創業270年の老舗石材店は、なぜ変革を成功させ売上向上できたのか?(前編)

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少子化や家族のあり方、住まい方などの変化を受け、2000年代はじめをピークにお墓(墓石)の需要が減少し、大きな転換点を迎えている石材業界。
茨城県常総市で江戸時代から270年続く有限会社 山崎石材店の13代目山崎哲男氏は、右肩下がりの業界において、IT活用による顧客情報管理で売上向上に成功。
さらに、お客様のニーズに応えるかたちで樹木葬を提案するなど、新たな取り組みに挑戦し、お客様やお寺と向き合い続ける石材店の変革のあり方などについてのお考えを詳しくお話くださいました。

茨城で270年続く石材店の13代目

Z-EN――江戸時代から270年続く石材店の13代目ということですが、小さい頃から承継しようと決めていたのですか?

山崎哲男氏(以下、山崎氏)――小さい頃は自分が継ぐと信じて疑わなかったのですが、高校生になると友人たちから「家の仕事をするの?」と聞かれ、初めて疑問が湧きました(笑)。
先代の父は、私に承継を強制しなかったので、じゃあ、やりたいことをやろうと、大学時代には当時関心があった世界の貧困や環境などの問題に取り組むNGOの活動に熱心に参加していました。
ですが、人間力というか、徳の高い人でなければできない仕事だということが分かり、断念することになるんですけどね。

卒業後は、中間支援組織のNPOに就職しました。NPOを支援するNPOという位置づけで行政や地域、企業など多様な関係性を取り持つ役割を果たします。
国の予算がNPOに効果的に配分されるような助言や研究会の事務局の仕事を担当していました。
全国のNPOに対して電話やメールで情報発信をしているうちに、中央にいる私がだんだん“先生”のような立場になったのですが、それがこそばゆくて(笑)。
やはり、直接お客様と会う仕事がしたい、お客様の顔が見える関係で仕事ができるほうが自分には合っていると思い、修業をして家業に入ることを決意しました。

承継前には石工の修業

――石材店さんにとって、修業は一般的だそうですね。

山崎氏――時代によってニーズや技術は変わるので、基本的に修業はしますね。
一流の石工を目指すなら、中学や高校卒業後に愛知県岡崎市にある専門の学校に入って一通りの技能を覚えるのが、少し前の石屋の息子の当たり前でした。
でも、父は経営の難しさを理解していて、石工としての技術も大事だけれど、経営や接客についてより多く学んでほしいという考えでした。
そこで当時、茨城県内でトップクラスのひたちなか市にある清水石材工業さんの下で1年修業することになるのです。
ところが、修業で新しいことを学んで家に戻ると、仕事のやり方の違いなどを巡って、父とよく喧嘩になりました(笑)。

関係変化のきっかけは、東日本大震災でした。お墓にも多大な被害が出たことで店に電話が殺到し、対応に追われるなか間もなく、父から「お前がやれ」と言い渡されるのです。
その後、一緒に仕事を続けながら徐々に株式移譲などをしていき、今は完全に承継が終わった状態です。

画像はHPより

――無事に承継が終わられたのですね。創業から270年という歴史の重みは感じなかったですか?

山崎氏――私自身は特に感じていないです。子どもたちには、継いでもいいと思ってもらえるように、会社の価値を高めておこうと考えていますが、実際には本人の判断に任せるつもりです。

ITを活用し、顧客管理システム導入

――御社は多角的に事業を展開していますが社員は4人と少数精鋭ですね。承継後の早い段階からITを積極的に活用されていますが、きっかけは何かありましたか。

山崎氏――IT分野は子どものころから興味がありましたね。小学生の頃、ファミリーベーシックというファミコン上でBASIC言語のゲーム作成ができる子ども向けパソコンでプログラムを作ったりすることが好きでした。
家業に入って真っ先に取り組んだのが顧客データベースの構築です。

私の声が父とそっくりなので、昔からのお客様の電話を受けると父だと思われて、私が分からない話をひとしきりされるんです(笑)。
父は社長をしていた30年間で約2,000件のお墓を建てた実績がありましたが、残っていた顧客情報はメモ程度。そのため、私や従業員は一生懸命話してくださるお客様の背景や潜在ニーズが分からず、的確な対応をできずにいました。

これを整理しようと顧客データベースを構築し、受信時にお客さまの名前、お墓の写真と対応履歴が表示されるCTIシステムを開発したのです。
これにより、電話が鳴った時に「○○様、山崎石材店でございます。」と電話応対できるようになりました。
五つ星ホテルに泊まったときに、フロントに電話すると名前で応答してくれるサービスに感動したことがきっかけで、自分たちで一から作り上げました。

――素晴らしいですね!顧客管理システムの導入で売上向上にも成功されたそうですね。

山崎氏――はい。7万件に及ぶ過去実績データを元に、CADソフトを活用したコンサルティングを行い、お客様の悩みや不安を払拭できたことで顧客満足度が90%を超える高い水準に達しました。
また、従来は現地の下見や検収への帯同で長い時間を要していましたが、社内SNSを活用してGPSで墓地の位置情報を共有することで時間もコストも大幅に削減され、さらにコミュニケーションも円滑になりました。

その後も、さまざまな現場でITを活用したことで、5年後には売上が1.7倍、顧客数は2倍になるという成果が得られ、2016年には経産省の「攻めのIT経営中小企業百選」に選ばれました。
業績の上昇に合わせて従業員を増やし、現在は4人になっています。

画像は山崎石材店提供

▶先代まで続いた仕事とお客様との関係を、現代に、そして未来にわたって継続できるようITを活用して大革を進めた山崎さん。業界の動向を見つめながら、13代目として新たなチャレンジに取り組みます。

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山崎哲男
有限会社山崎石材店 代表取締役

投稿者プロフィール
茨城県常総市生まれ。
大学卒業後、都内のNPO勤務を経て、有限会社山崎石材店に入社。
2011年頃より、家業を継承し13代目に。
「過去の常識に縛られることなく新しい時代をつくる」ことを使命とし、歴史と伝統を尊重しながらも、新しいあり方の模索とチャレンジを重ねる。
社内業務にITシステムを導入し、2016年には経産省「攻めのIT経営中小企業百選」に選出される。
2019年から「樹木葬」を始める。
永代供養コーディネーター/樹木葬プロデューサー/海洋散骨シニアアドバイザー/お墓ディレクター/墓地管理士/相続コンサルタント

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