老子に学ぶ、現代社会思考~一元論的不変の解釈を誤ると企業判断が狂う

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老子の書と伝えられる「道徳経」から現代の世相を紐解くコラムの第2回目。今回は第42章より、一元論で考えることを誤り曖昧さや不安定さを招く現況について、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏の考察でお届けします。

意思決定はなぜ遅い?

事業継承やM&Aの仲介の際、
コンサルタントがぶつかる壁は、
当該者たちの意思決定の遅さかもしれない。

後継者が不在で、かつ、
IT化に大型投資をしない限り
将来的発展が厳しい企業の現状。

今であれば自社の売却は魅力的であり、
コロナ禍を理由として退陣しやすいことを、
多くの経営者は十分わかっている。

分かっているが、
心がスッキリしないため意思決定が定まらず、
コンサルタントは経営者の話を
延々と聞くことになる。

道は一を生じ、一は二を生じ、
二は三を生じ、三は万物を生ず。
万物は陰を負いて陽を抱き、
沖気以って和を為す。

(道徳経 第四二章)


東洋思想「道教」の代表的書物「道徳経」は、81章からなり、老子の考え方を説いたものと言われています。第42章を山脇氏は、以下のとおり解説されています。

道は、一元という不変の概念から生じている。一元から「陰と陽」の二元が生み出され、「陰と陽」の相対する二元から、中庸(中極)が生まれ、三元が生じる。中極は、陰を背負って陽を抱く、つまり、陰陽という、対角線上の真逆のもの(対沖)を中和した概念だ。二元でいる限り、対立軸から出られないが、中極という概念が生まれたことで、三元は安定数になり、万物が創造される。


人間という概念は一元で、不変だ。
そこに、男女の概念が生じ、二元になる。
男女という真逆の概念から生じるのが
子供、未来、多様性になる。

二元とは、相対的概念なので、
どこまで行っても平行線で交わることはない。

事業を継承するか、しないかの二元論は、
恐らく当該者で決しており、
故に、コンサルタントが招聘されている。

問題はここからなのだが、
三元論に落とし込もうとするところで、
躊躇してしまう。
その原因はすべて一元論の不安定さから生じている。

一元論ソリューション

一元論は、創業者や、重役やOBなど、
さまざまな人たち、関係者の想い、
各派閥の面子や立場を忖度するという、
深淵のさらなる深淵の論議になる。
それを、丁寧に調整しながら
判断を導きだそうとするため、
遅くなるのだ。

会社を残すのか。人間を残すのか。
その根底が揺らいでしまうから困惑し、
困惑すると不安になり、
組織全体が硬直し、
現状維持志向が強まってしまうのだ。

「今のままでもいいのではないか」

人間ではなく会社を主体に考えたとき、
本当に今のままでいいのか。
何を根底においているのか。
その視点が曖昧だから、その後に続く、
事業を継承するか、しないかの二元論も揺らいでしまう。

不変のものを確固として築こう

そしてもう一つ、
道徳経には、
深淵なる深淵に「不変のもの」を求めるとある。

日本人は、「不変のもの」を求めている割には、
評価基準が曖昧で、
就業規則や定款にも独自性がない。
コーポレートガバナンスが不明瞭になり、
いざという時に指針がぶれやすいのも、
日本企業の特徴でもある。

そのため、激動の時代になると、
変化の基準が定まらず、
どう変化したらよいのか判断できない。
この一元論的日本企業の曖昧さによって、
判断スピードは鈍化してしまうのではないか。

企業理念や社会的意義といった「不変のもの」が
確固としてあれば、
私たちは安心して変化ができるだろう。

老子(ろうし)は、今から約2500年前の戦闘動乱期、中国春秋時代における哲学者です。後世に諸子百家と呼ばれるようになった哲学思想集団のうち、道家は老子の思想を基礎としています。後に、老子を始祖に置く道教の教えを書き記した「道徳経」は、先人の金言が徐々に集積されたものなどの諸説が存在しています。

出典:東洋古典運命学「老子と学ぶ人間学② なぜ日本は意思決定が遅いのか。
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

山脇史端
一般社団法人数理暦学協会 代表理事
算命学カウンセラー協会主催

投稿者プロフィール
13代算命学宗家・故高尾義政氏・清水南穂氏直門下生として、清水氏に20年師事。当協会の学理部門を総括する。
一般社団法人数理暦学協会代表。
担当講座は、干支暦学入門講座・干支暦学1級講座・講師養成講座・数理暦学講座など。
IT事業、企業研修、オンラインシステムの運営を担当

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