【書評】アマゾン化する未来での生き残り策は”投資”と”変化”にあり

「アマゾン」という会社の名前は今や誰もが知っている米国最大のECサイト、そしてテクノロジー企業です。
新型コロナウイルスにより世界が混乱する中で、アマゾンが行ったECサイトに展開する多くの小売業への融資、そして必要な設備への先回りした投資などがパンデミックを乗り越え、さらに売り上げを増大させるきっかけに繋がりました。
CEOジェフ・ベゾスの考える今後を生き抜くヒントとあわせて、書評ブロガーでベンチャー企業の取締役や顧問として活動中の徳本昌大氏による書評よりご紹介いたします。

本書の要約

コロナ禍の中、アマゾンの成長が止まりません。同社は顧客満足を最大化させるための努力を惜しまず、様々な領域に進出し、年平均25%の成長を続けています。AIやロボティクスなどのテクノロジーを徹底活用するアマゾンは店舗を持つ小売業の競争力がパンデミックで弱まる中、より突出した存在になっていくはずです。

アマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くす(ダイヤモンド社)
著者:ブライアン・デュメイン

新型コロナウイルスにより際立ったアマゾンの強さ

多くの大企業がパンデミックへの対応に苦しむなかで、アマゾンはこの危機をうまく乗り切るための柔軟性、規模、デジタルに関する卓越した知識を持っていることを示した。ベゾスの極端なイノベーションへの傾倒は、彼が危機をビジネスチャンスに変える力を持つことを示している。(ブライアン・デュメイン)

今年の2月以降、新型コロナウイルスが猛威を奮う中、驚異的な成長を続けている会社がアマゾンです。以前は管理職が行っていた意思決定の多くを、アマゾンではAIのアルゴリズムによって行なっています。フェイスマスクや除菌剤のボトルをどのくらい注文するか、サイズはどうするか、そして広大な倉庫ネットワークのどこで在庫を保管するかを、アマゾンはAIを使い倒すことで、瞬時に決定しています。

アマゾンが巨大なオンライン小売事業を展開できるのは、このデジタル化のおかげです。さらに、消費者が自宅にこもるようになり、生活に必要不可欠な品々を求めてアマゾンを頼るようになったことで、 同社への注文は26%も増加しましたが、このオーダーの急増にも対応することができたのです。

小売業者への融資がアマゾンの収益を支える

アマゾンは過去数年間、彼らの巨大なEコマース・プラットフォーム上で活動する、200万以上の中小小売業者の一部に、AIアルゴリズムに基づく融資を行ってきましたが、パンデミックの影響で物理的な店舗が閉鎖されたことで、彼らの多くは資金不足に陥りました。その資金需要の急増に対応するため、アマゾンは金融大手のゴールドマンサックスと提携しました。ゴールドマンサックスは、サードパーティーの小売業者に、ある期間や限度枠内で自由に借入や返済ができる、リボルビング・クレジットを提供したのです。

これらの小売業者が提供する商品は、現在アマゾンで販売されている商品の58%を占め、アマゾン自体の小売事業よりも売上げが急増しています。この結果、収益性の高い融資事業を拡大し、アマゾンは金融界の巨人に一歩近づけるようになります。

危機的状況だからこそ必要な投資を惜しみなく行う

新型コロナウイルスの危機の最初の数カ月間で、同社の株価は25%上昇し、ジェフ・ベゾスの純資産は290億ドル(約3兆円)増の1440億ドル(約15兆円)となって、世界で最も裕福な人物としての地位を維持しました。

その一方で、コロナウイルスが蔓延する中、アマゾンの労働者が劣悪な環境で働いていることが明るみになり、ベゾスはメディアで批判を受けることになります。そこで彼は、この問題を解決するために、大胆な行動を見せたのです。約40億ドル(4200億円)を費やして(この額はアマゾンが第2四半期に予想していた利益を上回る)、配送・倉庫システムの再設計と安全性の向上を図ることを発表。アマゾンは、すべての従業員にマスク、手の消毒剤、COVID-19の検査を実施したのです。たとえば、従業員の作業着の袖の部分にデバイスを付けてもらい、お互いが接近しすぎると、デバイスのライトが点灯したり、警告音を発したりするという先進的な取り組みも行いました。

ウィズコロナでアマゾン一強になる3つの理由

アマゾンは最新のテクノロジーを導入し、目の前の課題を次々と解決していきます。この姿勢が続く限り、アマゾンはエクセレントカンパニーとして君臨するはずです。コロナウイルスとの共存を迫られる「ウィズコロナ」の時代には、いっそうアマゾンは強力な存在になると著者は言い、その理由を3つあげています。

・ソーシャルディスタンスによるネット注文の急速な普及

パンデミックが消費者の買い物習慣を変えてしまいました。以前から小売業の世界ではオンライン化が進んでいましたが、今回の危機がその流れを加速させたのです。家にいることを余儀なくされた人々は、特に生鮮食料品のような商品をオンラインで購入することの利便性を認識しました。2017年にホールフーズを買収したアマゾンは、パンデミックの期間に、食料品の注文が60%も上昇しました。金融サービス大手のRBCは、主にオンライン販売に牽引されているアマゾンの食料品総売上高が、2023年までに 880億ドル(約9兆2000億円)に達するだろうと予測しています。これは2020年の水準の約2倍に相当します。

・クラウドサービス「AWS」で巣ごもり需要を拡大

購買以外の面でも生活行動の変化が生まれています。アマゾンが保有している事業の中で最も収益性が高いサービスは、世界最大のクラウドコンピューティング・サービスであるAWSです。今やほとんどの人が自宅で仕事をしたり、授業を受けたりしていますが、多くの人々がズーム(AWSで動作している)などのビデオ会議プラットフォームで会議を行うようになったことで、AWSのビジネスはより強固なものになっています。

さらにパンデミック期間は、消費者はゲームやネットフリックス、アマゾンのプライム・ビデオなどのストリーミングメディア・サービスを利用する時間が増えましたが、これらのサービスはもちろん、AWSのサーバー上で稼働しています。航空会社やホテルなど、壊滅的な影響を受けた業界での利用は格段に落ちたものの、同部門は2020年の第1四半期に33%の成長を遂げたのです。

・世界を最適化させるアマゾンの最新のテクノロジー

アマゾンの自動化の取り組みが、ウィズコロナの世界で求められるソーシャルディスタンスの実現と合致しています。COVID-19の第二波以降の到来や、別のパンデミックが発生するたびに、ロボティクスなどのテクノロジーが、アマゾンに競争上の優位性を与えます。

ジェフ・ベゾスの先見の明を学ぶ

何が私たちを差別化しているのか、本当のことを知りたいのなら、それはこういうことだ。私たちは純粋に顧客中心で行動しており、長期志向であり、発明志向なのである。ほとんどの企業はそうではない。彼らは顧客ではなく、競合他社のほうを向いている。成果が得られるまでに2~3年かかるものに取り組もうとしていて、2~3年で実績が出なければ、ほかのものに移ってしまう。そして自ら発明するよりも、他社に遅れず付いていくことを選ぶ。そのほうが安全だからだ。 アマゾンの真実を知りたいのなら、これこそ私たちが他社と異なる理由だ。これら3つの要素をすべて兼ね備えている企業はほとんどない。 (ジェフ・ベゾス)

ベゾスには、凡人の起業家とは一線を画する3つの特徴があります。
1、臨機応変であることが最大の美徳であると信じていること
2、どこに導かれようと真実と向き合うこと。
3、年単位ではなく、数十年、数百年単位で考える先見の明を持つこと。
この3つの特徴がアマゾン社内でシェアされ、顧客体験が高まることで、アマゾンはナンバー1ブランドの座を手に入れたのです。

アマゾンは2019年の時点で、米国のオンライン小売業界のおよそ40%を支配しています。「プライム」プログラムは17力国に拡大し、その会員数は全世界で1億人を突破しています。ベゾスは「AWS」を世界最大のクラウドコンピューティング企業に、「プライム・ビデオ」サービスをネットフリックスのすぐ後を追うストリーミング・メディアの大手へと成長させました。さらにスマートスピーカーのechoシリーズもヒットさせ、家電の世界にも進出しました。

2010年代を通じて、アマゾンは年平均25%の成長率を記録しています。これはアマゾンほどの規模を持つ大企業にとって、驚異的な業績(2018年時点の年間売上高は2330億ドル)で、今では多くの経営者が◯◯業界のアマゾンを目指しています。

「ベゾノミクス」が未来を変える

本書の原書タイトルの「ベゾノミクス」は、ジェフ・ベゾスの名前に「経済学(エコノミクス)」を意味する「ミクス」を組み合わせたものです。ベゾスはアマゾンという卓越した企業の経営を通じて、時代の変化にフィットするビジネスのあり方である「ベゾノミクス」を確立しました。

著書は、ベゾノミクスがその発明者であるベゾスの手を離れ、世界各国で有力な企業が採用するようになったと指摘します。ベゾスの経営手法が当たり前になることで、世界は「アマゾン化」し、企業間の競争はより激化しています。

ビジネスの世界は急速に2つの世界に分かれています。
①変化を選択せず、現状維持を追求する企業
②自社内でAIスキルを構築し、顧客が何をしているか?何を求めているかに関する詳細な情報を大量に集めることで、自らの「ベゾノミクス」を打ち立てようとする企業。

新たな領域に進出して主導的な立場をとろうとする企業は、ベゾノミクスを積極的に取り入れるべきですし、そうでなければ、ベゾノミクスを取り入れた企業との戦い方を考えるべきです。自社の成長を止めたくなければ、アマゾンをよく観察して、彼らやそれを模倣する企業がどのように未来を形づくるかを理解し、行動を起こすべきです。ウィズコロナ以降の世界は激変し、ニューノーマルの生活が当たり前になる中で、自ら変化を選択しなければ、遅かれ早かれアマゾンの餌食になってしまう可能性が高まります。

徳本氏の著書「「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)」

出典:徳本昌大の書評ブログ!毎日90秒でワクワクな人生をつくる「ブライアン・デュメインのアマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くすの書評」

この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
ビズライト・テクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
情報経営イノベーション専門職大学【iU】客員教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。 特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。

現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。

ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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