老子に学ぶ、現代社会思考~無用の用が活路を切り開く

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中国三大哲理と言われる道教・儒教・仏教の中で、最も古く、かつシンプルで自然の哲理を説くのが道教です。
道教の経書である道徳経は老子の教えが書き留められたもの。今回は、道徳経第11章から、事業投資や経営にも生かせる「無用の用」について、老子の論理的説法を解釈します。
その分析と考察をしてくださるのは、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏です。81章からなる道徳経、老子の教えの最終章ですのでお見逃しなく。

無用に見えるものの秘められた役割

三十のふく、一つのこくを共にす。
其の無に当って、車の用有り。
つちねてって器をつくる。
其の無に当って、器の用有り。
戸牖こゆううがちて以って室を為る。
其の無に当って、室の用有り。
ゆえに有の以て利を為すは、無を以て用を為せばなり。

道徳経 第十一章


三十本のスポーク(車軸)の間にある空洞、
コレって必要なのか、と思うだろう。
だが、この空間があるからこそ、
車を動かすエネルギーが生じるのだ。

粘土をこねて中央を凹ませる。
その空間が生まれたことで、
粘土が器として機能するようになった。

戸は単なる板である。
しかし、壁に打ち付けることで、
密閉と開放という概念が生まれ、
空間としての新たな価値が誕生した。


一見何の役に立つのかと思うもの、
単独では無用なもの。
これらは、
他と組み合わせることで有用になり、
他を生かすための役割を果たしている。

これが、
2500年以上前に、老子の述べた「無用の用」ロジックだ。

良くも悪くも2割の人材が組織を支える

イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートは、
上位の2割が全体の8割を生み出すという考え方、
パレートの法則を提唱した。

ここから派生した考え方が、2:6:2の法則である。
働き蟻の集団にも見られるため、働き蟻の法則ともいう。

組織集団においては、
優秀者が2割、平均的人材が6割、
使えない人材が2割にわかれるという。

そこで、2割の使えない人材をリストラして、
人材を整えたつもりでも、
再編された集団は時間と共に、
結局2:6:2になるのだという。

無用排除の是非

この下位2割の人達こそが
無用の用だと老子は言うのである。

事業承継の際、
引き継ぐ事業のなかに無駄なものが多く見えるだろう。
DX化の波もあり、
古い体質を残す老舗企業の承継であればなおさらだ。

しかし、
こんな人材に給料を払うことなどないとリストラすると、
辞めて欲しくない人まで辞めてしまう。

下位2割の無用な部分がなくなると、
自分が無用になる確率が高くなるからだ。

自分より優秀な人が多いと、争わないように一歩控えてしまう。
一歩の控えが5歩になり、10歩になると、
いつの間にか自分は「使えない人材」になってしまう。

それではと思い、積極的に意見をいうと、
「空気が読めない」と言われ、組織から外される。

無用から有用を引き出すイノベーションを

無駄なものを全てカットしてしまえば、
事業は上手く動くかというと、そうではないから難しい。

M&Aも同じく、無用な事業を他と組み合わせることで、
有用の用に変える可能性も生じてくる。

例えばスタバの躍進は何か。
彼らが提供しているものは、交感神経を亢進するカフェインだ。
それなのに、ゆっくりと寛げる、
副交感を亢進する居心地のよい空間を無償提供している。

本屋の座り読みスペースも同じく、その存在は無用であるが、
そのゆとりが新たなビジネスを生んでいる。
無用を提案できる、余裕こそが大切であり、
そのように考えられることこそが、
これからの日本にとって必要なことではないだろうか。

一般社団法人 数理暦学協会では、
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詳しくは
コチラをご覧ください。

出典:老子と学ぶ人間学⑫最終回 無用の用
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

山脇史端
一般社団法人数理暦学協会 代表理事
算命学カウンセラー協会主催

投稿者プロフィール
13代算命学宗家・故高尾義政氏・清水南穂氏直門下生として、清水氏に20年師事。当協会の学理部門を総括する。
一般社団法人数理暦学協会代表。
担当講座は、干支暦学入門講座・干支暦学1級講座・講師養成講座・数理暦学講座など。
IT事業、企業研修、オンラインシステムの運営を担当

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