【書評】凡人流起業の秘訣は“失敗”しない仕組みづくり
- 2021/3/15
- 書評
起業すると聞くと、何かすごいことができる特別な人なのだろうと、つい考えてしまいがちですが、よく考えてみると、事業を立ち上げた人はこの世の中にいくらでもいるのですから、生来的な向き不向きはあまり関係ないのかもしれません。自身を凡人と呼び、凡人だからこその起業の仕方がある!と、スタートアップの背中を押すヒントを自身の著書『凡人起業 35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法』で紹介する小原聖誉氏。スマホ関連事業を3年で売却した後、プレシード特化のエンジェル投資を行っている小原氏の実体験をもとに具体的でわかりやすいHow to 起業が書かれています。ベンチャー企業の取締役や顧問として活動されている書評ブロガー徳本昌大氏による書評でご紹介いたします。
凡人起業 35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法
著者:小原聖誉(CCCメディアハウス)
目次
凡人なりに起業を体系化できる
起業してみてわかったのは、「凡人には凡人なりの起業の仕方、戦い方がある」ということでした。スタートアップ中は暗中模索ですから、そんなことを考えている余裕はありません。しかし、起業し、その会社を売却した今、振り返ってみると、凡人なりの起業を体系化できることに気がついたのです。凡人とは「何もできない人」ではありません。自分が秀でていることはあまりない、と自覚している謙虚な人でもあります。ぼくは、「無知の知」こそ、起業で大事なことだと思っています。
小原聖誉氏の「凡人起業 35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法。」を読んでみると、初めて起業する人は、本書にある小原氏の考え方を見習うとよいだろうと思えます。起業=意識が高い人がやるすごいこと、というイメージが日本にはありますが、私のような凡人にも起業は可能だと知ることができるからです。小原氏の方法を真似ることで、起業時の課題を解決でき、スムーズに事業をスタートできます。
起業の仕組みをつくろう!
凡人起業では、自分のことを信用せず、仕組みで解決していくことが大切なのです。自分を凡人だと自覚しているのなら、「無知の知」だと前向きにとらえて、自らを律するための仕組みをつくってしまうほうがいい。
小原氏は、”自分のことを信用せずに、起業の仕組みをつくるとよい”と述べています。そして、本書のなかで、仕組みづくりに必要な要素を具体的に提示してくれるのです。
失敗する確率を下げること
成功を狙うのは、経験を積んでからにしたほうがいいでしょう。自分を凡人だと思ったら、失敗確率を落とす仕組みをつくることです。
凡人が起業するなら、失敗する確率を少しでも落とさなければなりません。成功する確率を上げるよりは、失敗しない要素を集めて、負け組にならない仕組みを積み上げていくのです。失敗しないために、まずは、自分が価値を提供できる業界の情報収集をすべきです。情報を入手すると市場―ニーズが見え、自分のリスクの許容範囲がわかるようになります。
情報を収集し発信し続けること
仕組みを作り、コツコツ毎日やることで、周りの人から信用されるようになります。評判が高まると取引の依頼も増え、業務提携や投資の話もきます。また、情報収集、情報発信を続けることで、その道のプロフェッショナルになれます。たとえ、会社員であっても「どこかの領域のプロ、専門家」になれれば、社外からのオファーがもらえます。
情報発信をスタートし、半年もそれを継続すれば、もはや普通のサラリーマンとは異なる存在。副業の依頼がくるようになり、起業をスタートするチャンスの到来です。私もSNSでの情報発信⇨出版⇨独立と言うプロセスを経ることで、起業のリスクを減らすことができました。
労働時間の切り売りから成果報酬型思考への転換
起業するなら、労働報酬=拘束時間への報酬ではなく、あくまで成果報酬だというマインドが必要です。成果報酬だと割り切ると、成果を出すには何をすればいいのかという、すごくシンプルな考え方になっていきます。
成果を出すことをゴールだと考えれば、そのための方法を考えればよいのです。他をそぎ落としてでも、もっとも重要なことにフォーカスし、結果を出すことに集中する。これがどんな起業家にも求められる姿勢です。
起業する目的を明確にしよう!
「起業は、自分がよりよく生きていくことをめざすためにするものだ」と著者は言います。主体的に起業することを決めれば、たとえ失敗しても悔いは残りません。自分の提供できる価値を明確にし、そこにアセットを集中し、顧客からのフィードバックを得るうちに事業はうまく回るようになります。自分の強みは何かを自問自答しながら、自信を持てる分野の情報発信を行う。その結果、よいことが引き寄せられてきます。
軌道に乗せるまでの3つのステップ
著者は以下の3つのステップを意識することで、事業は軌道に乗ると述べています。
1、事業の設計、日々の運営、営業資料、フェイスブックでの情報発信など、すべての活動の起点、社内外のメッセージの起点を「市場」「相手」「客観性」に置くことで”信者”をつくる
2、戦うべき市場を決めたら、その市場のプロとなると決め、メッセージを発信する
- 「ドローンだったら○○さん、VRなら××さん」のようになる
- メッセージを発信するところに情報が集まる
- 大企業が苦手な情報発信に注力し、スタートアップの強みを活かす
3、シェアを意識し、トップシェアを獲得するリアクションを取る
- 大企業が集客してくれるなら提携もあり。
- 社内では、売上利益よりも市場シェアを本質的なKPI(重要業績評価指標)とする
凡人企業ドリブン・12のスキル
以下のように、著者の凡人企業ドリブン・12のスキルを参考にすると成功の確率を高められそうです。
起業前から、自分のやりたいことを決め、情報発信を続けることは本当に重要です。私も独立する前に、ソーシャルメディアやiPhoneのビジネス活用についての記事をソーシャルメディアに書き始めました。その結果、著者になれ、多くの経営者やコンサルタントと知り合うことができました。人脈を強化し、そこに自分の価値を提供するうちに仕事のオファーをもらえるようになったのです。
私はサラリーマンの時からパーソナル・ブランディングを始めたことで、スムーズに独立することができました。メッセージを発信すること、ギバーになることは起業前からできますから、自分の強みを磨くことを怠らないようにしましょう。
凡人の起業には準備が不可欠
人口減少が続く中、日本のGDPを維持するためには、一人一人の生産性を高めるしかありません。「起業を民主化」し、多くの人が事業を成功させることで、日本全体の生産性が上がります。凡人起業家を増やすことで、日本の未来は明るくなるのです。一人でも多くの人に本書を読んでもらえればと思い、取り上げました。
起業するリスクは一般に考えられているより格段に低いのですが、そのやりかたを多くの人は知りません。本書を読むことで、失敗しない起業の仕組みづくりを学べます。自分の提供できる価値を棚卸しし、情報発信を開始しましょう。ここから新たなつながりが生まれ、スムーズに起業できるようになります。凡人の起業には準備が欠かせないのです。
徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)」
出典:徳本昌大の書評ブログ!毎日90秒でワクワクな人生をつくる「書評 小原聖誉氏の凡人起業 35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法。」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。