の憩いの場になるといいと考えています。
それに、集客機能だけではないコミュニティ機能を創っていくことは楽しいはずなんです。
例えば、それが従業員の趣味と連動していたりすると、その従業員にはサービスを売るという以外のモチベ―ションが生まれますよね。
そんなふうに、皆が生き生きと働ける環境を整えていければと思っています。
――本日はありがとうございました!
本稿「事業理念への共感とコミュニティ作りが成功へのカギ」は後編です。
前編は「責任を負えない結果を招かないために誠心誠意のコンサルを!」でご覧ください。