盆栽NFTに挑戦!世界初リアルとデジタル融合で価値向上を (後編)

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盆栽業界に異業界から転身し、さまざまな変革に取り組む愛知県岡崎市の老舗盆栽園「大樹園」4代目の鈴木卓也さんへのインタビュー。前編「盆栽業界の伝統に新風を吹き込む「よそ者」4代目の挑戦」では、昭和9年から続く盆栽の名園を承継した経緯と、業界の苦境と課題に正面から切り込んで新規顧客開拓を続けていらっしゃる現状をお話いただきました。現在鈴木さんは、リアルとデジタルを融合させた世界初の盆栽NFTの展開を構想し、日本の伝統文化である盆栽の芸術的価値を高めるための挑戦をされています。後編では、日本国内だけでなく海外でも盆栽の良さと価値を広く知らしめる盆栽NFTへの活動と、盆栽の評価向上を目指すビジョンについて伺っています。

世界初!実物とデジタルが融合した盆栽NFTに挑戦

Z-EN――外の目線でいろいろな取り組みに挑戦する姿勢が素晴らしいです!さらに、今話題のブロックチェーン技術を用いて、盆栽NFTを展開されるそうですね!

鈴木卓也氏(以下、鈴木氏)――はい。今までに日本の伝統美術品である刀や鎧がNFT化され海外でも人気を博していますので、盆栽NFTも若い方々の間で話題になればよいと考え挑戦しています。

盆栽NFTはすでに世の中に存在するのですが、盆栽界の最高権威である国風盆栽展に入選履歴があったり、最高賞の国風賞を受賞していたりする、いわゆる高級盆栽を対象とし、さらにリアル(実物)と紐づいているNFTはまだどこにもありません。

今回5つの盆栽をNFT化する予定なのですが、その盆栽を価値付ける複合的な要素となる樹形、歴史的な価値や、著名人に所有されていた経歴などもブロックチェーン上で証明されます。
NFTの購入者は、管理は我々に任せながら、世界で唯一無二の存在であるこの盆栽の実物の所有権を取得し、さらにデジタル上でいつでもどこでも眺めることができるのです。

NFT化にあたって盆栽を3Dモデリングしますので、全方向からじっくり眺められますし、今後メタバース上でデジタル盆栽を飾るようになったときには、シンボルツリーにしたりその下に家を作ってみたり、購入者は自由自在に楽しめます。

NFT化予定の真柏(左)と、緋梅(右)の銘木
※NFT化を予定するのは全5種あります。(写真は鈴木氏提供)

盆栽業界の課題

海外人気の裏側に問題も多数

――なんと!夢が広がりますね。素晴らしいです。鈴木さんが盆栽NFTに挑戦される背景として、今の盆栽業界が抱える課題に対する想いがあるようですね。

鈴木氏――私は、日本の伝統文化であり芸術である盆栽を日本に残すというミッションを持っています。
今回のNFTは、その使命を果たす一つの手段だと考えています。

盆栽は、アートと同じように適正な環境下でのコンディション管理があってこそ、価値を高めることができるのです。
私たち大樹園もその役割を担ってきました。

でも残念なことに、国内の盆栽市場が落ち込んでいることで国内での販売拡大は難しくなっています。
そのため、盆栽を海外市場向けに販売せざるを得ない状況にあります。
盆栽は芸術として作り上げるまでに年十年、何百年もの月日がかかるので、当然生産者も長い目で先を見て作品作りに励みます。
ですが、海外に販売するとなると売り切っておしまい!というケースが多く、どうしても目線が目先の利益にいってしまいがちです。

多くの盆栽園は保有する盆栽の価値を証明する手段がないまま、園の存続のために、盆栽を手放してしまいます。
一部の卸売業者はそれを逆手に、盆栽園からは安く買って海外のエンドユーザーには高く売るという商売を成立させてしまっているのです。
この事実が透けて見えてしまい、盆栽の価格に疑問が持たれ、国内の富裕層から倦厭されたこともありました。

海外の盆栽愛好家が増え、日本文化に理解を深めてくれることはとても嬉しいことです。
ですが、国内の販売先がないからと、本来のあるべき価値を度外視してどんどん海外に売ってしまったら、素晴らしい盆栽が国内からどんどん姿を消し、いずれ盆栽業界はボロボロに衰退してしまうでしょう。

世代交代で、これから盆栽業界を背負って盆栽園を受け継いでいく若い人たちのためにも、この状況を打破しなければいけないと思っています。

厳しい輸出入事情

――なるほど。盆栽は海外でとても人気が高いと聞いていましたが、そのような問題があったのですね。

鈴木氏――価格も今は海外のほうが高値を付けています。
日本は何十年も物価が上がっていませんから、感覚的に海外での金額アップについていけていけず、いまだに昔の価格のまま販売しているのです。

輸出先は中国、欧米が多いです。
少なくとも2年間、公的登録された盆栽園で栽培管理されていれば、土付きで輸出できるのですが、土壌の消毒や有害動植物の駆除など日本の検閲規制は大変厳しいものです。
では、海外からいい盆栽素材を買ってきて日本で仕立てて販売すればいいという意見もありますが、今は輸入価格の高騰で素材の調達は簡単なことではありません。

▶盆栽NFTという新たな挑戦を試みた鈴木さん。業界が抱える課題を乗り切ることができるのでしょうか。次のページでお届けします!

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鈴木卓也
盆栽 大樹園 4代目園主

投稿者プロフィール
1932年開園の老舗盆栽園「大樹園」の4代目。
大学で建築工学を学んだ後、地元の建築ディベロッパーでの営業職や、イタリアンレストランでの調理・接客、従業員管理等の職に従事。
2011年、妻の実家の大樹園に婿入り。結婚3年目に後を継ぐことを決意。大樹園の2番弟子である鳥栖昭緑園の久保田政充に師事した後、大樹園に戻り、義父である鈴木亨より盆栽を学ぶ。
国内外の盆栽展での受賞実績多数。盆栽業界への問題提起や企画立案、他業種とのコラボレーションなど、独自の視点で活動範囲を広げ、盆栽業界を引っ張る存在と目される。

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