凄い脅し文句…弁護士法人ミネルヴァの破産が完全にウシジマくんの世界観

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かなり気になるこのニュース。みなさんの記憶にもまだ新しいのではないでしょうか。

過払い金やB型肝炎給付金請求CMでお馴染みの弁護士法人、ミネルヴァ法律事務所が負債総額51億円で破産したという…51億円って。結構無理しないといかない金額です。

じゃがりこ通貨(100円/個)に換算すると、5100万じゃがりこですよ。1日1個じゃがりこ食べるとしたら、14万年かかる凄さです(こんな例えを出さずとも、51億の凄さはわかると思いますが)。

ミネルヴァに一体何が…?

浅く考えると、「まあ、CM打ち過ぎたのかな。」ってそのくらいですよね。つい最近も、TVでミネルヴァのCMを見て「過払い金請求まだやってんだ~」って思ったんですよね。

あ、「過払い金って何やねん」という方!私、頑張ってこのあとの「過払い金って何?」にまとめましたので、もしよかったらご一読ください。

子供に「過払い金って何?」と聞かれても、ちゃんと答えられるようになります。

で、ミネルヴァの破産は、確かにCMが原因ではあったのですが、それに関連した物凄い深い事情というか、闇があったことがわかりました。

過払い金CMの大手弁護士法人「東京ミネルヴァ」破産の底知れぬ闇

注目は記事の中に出てくる武富士支店長も務めたことがあるという黒幕の殿方のメールによるプレッシャーのかけ方。

【メールの再現】

凄い圧です。これ、流行らせていいですか。

闇金ウシジマくんとかナニワ金融道とかミナミの帝王とかに出てくる怖い人がやりそうな感じですね。煽りメールですね。

御返事 お待ちしております。

やるって言いましたよね。

善管注意義務って知ってます?

うむ、結構いろいろ展開できそうですね(最後の二つは実際言われたことある言葉)。

過払い金って何?

では、ここから「過払い金」について解説します。長くなるため、興味がない方はここまででフィニッシュしてください。がしかし、読んで損はないと思います。

過払い金は、読んで字の如く「払い過ぎたお金」です。誰が誰に払い過ぎたお金かと言うと、お金を借りた人が、お金を貸してくれた相手にです。お金を返す時には、「借りていたそもそもの金額」に「利息を乗っけて」返すのですが、その利息分を払い過ぎていたという。2006年12月の貸金業法の改正によるグレーゾーン金利の撤廃で、この「過払い金」という概念が生まれました。

貸金業法の改正、グレーゾーン金利とは?

繰り返しになりますが、借金の返済時には貸してくれた相手に相当分の利息を払うのが一般的です。で、この利息、貸金業者が暴利をむさぼることのないよう、法律で上限が決められています。ただ、ややこしいことに、この利息の上限を決めている法律が、昔は二つ存在していました。

※図はZ-EN編集部作成

ちなみに利息制限法の上限の20%を超えた利息にしても、29.2%以下であれば、罰則は一切ありませんでした。この曖昧模糊とした20~29.2%の幅のことを「グレーゾーン金利」と言います。違法ではあるものの刑事罰がないから、まさにグレーな感じですね。

さて、ここで突然ですが質問です。このようなグレーゾーン金利が許されている状態で、もしあなたがやり手の金貸しなら、ナンボの利息で相手にお金を貸しますか?

20%を超えても罰則規定がないなら、貸す側としてはより高い利息で貸した方が儲かります。というわけで、ほとんどの業者は20%ちょっきりではなく、20~29.2%の間の利息で普通にお金を貸していました。借りる時に「この金利で文句ないよね?」という契約書を結んでいたらOKという大人の常識(暗黙のルール)があったのです。

ところがどっこい、2006年12月に貸金業法が改正され、2010年6月に完全施行されることになりました。そう、20%以上の利息で貸し付ける行為は、明確にブラックになったのです。さらに話はそれだけでは終わりませんでした。

過去に遡って過払い金請求OK!

2010年6月以降に法律に従っていこう!というのではなく、なんと、法律施行前に払い終わった利息分について、「過払いした分を返せ!」という、過去に遡っての「過払い金請求訴訟」祭りがあっちゃこっちゃで繰り広げられることになったのです。

つまり、2010年以前にグレーゾーン金利でお金を借りていた人々による「今振り返ると払い過ぎだよねーという利息分」を取り返すための訴訟が活発化したのです。きっと皆さんもCMやなんかで、一度や二度見たことがあると思います。今回のミネルヴァとか、アディーレ法律事務所とかがその波に乗りました。

武富士の破産も過払い金請求が原因

ちなみに、レオタード女子たちの「武富士ダンスCM」でお馴染みの武富士が倒産したのも、なんとこの過払い金請求が原因とされています。2010年9月に会社更生法の適用を申請した時には、過払い額はなんと2兆4000億円にも達していたそうです。物凄い額です。

「ありえないはありえない」(byハガレン)

グレーゾーン金利の撤廃と過払い金返還の話は、貸す側からしたら、「そりゃもう~ありえない!」そんなような話でした。金利をいくらにするかは、貸し手と借り手の間の契約事項です。出資法の上限以下であれば、双方で合意があれば問題ないという法学者の見解もありました。

がしかし、当時、サラ金業者の高利と取り立てがあまりにひどく社会問題化していたこと(まさにミナミの帝王、ウシジマくん)、さらに、2006年1月に最高裁で利息制限法で定められた法定金利を超えた分の利息支払いは、過払い金請求ができるという判例が出たところから、潮目が一気に変わったのです。

この最高裁判決を受けて、金融庁からは返還請求があった場合には応じなさい、返還請求に備えて引当金を積みなさいというお達しも出されました。

例えるなら100円で売られていたコーラが「100円は安過ぎたから110円に値上げしよう」となった際、過去買った分についても遡って10円を払ってくれと購入者に請求してもOK!という感じです(だいぶ飛躍している例え話なので注意)。

色んな見方がありますが、結構凄い話ではありますね。

ミネルヴァ法律事務所はその過払い金請求の訴訟での手数料ビジネスに、グイグイ食い込んでいった結果、自身が借金で破綻してしまったのです。何だか皮肉なものですね。

以上です。

出典:いけのり通信「凄い脅し文句…『一蓮托生よろしくお願いいたします』弁護士法人ミネルヴァの破産が完全にウシジマくんの世界観」

この記事は掲載元のいけのり通信と著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

いけのり

投稿者プロフィール
秋田県生まれ。 一橋大学商学部卒業後、金融会社を経てIT企業へ入社。2011年諸行無常を感じて独立。ライター・編集者として活動。
「真っ黒なニュースを虹色に解説」をモットーに、勝手気ままなコラムサイト「いけのり通信」を更新するのがライフワーク。

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