FC成功の秘訣は加盟店との距離感にあり!(後編)

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前回のインタビュー記事「小資本でもフランチャイズ本部はつくれる!」では、V&Mパートナーズ㈱宮嵜太郎みやざきたろうさんに、豆腐移動販売事業 ㈱豆吉郎をゼロから立ち上げFC本部に成長させたのち、事業売却したご経験を語っていただきました。本稿はその続きとなる後編。FC事業の売却の極意と、宮嵜さん自身が経験から学んだことをお話しくださいます。

会社を売るということ

Z-EN――そもそも、伸びていたのにどうして売却しようと思ったんですか。

宮嵜太郎氏(以下、宮嵜氏)――もともと、買う側としてM&Aを覚え、食品関連などの企業を買っていました。
そのうち、大手コンビニや商社から第三者割当で資金を投入してくれるという話があったんです。
世間に認められた気がしてすごく嬉しかったんですが、よく考えたら会社にお金が入るだけで、増資額次第では雇われ社長みたいになって自由にできない。
しかもFC本部事業は大きなお金が必要でもない。

ただそこで、会社って売れるんだ!と意識しだしたのが始まりです。

創業当初からずっと同じ会社をやるという考えがなかったことも理由の一つです。

――何社くらい候補先はあったのでしょうか。

宮嵜氏――現在はコロナの影響からか、売手と買手が半々の感覚ですが、僕が会社を売り始めた4年前は、売手1に対し買手9くらいの割合でした。
移動販売はいろいろな業種と相性がよく、実際かなり多くが譲受先として手を挙げてくださいました。

100社以上はあったかと思います。

――それはすごい!どんな業種の企業だったのですか。

宮嵜氏――商社だったり、自社商品を直接売りたい食品メーカーだったり。
別の事業展開をしたい不動産屋さんなどもいましたね。

クロージングまでの期間

――売りたいと思ってからクロージングまでどのくらいの期間があったのですか。

宮嵜氏――ちょうど1年です。

――平均的な期間ですね。

宮嵜氏――最初の半年間に、大手外食チェーンとの話が進んでいたのですが、契約前日に社長がインフルエンザになったことをきっかけに話が進まなくなって流れたんです。
あの時は落ち込みました。

売却にはとてもパワーが必要でした。
あまり年を取ってから会社を継がせたり売却したりするのは大変だと痛感し、早めにやった方がいいと心の底から思いましたね。
結婚(起業)より離婚(売却)の方がパワーが必要なのと一緒だと思います。

FC加盟店が事業を売却する場合

――なるほど。それは我々にとってもよい教訓になります。FC加盟店側が事業を売却する時に気を配ることはありますか?

宮嵜氏――FC加盟店の場合、本部との契約次第でそもそも売却できるのか?また、指定の売り先(本部指定など)が決められていないか?などによって売り方も変わってきてしまうので、その辺はしっかり下調べされた方がいいと思います。
結局、会社のゴールって2つしかなくて、売るか解散するか(つぶれるか)じゃないですか。
IPOっていう手法もありますが、あくまでも資金調達の1つでゴールではない。
そこはしっかり意識していないと、最終的に本部に買い叩かれてしまいます。

本部としても、信頼した方と契約して加盟店オーナーをやってもらっているのに、その加盟店さんが知らない人、変な人にいきなり売却されたらすごく困る。
よって、一旦本部が買い取って、本部で新たに新オーナーさんを探す仕組みを豆吉郎でも採用していました。
多くのFC本部も同じだと思います。

本部と加盟店の距離感が善し悪しを左右する

――本部から見て加盟店って千差万別だと思いますが、その善し悪しは何処で判断するんですか。

宮嵜氏――本部として一番難しいのは、加盟店との距離感です。

加盟店は本部から品物やサービスを買っているので、見方によっては業者とお客さんの関係です。
でも、本部からすると、加盟店さんはお客さんではあるけど、一般の消費者のように、ただ「ありがとうございます。」と言っていたら、加盟店も俺たち客だろう!という意識になり言うことを聞いてくれなくなります。
だからと言って本部が言うこと聞けと上から目線になっては関係は破綻します。

あくまでも対等なパートナーとしての距離を保ち、決まりはしっかり守ってもらう。
実はそれが本部として一番神経を使いストレスになっているところです。

――本部の社長は大変だと思います。意見を聞いてまとめることも難しいでしょうね。

宮嵜氏――そうですね。
意見を言ってくれるのはありがたいんです。
ただ、それを全部聞いて取り入れることはできないので、採用するかどうかの加減のバランスは難しいですね。

僕たちの例で言うとはあくまで「豆腐屋さん」としてやっていたので、当時の150アイテムはかなりの品揃えに映っていたと思います。
それを「移動スーパー」にしましょう!との加盟店からの話があったのですが、それでは品揃えのいい豆腐屋さんから品揃えが少ないスーパーになり下がってしまう。
加盟店の意見を参考に、試験的に商品を入れるなどはやっていましたが、譲れない部分は話し合いの中で納得してもらうしかないですね。

▶会社や事業の売却、FC本部と加盟店の距離感など、さまざまな困難を経た宮嵜さんが描く投資の未来像を次のページでお届けします!FC投資成功の秘訣も語ってくださいます。

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宮嵜 太郎(みやざきたろう)
V&Mパートナーズ㈱ 代表取締役社長

投稿者プロフィール
1980年生まれ福岡県出身。高校中退後、京都と東京で造園業や訪問販売会社への勤務を経て、24歳の時に起業。5社の新会社設立と約12の新規事業を手掛けるが、経験不足などで多くの失敗を経験する。
その後すぐに、豆腐の移動販売会社(株)豆吉郎を10万円の開業資金にて創業。限られた資金のなかでフランチャイズモデルを確立し、全国に展開。約700名と契約し、全国最大の移動販売組織を構築した。12年間運営した後、36歳の時に西日本新聞社に全株式を売却。

その後、都内のベンチャーキャピタル企業への勤務を経て、V&Mパートナーズ を設立。ベンチャー投資、M&A支援、FC本部設立支援業務を行う。
著書に「元手10万円で100億円の売上をつくった 事業のコピペ術~フランチャイズ本部のつくり方」がある。
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