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「人が変わる瞬間」に立ち合える仕事
――いくつもの企業、海外での経験も多い蓮沼さんが自らの会社を立ち上げられるには大きな思いがあったのではないでしょうか。
蓮沼氏――石原さんの「人は、変わる瞬間に笑顔を見せます。講師業は、そんな場面に立ちあえる仕事です」という言葉に共感し、「一緒にやりましょう!」と意気投合したからです。
それまで私は、数字ばかりを追う経営者の下で社員が疲弊し、意欲を持っている社員が力を発揮できずに去っていく様子を数多く見て来ました。
社会的な価値を生み出し、社会にポジティブなインパクトを与えられる会社が増えることに、LSPを役立てればと考えたのです。
最初の3年ほどは、貯金を切り崩すばかりでしたが、お金は後から付いてくるものだと思っていました。
顧客ごとにプログラムをカスタマイズする
蓮沼氏――LSPは、ファシリテーターが課題を示し、参加者はレゴブロックで作品を作り、互いに説明しあいながらフィードバックを得るプロセスを繰り返します。
ファシリテーターは基本の理論と技法を学び、その技法とブロックという「道具」を駆使して、多様なお客様の課題に対してカスタマイズしたプログラムを創るところが腕の見せ所です。
同じような課題でも、お客様の参加メンバーの構成、例えば、年代や所属部門に合わせて対話の誘導の仕方や問いかけ方などプログラムの「運営」も変化させます。
私は、初期の頃、自宅のあったマンションの集会所で毎月、体験会を重ねました。
ビジネス背景の異なる多様な有志の方々を募って、毎回その方々にマッチするような専用プログラムを練って試行錯誤を続けました。
こうして、自分自身の経験値を増やして行きました。
ブロック作品を通して「メタ認知」ができる
――改めて、LSPの特徴を教えてください。
蓮沼氏――最も特徴的なのは、「作品を見ながら話す」ということです。
レゴブロックを用いることで自分の意見が外在化し、観察しながら話していると、自然とメタ認知、つまり「物事を客観的に見る」ことができるようになります。
そして、ブロックを手に持ち、下から、横から眺めるうちに、「自分の意見を反対側から見るとどうだろう」という具合に、新たな視点で考えられるようになるのです。
――なるほど。LSPの存在を広く知らしめたNASAでのケースは、どういったことでしたか。
蓮沼氏――1986年に起きたスペースシャトルの爆発事故の原因究明に向けて設置された安全対策委員会があらゆる科学的なリサーチをし、最後にたどり着いたのがヒューマンサイドの問題でした。
実際、世界中のベスト・アンド・ブライテストが集まったチームでさえ、英語の上手下手や何らかの理由で、結局は誰かが牛耳ってしまう。
そこで同委員会から、全員が平等に参加できるよう、チームとして人の話を聞いて人の話をまとめ、なおかつ論理的に議論できる集団を5時間で作ってくれーというオーダーがラスムセンさんに届いたのです。
彼は「ノープロブレム」と答え、5時間のLSPのワークショップで、望まれた通りのチームの土台を創り上げたのです。
(写真はすべて蓮沼氏提供)
ブロック作品を創ることで思考を可視化し、「作品を見ながら話す」ことで、「物事を客観的に見る」ことができるようになるというLSP。
前編では、蓮沼さんがLSPが生み出す社会的な価値に気付き、強い思いを持って起業された経験をお話しくださいました。
インタビューの続きとなる後編では、活用の場が広がっている様子についてご紹介くださいます。