日本酒を世界酒に!トレンドで終わらない日本酒と酒蔵の在り方を創る(後編)
- 2021/6/18
- インタビュー
日本酒をPRし、日本酒を活用したプロモーションやブランディング戦略の立案・企画を行うクロッシング株式会社の代表、畔柳伸さんは、唎酒師でもあります。前編では、日本全国の酒蔵、経営者たちの問題解決を支援されている現状についてお話しいただきました。畔柳さんは経営者の傍ら、デジタル・メディア「おいしい日本酒」を運営し、日本酒のある豊かな日常をテーマにしたブログや、日本酒、蔵元に関わるニュースやイベント情報などを発信していらっしゃいます。後編では、日本酒を国内外に広める取り組みや今後の抱負についてお話しくださいました。
目次
地域に根差す酒蔵のストーリーを打ち立てる
――酒蔵ブランディングの好事例がありましたら教えてください。
酒蔵の経営者は地元の名士の場合が多く、何代にもわたって先祖の方々が地域に根差しているんですね。
つまりそれぞれの酒蔵にストーリーが必ずあるんです。
例えば、江戸時代に先祖が創業した時には地域でこんなことがあっただとか、祖父の代ではこんなことに貢献して感謝されただとか。
そんな酒蔵の歴史の縦の繋がり、名士としての面の繋がりをブランディングに生かしてはどうか?と考えています。
官民協働での取り組みも
観光庁が企画・振興するプロジェクト「酒蔵ツーリズム」では、酒蔵を解放し酒蔵体験や日本酒をテーマにしたイベント、スタンプラリーなど、酒蔵を中心とした観光ツアーの取り組みが行われています。
また、新しい事例として、北海道十勝の帯広畜産大学の構内に、上川大雪酒蔵「碧雲蔵」が2020年に設立されました。
十勝地方の酒蔵はすべて廃業していたことから40年ぶりの復活となり、地域創生に一役買っています。
上川大雪酒蔵自体も、三重県にあった休眠蔵の日本酒造免許を北海道に移転して2017年に開設されました。
企業と行政が一体となり、クラウドファンディングでの資金集めをするなど、革新的な取り組みをされています。
食と日本酒の深い関係
――日本酒を中心として人やものが集まる構造ができているのですね!素晴らしいです!
もともと日本酒には「神様」「人を寄せる」という意味合いが濃いんです。
日本人は米の一粒一粒に神が宿っていると教えられて、その米から作る日本酒にも神が宿り、そのおかげで造ることができると考えます。
日本酒はまずは神様に捧げられ、次に人々が口にします。
ちなみに、サケ、サクラなど、サは神を表します。
神に捧げるサケ、神が座るクラがサクラです。
春の訪れとともに豊作を願い、サクラを中心に車座になって集まり、神の宿る飲み物であるサケを飲みながら、「交信」=コミュニケーションをするんです。
日本の豊かな食生活もそこから始まっていくんですね。
――世界に誇る「和食」と「日本酒」についても教えてください。
はい。
私たちは日本酒と料理のそれぞれの良さを引き立てる組み合わせのことをペアリングと呼んでいます。
ワインだとマリアージュなんていいますよね。
日本酒はもともと食事に寄り添う、食事の邪魔をしないものなんです。
タイプによっては食事の油を落とす効果をもたらすものもあります。
日本酒は「料理を邪魔しない」脇役に徹することもできますし、「料理を引き立てて、酒も旨くなる」相乗効果もあるのです。
あまり知られていないのが残念ですが、とても奥が深いんですね。
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