2017年以降M&A買収した経営者に「事業承継・引継ぎ補助金」を!

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今年も中小企業庁事業となるM&A補助金こと「事業承継・引継ぎ補助金」の募集が始まります。

本記事は、2017年4月以降にM&A買収した企業経営者が知っておきたい、新事業展開時に活用できる補助金「事業承継・引継ぎ補助金」の解説です。ナビゲーターは中小企業診断士でM&Aアドバイザーの白石直之さん。2020年の申請時には関わった10件の申請をすべて採択に導いたご実績から、採択されるためのポイントを解説してくださいます。

「事業承継・引継ぎ補助金 経営革新コース」とは?

M&A実施後に、承継者が新事業(経営革新)を行う場合に人件費や、設備費などを幅広く支援する補助金です。

※類型は2つ【経営革新コース】と【専門家活用コース】がありますが、ここでは、【経営革新コース】を取り上げてご紹介します。

補助対象者は2017年以降のM&A実施企業

対象は、これからM&Aを行う事業者ではなく、2017年4月以降にM&Aを実施し、以下の要件を満たした、中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む。)になります。

①従業員1名以上引継ぎ、社会性が説明できる事業
(社会性については、文章の書き方によるところが大きいです。)
②経営革新要件:次の要件Aもしくは要件Bを満たすこと

要件A:事業展開等要件

    次の2点を満たすこと

  • 以下のいずれかの内容を伴う事業計画
    ア)新商品の開発又は生産
    イ)新役務の開発又は提供
    ウ)事業転換による新分野への進出
  • 事務局が定める期間において従業員数を 1 名以上増加させる計画

要件B:生産性向上要件

  •  承継者が 2017 年 4 月 1 日以降から交付申請日までの間に本補助事業において申請を行う事業と同一の内容で「先端設備等導入計画」又は「経営革新計画」いずれかの認定を受けていること。

補助対象経費

これから行う新しい事業の展開のために必要となる以下の経費が対象です。

  1. 経営革新等の事業での人件費、外注費、設備費、旅費など
  2. 廃業する場合、廃業に係る解体費、原状回復費
  3. 専門家フィーと言われる、M&Aアドバイザーフィー、会計士や弁護士のデューデリジェンス費用、マッチングサイト利用料など

補助額

補助額は経費の2/3、上限は800万円(廃業する場合は上限は1000万円)
*補助には審査があります。過去に支払った分は対象になりません。

本補助金は、これから2次申請が始まる再構築補助金などと比べても、とても通りやすいと言われる補助金です。採択の可否の分かれ道は事業計画をしっかりと作り込めるかに掛かっていますが、引継ぐ従業員が1名以上いることが必要条件になると予測されます。

事業承継・M&Aを契機として事業モデルの転換や新規ビジネスへの挑戦を行い、更なる拡大を目指す買い手経営者にとって、新規ビジネス展開に欠かせない人材補充のための人件費も対象経費に含まれる本補助金は、大変使いやすいと考えます。

本事業のスケジュールについて

中小企業庁発表資料より Z-EN編集部作成

補助金が採択されるための事業計画作成ポイント

補助金申請書は、補助金の趣旨に沿っていることはもちろん、審査員が読みやすい形で作成する必要があります。本補助金の申請書作成のポイントをご説明します。

補助金の主な趣旨は、社長が高齢になったことを理由に廃業や事業縮小をせざるを得なかった企業をM&Aで救済することで、社員の雇用を守り、地域企業との取引を継続することができた承継者の新たな事業を支援することです。よって、実施したM&Aによりどのような問題解決がなされたか、社会的意義も含めてストーリーを組み立て、今後の成長戦力もしっかり説明する必要があります。

具体的な作成ポイントとして、次のことを明記しましょう。

①従業員の雇用確保

M&Aを進めることで、従業員の雇用が守られることを明記しましょう。パートやアルバイト社員であっても、解雇通知が必要なため従業員とカウントされます。パートも正社員も「従業員」と記載しましょう。

*従業員の定義について、中小企業庁HP FAQ・相談事例のQ3をご参照ください。

②地域経済の損失回避

廃業もしくは事業縮小では、それまでの仕入・販売先企業との取引が終了もしくは減少してしまうところ、M&A実施によって取引が継続され、結果地域経済の損失を回避できることを説明しましょう。特に、今までの取引関係が他地域の大手企業などではカバーできない理由を説明できると説得力が増します。

③新商品/新役務/新分野を行う実現可能性

本当にこの計画が実現可能なものなのか、審査員は主に以下のポイントを見ています。申請するときには、しっかりと回答できているかチェックしてください。

  • ターゲットは明確か
  • ターゲットのニーズに合っているか
  • ターゲットへのアプローチは具体的でイメージが湧くものか
  • 商品サービスの特徴、他社との差別化
  • 適切な価格で提供が可能か
  • 承継者の強みを活かせているか

事業承継・M&A後の事業躍進を前向きに取り組む経営者のみなさまの一助となりますと幸いです。

参考:令和2年度第3次補正予算 中小企業庁事業 事業承継・引継ぎ補助金

白石 直之
株式会社つながりバンク
シニアM&Aアドバイザー 中小企業診断士
日本外部承継診断協会/理事

投稿者プロフィール
2005年早稲田大学卒業後、世界最大の半導体マイコンメーカーの戦略企画部にて製品企画に従事。
2016年、中小企業診断士登録。再生案件に従事して、2017年より株式会社つながりバンクと協業開始し正式入社へ。
現在は年間約10件もの成約をこなしながら経験を積む。

得意分野は、障害福祉・パチンコ店・宗教法人。争う相続問題の1つである、少数株主の買取サービスも行う。
MDRTなど保険パーソン向けセミナー、横浜青年会議所でのセミナーなど講師経験も。

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