成功しているスモールМ&A投資家の行動パターン

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前回、サラリーマンのM&Aによる起業について解説しました。少し興味が湧いてきましたか……?
では、スモールM&Aを成功している人たちは一体どのようにして成功しているのでしょうか。身近にあったケースもあわせてお伝えしていきましょう。

M&A熟練者は、赤字会社も投資対象に加える

株やFX等の金融商品投資をしている方なら、ブル(雄牛)・ベア(熊)という言葉を聞いたことがあるかもしれません。ブルは牛の角が上を向いていることがその語源で、相場上昇時に利益を狙うポジション。ベアは、熊が上から下へ手をかくことが語源で、相場下落時に利益を狙うポジションです。多くの投資家はブル型でしょう。

M&Aの世界も同様です。一般的に財務が安定していて、業績も良い会社に買い手は集中します。これがブル型です。
一方、M&Aに慣れてきた投資家は、業績が低迷、もしくは企業価値が下落している赤字会社も対象に加えます。当然リスクもありますが、リターンはそれに比して大きくなります。表現は適切でないかもしれませんが、スモールM&Aのベア型投資家です。日本の企業は7割が赤字と言われているので、実は市場は大きく競合も少ないのです。

不動産や金融商品の投資と単純比較できませんが、事業投資はROI(投資利益率=利益/投資額)20~30%以上を狙いたいところです。ハードルが高いと感じるかもしれませんが、そもそも事業が成り立たないリスクがあります。対象事業が3年後に平均で3割程度が失敗するとすれば、その比率を掛けなくはいけません。この確率は、投資する側の資質・やる気・経験値で上下変動します。

ある程度回収した後に、Re(再び)Sale(売る)することが可能です。ただし、売れやすい事業には特徴があります。
まずは毎月安定的に収入が入る「ストック型」がその典型です。月額利用料が入る賃貸収入事業、レンタル事業、通信販売の定期購買などです。
また、技術、人、顧客、資格、許認可、業歴、営業力、革新性などの優位性・特徴を分かりやすく、シンプルに伝えられる事業も好まれます。

事業は、数字の前に感性で判断されることも多く、重要なポイントです。ビジネスが「仕組み化」できている会社も好まれます。

最も重要なのは「ビジネス」「事業性」を見抜く力

審査はだいぶ緩くなったと聞きますが、「信用取引」の口座を開設するためには、投資家としての適性・知識・経験・資産状況などがそれなりに厳しく問われていました。

スモールM&Aにおいても同様で、経営に関する基礎的な知識は身につけておく必要があります。とはいえ、財務・税務・法務など詳細な実務に踏み込む必要はありません。専門家を使う能力を磨く方が近道です。

専門家に依頼しづらいのは「ビジネス」、「事業性」を見抜く力で、スモールM&A投資家として最も重要な適性となります。М&Aの失敗事例をみても、財務や法務のデューデリジェンス(調査)よりも、ビジネスの本質を見抜けなかったことによる失敗が意外に多いのが現実です。

効率のよいM&A

知人の社長でスモールM&Aを活用し成功した事例を紹介しましょう。
最初のスタートは老舗小料理屋の買取りでした。その後、2年程度で売却。その資金を元手に郊外の赤字ホテルを買収。見事に黒字化して、すぐに売却。
同じ手法で都心のビジネスホテルを買収、多店舗展開し、FC化した方がいます。仮にゼロから飲食店・ホテルを立ち上げていったら成功できたでしょうか。その可能性は否定しませんが、何倍もの「時間」がかかったはずです。

不動産や株で成功された方が、事業分野に興味を持たれるケースが増えてきています。正直、投資リターンの予測がしづらく、予定外のトラブルが起きることもあります。
それでも、参入者が増えているのは、恐らく自ら手が下せるワクワク感があるからだと思います。

表現を変えれば、スモールM&Aの成否、投資リターンは投資する側次第とも言えます。日本人の寿命は延びましたが、事業系の経営者として旬な時期はそれほど長くはありません。時間と経験を買うという意味でも、スモールM&Aは成功への近道と感じています。

齋藤 由紀夫の過去記事はこちら

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表

投稿者プロフィール
株式会社つながりバンク 代表。
オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。
スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士、日本外部承継診断協会 顧問。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

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