【書評】M&A成功のカギ!企業の成長を支えるお金の話

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日本電産創業者の永守重信氏が経営を説く書は数多くありますが、今回は、企業の成長を左右するのは「お金」、つまり財務だと断言されている「永守流 経営とお金の原則」をご紹介します。
さまざまな業務で構成される企業も、働く人々全員がもっとお金と数字に敏感になれば成すべきことを成すようになり企業はうまく回ると、体験から会得された持論で語られている一冊です。日本電産の企業文化と成功の秘訣も交えた本書には、経営を確固たるものにする財務と資金繰りについての知見が凝縮されています。

企業支援のエキスパートとしてご活躍の書評ブロガー、徳本昌大氏がナビゲートしてくださいます。

永守流 経営とお金の原則
永守重信(日経BP)

本書の要約

企業を成長させるためには、お金まわりの戦略、つまり財務戦略が不可欠だと日本電産創業者の永守氏は指摘します。
経営を行うために必要なことはさまざまありますが、経営者は第一に会社を潰さないという覚悟のもと、リスクに備えた資金調達を行うことに心血を注ぐべきです。

経営者は大胆にして繊細であれ

創業まもないベンチャー企業は日々、生き残るか、つぶれるかの瀬戸際での戦いを迫られる。その中で実際に成長し、飛躍できるのはごくわずかである。生き残って成長の花を咲かせるにはどうすればよいか。他にはない技術や高い志、それを実現するためのハードワークなどが必要なのはもちろんだが、何よりお金まわりの戦略、財務の戦略が不可欠である、と私は考えている。

日本電産代表取締役会長の永守重信氏は、創業時にお金で痛い目に遭った体験をもとに、独自の財務戦略をつくってきました。
永守流の財務戦略は、スタートアップやベンチャーの現代の経営者にも活用できます。

企業経営にはリスクがつきものですが、大胆な行動ができる人間が経営者に適しているかというと、そうとは限らないと永守氏は指摘します。
大胆であること以上に経営者に必要なのは、「繊細さ」や「緻密さ」だと言うのです。
そして、ベンチャー経営者にとっての重要な資質の第一は「大胆にして繊細であること」だと述べています。

財務戦略の要は事業計画

さらに、たとえ大胆かつ繊細な経営者であっても、会社を絶対に潰さないために何でもする覚悟を持つことが必要です。

時に経営者は泥を被らねばなりません。
金を借りられなければ会社が潰れそうな場合には、銀行との交渉にも気合を入れ、死ぬ気でやる必要があります。

会社が軌道に乗るまで、経営者は資金調達で苦労するものです。
創業時は銀行融資も受けにくく、何度も門前払いを食らい、プライドはズタズタになります。
借りにくいところからお金を借りるためには、相手を説得する材料が不可欠ですが、その一つが事業計画。
収支の根拠を示し、事業の実行性と継続性をしっかり盛り込んだ事業計画で金融機関を説得できる経営者こそが、ベンチャー企業を飛躍させるのです。

会社を潰さないために何をするか

会社は、まず伸ばそうと考える以前に、絶対につぶしてはならないと考えるべきである。そのために経営者は絶えずワーストケースを想定し、それに備えることだ。これが創業して最初の5年間の財務戦略の基本である。利息が損だとか得だとかは成長してから考えればよい。ムダと思っても流動性の高い資金を常に用意しておく。こうした基本を徹底しておこう。

数字に強い会社にしよう!

絶えず、最悪の事態を念頭におき、資金繰りで先手を打つことが経営者の役割になります。

経理・財務のスタッフはもちろん、エンジニアにも数字的センスを植え付けることで、経営的な感覚を持った社員が増えていきます。
コスト意識、原価意識を鍛え、常に数字で考え、数字で語れるような社員を増やすことで、組織強化が可能となるのです。

ベンチャー企業の財務戦略の基本は、絶対に会社を潰さないという意識の浸透。
社員全員が利益とキャッシュの重要性を認識していれば、会社の赤字や倒産は避けられます。

M&A成功の条件

我が社はこれまで60社以上の企業をM&Aで傘下に収めてきたが、とりわけ国内の場合、その多くは経営が悪化した赤字企業だった。こうした企業に共通しているのがコスト意識の低さである。

日本電産のM&Aの勝率は高く、67勝0敗という驚異的な数字を弾き出しています。
難しいとされるM&Aでの失敗はゼロ。
買ったすべての案件で、日本電産グループの企業価値向上につなげ成功に導いているのです。

価格・ポリシー・シナジーに着目

著者の永守氏は「M&A成功の3条件」をあげています。

■適正な価格
絶対に高い価格で買ってはいけない。

■ポリシーの合致
自社のポリシーに合わない会社を買ってもうまくいかない。

■高いシナジー
技術や顧客網などが相乗効果を示して収益を高められるかどうか?

この3条件がそろわないとM&Aでの成功が難しいことを熟知していた永守氏は、条件に合わない会社は買わなかったのです。
その一方で、企業文化が合致しシナジーが生まれると確信できる場合には、時間をかけて相手企業を口説くこともあったと言います。

意識を変革させ結果を出すPMIを

M&Aにおいて、とりわけ重要なのは買収後の統合作業、つまりPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)です。
統合効果を最大限にするために、経営トップには、経営・業務・意識などを統合するすべてのプロセスPMIに全力で取り組む覚悟が求められます。
相手先の経営陣と社員の意識改革を行うことで、買った会社は必ず結果を出すと永守氏は言います。

日本電産では、「赤字は罪悪である」との意識を全社員に植え付け、日本電産流の「3Q6S」を徹底することで、赤字会社を短期間で黒字化することに成功しています。

3Q・・・「良い社員」「良い会社」「良い製品」
6S・・・「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「作法」「しつけ」

6Sによって工具や物品がきちんと整理されると、ムダな作業がなくなります。
社員が6Sを常に意識することで、作業が効率化されコスト削減につながり、社員の士気も高まり、おのずと収益も上がっていくのです。

「事務所や工場の整理整頓」と「出勤率のアップ」が徹底できれば、効果はすぐに出てきます。
その上で、経費を減らしたり、購買力を強化したり、営業担当者の訪問回数を増やしたりして、基本的な改革を進めていきます。

やり抜く覚悟

当たり前のことを当たり前にやれば利益が出る。しかしそこへ向けて経営陣や社員の意識改革をするためには、当たり前ではない努力が必要だ。だからM&Aを実施したらPMIに心血を注ぐ覚悟が欠かせない。買収先の企業を再建する力がないと、下手をすれば共倒れになる。それだけM&Aはリスクが高いものなのである。

M&A成功の条件である「ポリシーが同じ会社」「シナジーが得やすい会社」を選ぶことは、PMIをスムーズに進めるためにも重要です。
買収先の企業の経営陣、社員への敬意を持つこと、自社のパーパスを伝えることで、経営改善が行われ、赤字を脱却できるのです。

M&Aにおいて永守氏は、経営陣の入れ替えはせず、人員の整理にも手をつけません。
各社の個性と独立意識を大事にし、会社のブランドを残すことで、既存の社員たちはプライドを持って働いてくれ、意識改革も容易になるからです。

相手を尊重しつつ「3Q6S」を徹底してダメな部分を改善していく。
経営者にはそれらを最後までやり抜くことが求められますが、諦めない覚悟があれば企業は短期間で再生します。

徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)

出典:起業家・経営者のためのビジネス書評ブログ!「永守流 経営とお金の原則(永守重信)の書評」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
ビズライト・テクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
情報経営イノベーション専門職大学【iU】客員教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。 特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。

現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。

ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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