【書評】寒さ+呼吸法「ヴィム・ホフ・メソッド」で自律神経をコントロール!
- 2023/10/5
- 書評
体や心のメンテナンスには様々な方法がありますが、健康維持のためにどんなことに気を遣っていますか。驚異的な身体能力を持つオランダ人のヴィム・ホフ氏は長年にわたる自らの経験や研究を通して、誰もが身体に眠る潜在能力を引き出し、現代社会がもたらすストレスや病気に対抗できる身体をつくるメソッドを編み出し、『ICEMAN 病気にならない体のつくりかた』にまとめています。3つの柱からなるヴィム・ホフ氏のメソッドを実体験した書評ブロガー、徳本昌大氏がリアルな体感も交えて詳細にご紹介くださいます。
ICEMAN 病気にならない体のつくりかた
ヴィム・ホフ, コエン・デ=ヨング(サンマーク出版)
目次
本書の要約
ヴィム・ホフ・メソッドは、特定の呼吸法、瞑想、冷水浴の3つの柱から成り立っています。彼の呼吸法や瞑想の技術は、心を落ち着かせ、リラックスさせる効果があります。また、彼の身体の耐寒能力のトレーニングは、免疫システムを強化し、病気に対抗する力を高めることができます。
人間の奥底に眠る潜在能力を引き出すメソッド
多くの人にとってヴィム・ホフ・メソッドは、医薬治療よりもずっとよく効く可能性を秘めている。そしてうれしいことに、ヴィムを何十年間も特異的な人物にしてきたパワーの秘密が近年、科学によって解明された。じつは人間は、生命維持のために無意識に働く「自律神経系」に影響を与えることが可能なのだ。
(コエン・デ=ヨング)
「アイスマン(The Iceman)」の通称で知られるオランダ人のヴィム・ホフは、人間の限界を超える能力で注目を集めています。
彼の極寒に耐えうる特異な能力は、20以上の世界記録、例えば北極圏でのハーフマラソンのタイムや氷の詰まった浴槽での滞在時間などで有名になりました。
日本では、食品会社のテレビCMにも登場しています。
呼吸とランニングに関する著書を持つオランダ人の共著者コエン・デ=ヨングは、このメソッドを伝授することで、冷えやストレスに効果の見込める新しいアプローチを多くの人々に提案しています。
この独特のトレーニング法や呼吸法は、身体の潜在能力を引き出す鍵として注目されており、世界中で多くのフォロワーを持つようになりました。
ヴィム・ホフは、人々が自身の中に眠る真の潜在能力を引き出すためには、身体と心の境界に挑戦し続けることが必要だと主張しています。
そして、自らの経験や研究によるエビデンスに基づいた、現代社会がもたらすストレスや病気に対抗するための自然な方法を考案しています。
呼吸法、瞑想、冷水浴が「心の問題」にも効果
ヴィム・ホフ・メソッドは、特定の呼吸法、瞑想、冷水浴の3つの柱から成り立っています。
<呼吸法>
特定のリズムで深呼吸を繰り返し行うことで酸素摂取量を最適化し、体内のエネルギーを高めます。
<瞑想>
ビジュアルをイメージする瞑想により、心の平穏と集中を高めます。
<冷水浴(アイスバス)>
徐々に冷たい環境に身体を慣らすコールドトレーニングで、免疫システムの強化を助けます。
この呼吸法や瞑想の技術は、心を落ち着かせ、リラックスさせる効果があり、ストレスや不安といった心の問題に対し効果的な解決策を提供します。
また、耐寒能力のトレーニングは、身体の免疫システムを強化し、病気に対抗する力を高めることができます。
呼吸法で心拍数はコントロールできる
”呼吸は、血中酸素濃度を示す酸素飽和度や二酸化炭素量に直接かかわっているだけでなく、心拍数との関係も濃厚だ。心臓と肺は互いに不可分に関係し、速く呼吸をすれば心拍数はほぼ確実に上がる。逆に、ゆっくり呼吸をすれば心拍数は落ち着いていく。「深呼吸でもして落ち着け」というのは生理学的にも正しいのだ。”
心臓と肺は互いに不可分に関係しており、速く呼吸をすると心拍数はほぼ確実に上がります。
逆に、ゆっくり呼吸をすると心拍数は落ち着いていきますので、呼吸と心拍数は密接に連動する相関関係にあるのです。
心臓の鼓動は健常な人でも一定のリズムを保っているわけではなく、心臓の拍動時間間隔には心拍変動といわれる「ゆらぎ」が見られます。
強いストレスにさらされて自律神経が覚醒状態になると、心拍数が増加して鼓動が速まり、心拍変動が減少しより安定したテンポになります。
対照的に、副交感神経が活発になってリラックスした状態になると、心拍数は低くなることから鼓動はストレスがかかった状態よりも間隔が開くことでゆらぎが生じ、心拍変動が増えます。
つまり、意識して呼吸の仕方を変えることができれば、心拍数や身体の状態をコントロールすることができるのです。
ツンモ瞑想が呼び覚ます自律神経コントロール術
ヴィムの「呼吸エクササイズ」の源流はチベットのツンモという瞑想技術にある。インドの密教に端を発したもので、密教は紀元4世紀ごろに発祥したとされる。タントラ仏教とヒンズー教の影響が強い。密教は原因と効果の見方を重視し、その目的はあらゆる存在を恐怖のない叡智、自発的な喜び、そしてエネルギーにあふれた愛へと変えることだ。
ツンモ瞑想は、呼吸と具体的な視覚化を融合させた古代の瞑想法です。
ゆっくり深呼吸を行いながら体の内部に炎が灯るイメージを持つことで、体温を上昇させようとするメソッド。
深い歴史や哲学を持つこの古代からの知恵は、私たちが自分自身と宇宙とのつながりをより深く理解し、日常生活に活かす手助けをしてくれます。
この技法は実効性が科学的にも評価されており、シンガポール国立大学の研究では、ツンモ瞑想を実践する尼僧たちが驚異的な体温調節能力を持っていることが示されました。
尼僧たちは外気温マイナス25度の中で体温を38.3度まで上げることができたうえ、身にまとった濡れた衣服を乾かすこともできたのです。
まるで身体の中に暖房機があり、体温調節を「強」にしたかのようなこの研究事例により、ツンモの瞑想法は科学的な観点からも注目されています。
これはつまり、ある種の瞑想トレーニングを重ねることで、コントロールできないと考えられてきた自律神経系もコントロールが可能となることを示しています。
深呼吸で細胞内の“エネルギー工場”を活性化
深く息を吸い込み、ゆっくりと吐く。
この動作を続けることで、私たちの肺は効率的な空気の交換を果たします。
体内から二酸化炭素が大量に排出され、血中の二酸化炭素濃度が低下すると血管は収縮し、息を吐いた後、しばらく息を止めると、酸素の消費が増えて二酸化炭素の濃度が増加します。
こうした呼吸を繰り返し体内の酸素と二酸化炭素のバランスを狂わせることで、身体のエネルギー工場であるミトコンドリアがさらに多くの酸素を取り込もうと働き、エネルギー(ATP*)を生成。
このATPが、免疫細胞を活性化させて免疫力を強化するのです。
*アデノシン三リン酸:筋肉の収縮などすべての生物の細胞内に存在するエネルギー物質で、「生体のエネルギー通貨」と呼ばれる。
深呼吸により細胞への酸素供給が増加すると、老廃物が排出され、新しい酸素が細胞内に取り込まれます。
さらに、息を止める行為は副交感神経を刺激し、身体をリラックスさせる効果をもたらします。
これが「好気性代謝」であり、大量の酸素を使用して多くのエネルギーが生成される要因となるのです。
▶次のページでは、「健康資産ラボ」で徳本さんも体験した、アイスバスをはじめとしたヴィム・ホフ・メソッドへの挑戦についてお届けします!