「見える化」した経営資源の「磨き上げ」で外部事業承継を適正に進めよう

企業の資産とは財務諸表だけではありません。多くの企業資産をいかに“見える化”することが重要なのか、日本最古の経営コンサルタント団体理事の稲葉先生にお話をうかがいました。

稲葉先生:今回は、円滑かつ納得性のある外部事業承継を進めるため、現在の「企業価値を棚卸」して、必要に応じ「磨き上げ」の道筋を立てる事ができる「企業資産の見える化」をご紹介いたします。

企業資産の見える化で自社の現状を客観的に把握する

外部事業承継において、買い手企業の求めるメリットは「買収による事業拡大」にあります。新規事業をゼロから立ち上げるには困難が伴いますが、外部事業承継によってヒト・モノ・ノウハウを獲得すれば、タイムロスなく、また低いリスクで新規の事業展開を行うことができます。

当然、その目的のために買い手は売り手の価値を複数の角度から評価して、より魅力的な企業を探し求めています。逆に考えれば、買い手にとって魅力的な事業内容であることが、売り手企業の必要要件なのです。

外部事業承継後も、当該事業を維持・成長させるための「競争力の源泉」の視点で、改めて自社の資産を棚卸して見つめ直すことによって、自社の売却にあたって買い手にアピールする強みと、事前に手当てしておくべき弱みが明らかになり、外部事業承継をスムーズに進めることができるのです。
そのための手法が、企業資産の見える化です。売り手が自社の資産を正確に「見える化」しておくことは、Win-Winの幸せな外部事業承継を実現するためにきわめて重要です。

定量価値の見える化に有効な経産省「ローカルベンチマーク」

見える化の実施に有効なツールとして、経済産業省が提供する「ローカルベンチマーク」があります。

企業診断用に作成されており、「財務」「非財務」それぞれに用意されたExcelシートに記入することによって、自社の客観的な立ち位置を把握することができます。

引用:経済産業省「ローカルベンチマークについて」

「財務分析シート」は、入力と結果の二つのシートからなり、「入力シート」に必要な情報を入力・選択すると、「結果シート」に売上持続性、収益性、健全性など6つの指標が計算され、同業種の実績データと比較した結果で点数化され表示されるようになっています。この「財務分析」は、相対的に自社の立ち位置を把握でき、定量価値の見える化に大変有効です。

ローカルベンチマークは、実際のツールと利用マニュアルを経産省のホームページからダウンロードすることができます。最低限の手間で導入でき、的確な見える化を実現する、便利な経営分析ツールといえるでしょう。

外部事業承継を検討している企業には、これを一つ目のツールとして自社の現状を把握することをおすすめします。

定性的なヒト、組織、ノウハウを「見える化」する
「事業価値を高める経営レポート」

二つ目のツールとして「事業価値を高める経営レポート」を紹介します。

外部事業承継にあたって、最も基本的なものは財務諸表ですが、実際の企業にはこれらでは見えない数多くの「良さ」があります。経営理念、組織、人脈、ブランド、独自技術、各種ノウハウなどの知的資産がそれです。

引用:事業価値を高める経営レポート作成マニュアル改訂版(中小機構)

これらをわかりやすく開示するツールとして、経産省(作成は中小機構)が2012年から提供しているのが「事業価値を高める経営レポート」です。

A3サイズ1枚の中に、企業理念、沿革など企業概要、業務フロー、自社の強み・弱み、外部環境、今後の方針・戦略などをまとめるように構成されています。

自社の強み・弱みを、人的資産(従業員が退職時に一緒に持ち出す資産)、構造資産(従業員の退職時に企業内に残留する資産)、関係資産(企業の対外的関係に付随した全ての資産)の三つの資産に分類し整理するところがこのツールの特徴で、事業承継と相性のよいものになっています。

以上紹介した二つのツールを組み合わせて、それら結果を踏まえ今後の進め方について専門家のアドバイスを加えたレポートが「企業資産の見える化レポート」です。

日本経営士協会の経営士で構成される“事業を繋ぐストーリー研究会”がチームで支援していますので、是非活用いただければと思います。

経営資産の「磨き上げ」で会社の価値を適正化

以上のような企業資産の見える化により、客観的な自社の立ち位置が見えたところで、それが自身の想定していたものであれば、これらの結果をもって外部事業承継に移ればいいでしょう。

ギャップがある場合は、そのギャップを埋めて会社の価値を適正化するための対策をします。いわゆる「磨き上げ」です。
「磨き上げ」の基本は至極シンプルなものです。自社が強みを有する分野の業務に関しては、強化拡大してください。他社に負けない「強み」を持った会社は、買い手にとっても魅力的ですから、積極的に強みにフォーカスし、強固なものにするよう努力します。

一方、自社の内部環境における課題については、強みを打ち消さない程度に改善してください。為替レートの変動、社会の変化、顧客の嗜好の変化といった、企業を取り巻く外的環境は、1社でどうこうできるものではありません。
しかし、内部環境である組織体制や業務フロー、財務体質、取引先関係などは、努力によって向上させることができます。

当然のことですが、これは短期間でできるものではなく、実現までには何年もかかります。至近に外部事業承継を考えていなくても、いつでも状況に対応できるように取り組んでおくことが重要です。

円滑かつ納得性のある外部事業承継がしたいとお考えなら、早すぎることはありません。今すぐ準備に取りかかりましょう。

稲葉隆治
日本経営士協会 理事
BIZWAYコンサルティング 代表

投稿者プロフィール
1960年生千葉県出身。
1984年富士ゼロックス株式会社に入社以来、商品開発・企画部門を経て、本社部門にて競争/成長戦略策定を担当。
その後、営業マーケティング部門でマーケティング戦略、人材育成に取り組む傍ら、会社の兼業制度を活用し、中小企業経営支援に取り組む。
2018年同社を早期退職し経営戦略コンサルタントとして独立。
翌年2019年行政書士資格を取得し行政書士事務所として付加価値高め、豊かな地域・社会を創出できる経営戦略コンサルタントに取り組んでいる。

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